イマニュエル・ウォーラーステインが提唱した世界システム論とは? | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 8月31日、世界システムの体系的な理論を提示したイマニュエル・ウォーラーステイン教授が死去した。88歳。私も教授の理論を援用し、今でも、米中覇権競争などの考察に、この理論を使っている。

 第二次大戦後の国際秩序をパックス・アメリカーナ(Pax Americana)と呼ぶが、そのアメリカの覇権に挑戦しているのが中国である。もし中国の天下が来れば、それはパックス・シニカ(Pax Sinica)となる。

 世界システム論とは、国際社会を一つのシステムと考えて、それが歴史的にどのような変遷をとげていったかを考察するものである。

 ウォーラーステインによれば、15世紀末のヨーロッパに資本主義的な「世界経済」が成立し、それが近代的な世界システムとして次第に世界を覆っていったという。

 歴史をふり返ると、世界システムは、古代には世界帝国として現れる。たとえば、中国、エジプト、ローマなどである。

 もう一つの形は、15世紀末にヨーロッパに誕生した世界経済であり、これは世界帝国に転化することなく、内部に多くの政治システムを抱えながら、今日に至っている。

 世界経済を構成する地域は、中核諸国家、半辺境地域、辺境地域に三分されるが、中核地域は時代の変遷とともに移り変わっていく。中核地域を構成する強国の中で、ある一国の経済力が圧倒的に強くなって、その国が生産する商品の競争力が他のすべての国に対して優勢になるような状態を「覇権(ヘゲモニー、hegemony)」と呼ぶ。

 そのようなヘゲモニーを享受したのが、1625~1675年のオランダ、1815~1873年のイギリス、1945~1967年のアメリカである。

 1989年、ベルリンの壁が崩壊し、米ソ冷戦が終わってから、30年、今やアメリの覇権に中国が挑戦している。世界の未来を展望するのに、今なお、世界システム論は役に立つ。