上海から考える:習近平体制は盤石か? | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 10月27日、江沢民の母校、上海交通大学で開催された先端技術の国際シンポジウムで基調講演を行ったが、キャンパスの至るところに江沢民の揮毫や業績を称える資料が陳列してある。習近平は、江沢民の力を抑えて、権力を獲得したので、江沢民の牙城である上海でいかに権力を固めるかが、政権安定への道である。

  2017年10月24日に閉幕した中国共産党第19回党大会において、党の行動指針に、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が盛り込まれた。これまで指導者の個人名が入った政治思想が党規約に入ったのは、毛沢東、鄧小平の2人のみである。翌日の25日には、最高指導部である政治局常務委員会の7人が決まったが、習近平派が多数を占めることになった。

 これまで、習近平(66歳)は、胡錦濤派の共産主義青年団(共青団)や江沢民派と権力闘争を展開してきたが、最終的に勝利することができたのである。そして、今では長期政権を目指して、権力基盤をほぼ固めている。

 因みに、汪洋副首相(共青団、64歳)も第4順位で常務委員会入りしたが、私が2014年4月に北京を公式訪問したときに、中南海で迎えてくれたのが彼である。それまで安倍政権下で日中関係は膠着状態であったが、この会談で、民間交流と地方自治体間交流の再開を約束してくれたのが、この汪洋副首相であった。

 国際政治の観点から見ると、中国が強国への道をさらに進めることを内外に鮮明にし、AIや5G政策を強力に推進している。すでに、GDPでは日本を抜いて世界第2位であり、パックス・シニカ(中国の天下)を目指している。

 今年は建国70周年、2049年には、中国は建国100周年を迎える。2013年3月、「中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現する」ことを宣言して国家主席に就任した習近平は、そのために積極的な外交を推進している。その野心は、陸海の現代版シルクロードである「一帯一路」構想にも現れている。太平洋への海洋進出、アフリカへの援助など、まさに世界帝国としての戦略を展開しているのである。

 鄧小平の開放改革路線によって豊かになった中国は、経済力のみならず、軍事力も強化している。近代のわずか1世紀を除いて中国は世界一の大国であり続けてきた。その復活こそが習近平の夢であり、その道を今ひた走りに走っているのである。太平洋をアメリカと中国の二大強国が牛耳る時代がそこまで来ている。

 10月28日、4中全会(第19期中央委員会第4回全体会議)が開幕したが、習近平は、米中摩擦、その影響としての経済減速、香港問題など諸懸案の解決を迫られている。その対応次第で権力も揺らぐ。

 人事では、次世代の後継候補である陳敏爾重慶市党委書記(習派、59歳)と胡春華副首相 (共青団、56歳)が常務委員に昇格するという観測もある。