「世界一のディストピア」北朝鮮:ヒトラー、金正恩,習近平 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 北朝鮮は独裁国家であり、ナチスドイツと同じである。

第二次大戦後の国際秩序は、戦争で日独伊に勝利した米英仏中ソ連が形成したものである。国際連合も戦勝国の組織であり、安全保障理事会の拒否権を持つ常任理事国は先の五カ国である。国連では旧枢軸国は二級国家扱いである。

 戦後の国際秩序は核による恐怖の均衡で成り立っているが、核拡散防止条約は新規の核保有国を認めないというものである。これもあまり説得力のない考え方であり、主権国家がどのように武装しようが基本的には自由であるべきである。実際に、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮が核武装している。これらの国々は、核兵器管理という観点からは戦後秩序に挑戦したと言ってもよい。

 リビアも同じことを試みたが、アメリカなどの圧力によって断念した。また、イランも同様な意図を持っているが、2015年の核合意によって核開発を停止した。しかし、その核合意からアメリカが撤退し、イランとの対立が深まっている。

 第一次世界大戦の講和条約はヴェルサイユで締結されたが、敗戦国ドイツは、過酷な賠償金の支払いに苦しみ、再軍備を禁じられるなど下級国家の扱いを受けた。そのことによる国民の不満を背景にしてヒトラーが台頭し、民主的選挙で権力を獲得する。そして、再軍備、ラインラント進駐、オーストリア併合と次々にヴェルサイユ体制に挑戦していき、遂に戦争を始める(拙著『ヒトラーの正体』参照)。

 国際システム論的に言えば、1945年までは戦争によって国際秩序が変更されてきた。ヴェルサイユ体制から1945体制(Pax Americana)へと移行して、70年が経つ。核兵器は戦争によるシステム変更を不可能にした。

 北朝鮮やイランを1945年体制の枠内にとどめるのか、それとも離脱させてしまうのか、今そのせめぎ合いの外交交渉が展開されている。

 中国では、毛沢東派の文化大革命で失脚していた鄧小平が復活し、経済優先主義に舵を切り、今日の繁栄へとつなげた。そこでは、共産党一党支配体制下でも、複数の政治家の間で権力闘争が展開されてきた。

 ヒトラーは一代限りの独裁者であるが、金正恩は、金日成、金正日から続く世襲の独裁者である。党主導の独裁である中国とは違う。

 ナチスドイツも北朝鮮も中国も、独裁体制は、オーウェルの『1984』のような情報管理の徹底したディストピア社会であるが、現在の世界で、洗脳をはじめ、それを最も効果的に機能させているのが北朝鮮である。

 北朝鮮が、アメリカをはじめとする国際社会の圧力に対抗して独裁体制を維持するためには核兵器は不可欠であり、金正恩が自発的に放棄することはありえない。この体制をどう崩壊させるのか、極めて難しい課題である。https://amazon.co.jp/dp/4098253534/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_pCjhDbX1G1TPG