なぜ新型コロナウイルスは厄介か:2009H1N1との比較                     | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 通常のインフルエンザは夏になると終息するので、今回のウイルスも暑くなるのを待っていれば大丈夫、五輪は真夏の開催だと楽観論を述べる者もいる。

 しかし、WHOは、「夏になったらウイルスの活動が弱まるとは限らない」と警告しているし、日本の専門家の中には、「年を越す」と言う者もいる。

 2009年の新型インフルエンザ(2009H1N1)流行時に厚労大臣として対応した経験からすれば、今回の新型コロナウイルスのほうが厄介である。

 第一は、感染しても症状が無かったり、無症状でも他人に感染させるということである。それが、世界で急速に感染が拡大している理由の一つかもしれない。

 第二は潜伏期間が長いことである。インフルエンザは1〜3日であるが、新型コロナウイルスは2週間、人によっては27日という例もある。

 実は、イベントを企画する場合、この潜伏期間の長さが決定的に重要になってくる。インフルエンザならば、感染が止んで1週間も待てば、芝居もコンサートもスポーツ大会も再開できる。しかし、今回は、最低でも2週間は待たなければならない。

 11年前は、私は1週間単位で新型インフルエンザ対策を調整できた。水際対策と市中感染対策のバランスの取り方などがそうである。それは潜伏期間が短かかったからだ。

 しかし、今回は潜伏期間が長いので、1週間ではなく、1ヶ月単位で対応せねばならない。たとえば、今日で終息したと判断しても、あと2週間、次々と新たな患者が出てくれば、その判断は意味がなくなる。そこで、少なくとも2週間は様子を見なければならないのである。

 IOCのリチャード・パウンド委員は、東京五輪を中止するかどうかの決定は、開催の2ヶ月前、つまり5月25日頃には下さねばならないと明言している。

 ところが、最大1ヶ月にも及ぶ潜伏期間を考えれば、4月末には新型コロナウイルスの感染が終息していなければならないことになる。

 世界の感染状況はどうか。全土を封鎖したイタリアを震源地として、フランス、ドイツなどヨーロッパ諸国に感染が広がっている。イランも酷い状況で、中東全域に感染が拡大しつつある。韓国もそうだ。

 また、アメリカでも急速に蔓延し、感染者は約8000人と日本を超えており、多くの州が緊急事態を宣言している。

 たとえ日本が終息に向かっても、その他の国々で状況が厳しければ、東京五輪は断念せざるをえないことになる。

 今や唯一の希望の星は、治療薬の出現である。ワクチンの開発には1年半くらいの間がかかる。

 新型インフルエンザのときは、タミフルやリレンザを服用して自宅で静養すれば治癒することが分かり、それ以降、国民は安心し、一気に終息に向かったのである。しかし、今回はワクチンや治療薬はまだできていない。