イギリスのEUからの離脱は円満に実現できるか | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 10月17日、ジョンソン首相はEUと離脱条件について合意した。具体的には、北アイルランドに英関税を適用するが、EUへの玄関口の機能も維持するという内容だ。

 問題は英議会の承認を得ることができるかである。野党の労働党は反対、閣外協力をしている北アイルランドの民主統一党(DUP)も新合意案に反対であり、過半数を獲得できるかどうかは不明である。

 19日に下院で採決が行われるが、ジョンソン首相には何らかの勝算があるのだろうか。EU離脱をめぐって、イギリスの政治は混乱を続けてきたが、それに終止符を打つことができるのだろうか。

 これまでジョンソン首相は、議会が決めたことを無視し、民主主義の基盤が覆すようなことを行ってきたが、議会制民主主義の祖国としては、絶対に行ってはいけない暴挙である。ボリスは、国民が直接国民投票で決めたことは絶対だと言ってはばからず、その錦の御旗の前には議会のルールも何の意味もないと考えているかのようである。

 ナチスは1933年に政権をとるとすぐに、国会を通さずに民意を問う手段として「国民投票法」を制定した。そして、ヒトラーは大きな政策変更を行った後、それを国民投票にかけ圧倒的多数の賛成を得て、内外に自分の正統性を示したのである。国民投票を盾にとって、議会のブレーキを壊そうとしているジョンソン首相はヒトラーと五十歩百歩であり、国民投票を代議制民主主義の抹殺に使ってはならない。

 国民投票と言えば、2014年9月18日にスコットランドのイギリスからの独立を問う住民投票が行われ、賛成44.70%、反対55.30%で、独立は否定された。イギリスは連合王国(United Kingdom)と言われるように、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドから成る。

 イギリスがEUから離脱、とくに合意がないまま離脱すれば、スコットランドをはじめ,北アイルランド、ウェールズでもイギリスからの離脱の動きが強まる可能性もある。連合王国そのものの存続も危うくなる事態にもなりかねない。

 軽はずみで国民投票の実施を決めたキャメロン元首相、そして遊び半分にBrexitに投票した有権者たち、今頃その間違いに気づいても遅いと言わざるをえない。

 今後の展開に注目したい。

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