ソレイマニ司令官殺害は中東戦争の引き金に | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  米軍によるソレイマニ司令官殺害は、イランの報復を呼び、一触即発の危機的になっている。歴代米政権が避けてきたこのイランの国民的英雄を殺害するという暴挙は、新たな中東戦争の幕開けにすらなりかねない。

 2018年5月8日のトランプ大統領によるイラン核合意からの離脱が両国の対立の引き金となった。

 アメリカによる厳しい経済制裁で悲鳴を上げたイランは欧州に支援を要請するが、期待したような措置は十分にとられず、1年が経過した段階で、核開発の段階的再開という対抗手段に出た。そして、今や、制限抜きのウラン濃縮を行うという宣言すら出している。

 IAEA(国際原子力機関)が厳格な査察を定期的に行った結果、イランは合意を遵守していることは証明されていた。それにもかかわらず、トランプは核合意からの離脱に踏み切った。それは、解任されたタカ派のボルトン補佐官の影響もあった。

 ボルトンは、「核開発の完全な放棄ではなく、一時的中断なので、イランがいつ再開するかわからない」と主張し、核開発能力の100%除去を要求したのである。

 解任されてホワイトハウスから放逐されたボルトン補佐官は、今回のソレイマニ司令官殺害を、体制転覆の第一歩だとして歓迎している。核合意からの離脱、イラン封じ込めなど強硬策は、彼の政策であったが、トランプはそれが間違っているとしてボルトンを解任したのではなかったのか。

 英米仏独中露とイランとの間で10年にわたる協議の結果、2015年7月にまとまった核合意は双方の主張を妥協させた外交的成果であった。国際社会は、イランに核の冒険を中止させることに成功したのであり、イランは、核開発能力は残したまま、それを自制することで経済制裁解除という見返りを得た。

 ところが、トランプ政権は、核合意からの離脱を一方的に決めてしまったのである。しかも、それは、パリ協定やTPPからの離脱と同様に、単にオバマ政権の政策だったからというだけの理由である。

 今回の強硬措置は、超えてはならない一線を越えたものであり、再選しか頭にないトランプの人気取り戦術である。しかし、そのツケはあまりにも大きいと言わざるをえない。