感染実態を把握するために抗体検査の活用を | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

 日本ではPCR検査が不十分なために、感染実態が掴めていない。この問題は以前から指摘してきたが、検査を増やすと医療崩壊するという「脅し」などで政府や専門家会議は抑制してきた。責任は重い。

 感染者数を正確に把握するのは、もちろん容易ではない。しかし、諸外国の研究があり、それらを参考にすることはできる。

 スタンフォード大学等がカリフォルニア州サンタクララ郡で抗体検査を行った結果によると、抗体を持ってる人は人口の2.5〜4.2%に上り、公表された感染者の50〜85倍だった。

 また、ロサンゼルス郡と南カリフォルニア大学の研究では、郡内の成人の4.1%が抗体を持っており、公表された感染者数は約8000人であるが、実際には22万1000〜44万2000人が感染していると見られている。

 さらに、WHOによると世界人口77億人の2〜3%が感染しているという。1.5億〜2.3億人だ。世界で公表されている感染者数は250万人。公表数字の50〜85倍というスタンフォード大学の研究と一致する。

 23日、ニューヨーク州のクオモ知事は、3000人の検体検査の結果、14%が抗体を持っていることが判明したと発表した。総人口が1950万人なので、270万人が既に感染していることになる。公表された感染者数は26万3400人、死者は1万5740人である。

 これらの数字を参考にして日本のケースを考えてみる。公表されている感染者は1万2000人であり、その50〜85倍は、60万〜102万人となる。つまり、これくらいの人が実際には感染していると想定されるのである。日本の人口は約1.25億人であり、その2〜3%なら約250万〜375万人が感染していることになる。

 ワクチンが開発されないかぎり、第二波、第三波の到来を予想せざるをえず、収束にはほど遠い状況である。

 欧米では、PCR検査を補う意味でも、抗体検査を導入しているが、日本ではまだ始まったばかりである。抗体検査の信頼性の問題もあるが、気づかないうちに感染し抗体を持っている人は、職場に復帰しても問題はなく、とくに医療現場での人手不足を補うのに助けになる。日本でも、もっと柔軟に導入を進めるべきである。

 日本の感染者は約1万2000人、死者は約300人、致死率は2.5%であるが、実際に感染者が50倍〜85倍いるとすれば、0.03〜0.05%ということになる。この数字は、先のスタンフォード大学の抗体検査の数字を使って出したカリフォルニア州の致死率0.1〜0.2%よりも圧倒的に少ない。BCG接種が原因なのかどうか分からないが、興味深い。

 日本で抗体検査を行うと、この致死率の数字も裏付けられるのではないか。それは、クラスター潰しに集中して市中感染を放置してきたことを炙り出すことになるであろう。