厚労大臣がしっかりしないと、役人たちは大臣を騙し、自分たちの利権を守ろうとする。それが2009年夏の政権交代でも繰り返された。
政権交代後、長妻大臣の下で、ワクチン接種が1回でよいのか2回必要なのかについて議論が紛糾したり、10mlバイアルでの製造(1人分ずつ使える1mlバイアル製造が理想的)の可否をめぐって問題が顕在化したりしたが、これらの点は、私が大臣を続けていれば、適確な判断を下すことができたと思う。
政権交代したからといって、国民の命が危険にさらされてはならないのである。
9月末になって、厚生労働省は、これまで1800万人分とされていた国内生産分を2700万人分に上方修正した。なぜ上方修正したかの理由が、すでに大臣を辞めている私には分からない。
そこで、その点を11月6日の参議院予算委員会で、私は長妻大臣に質問した。すると、10mlバイアルで製造したから製造量を大きくできるという答えであった。
まだ私が大臣の9月初めに、この10mlバイアル製造について、担当の役人から説明されたとき、10〜20人という人数が集まらなかったらどうするのか、途中で雑菌が入ったら危険ではないかなどの質問をした上で、パブリックコメントにかけて広く専門家や国民の意見を聞くように要請していたのである。
パブリックコメントにかける素案が9月4日に公表されるや、多くの批判が寄せられたが、それらに耳を傾けることなく、大臣が交代したのをよいことに、10月2日、厚生労働省は、10mlバイアルの製造を決めてしまった(「新型インフルエンザワクチンの接種について」)。
結局は、10mlバイアルを使った現場からの苦情が殺到して、製造が中止となったが、この問題など現場軽視の最たるものである。霞ヶ関官僚ではなく、現場の医師や看護士の意見を尊重してこそ、新型インフルエンザ対策も上手くいく。政権交代後の混乱を見て、そのことを再認識させられたものである。