イギリス新首相、ボリス・ジョンソンとは                             | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 イギリスでは、6月7日にメイ首相が与党保守党首を辞任した。サッチャー首相に次ぐイギリス史上2番目の女性首相であったが、「鉄の女」にはほど遠く、強力なリーダーシップを発揮できなかったからである。

 EU離脱を巡って、与党の賛同が得られないために、安易に野党に支援を求めたことが致命的であった。

メイ首相は、元々はEU残留派だったが、国民投票で示された判断を実現させるために、EUとの厳しい交渉をはじめ、様々な努力を展開した。しかし、国内、とくに議会のコンセンサス作りに失敗したのである。

 5月2日の地方議会選挙では、保守党は改選前の4906議席を1334議席も減らす大敗を喫している。さらに、5月23〜26日にEU各国で投票が行われた欧州議会選挙では、EU懐疑派が勢力を拡大したが、直前の政党支持率調査では、イギリスでは、旗揚げしたばかりのEU離脱党が、二大政党を抑えてトップとなっている。順位は、①EU離脱党(34%)、②労働党(16% )、③自民党(15%)、④緑の党(11%)、⑤保守党(10% )である。自民党と緑の党はEU残留派である。

 メイ首相の指導力不足、そして「決められない議会」に対する批判は、労働党よりも保守党に対して厳しい結果となっている。別の調査によれば、順位は変わらず、支持率は、①37%、②19%、③13%、④12%、⑤7%と、一桁台に落ち込んだ保守党にとっては衝撃的な結果であった。これもまた、保守党内で、メイ首相への三行半に繋がったのである。

 離脱強硬派のジョンソン前外相が新党首に選ばれたのは、彼の国民的人気に頼るしか、どん底まで落ちた保守党を立て直す道はないと多くの党員が考えたからである。こうして、ハント外相との決選投票で圧勝して、遂に念願の首相の座を勝ち取ったのである。

 私の旧友のジョンソンは、市長として2012年ロンドン五輪を成功させた実績があり、気さくな人柄で、またラジオ番組などに出演してタレント並みの人気を博してきた。また、市長時代にレンタルサイクルを導入し、これが「ボリス・バイク」と呼ばれている。多くのスキャンダルでも有名であるが、イギリスの政治家の中で、国民から「ボリス」とファーストネームで呼びかけられるのは彼だけである。

 2001年に下院議員に当選し、2008年にはロンドン市長にも当選し、兼職を続けてきたが、2016年5月からは下院議員に専念している。2016年6月の国民投票では離脱賛成派の旗振り役となった。

 キャメロン首相が辞任した後に、首相の座に就く計算であったが、戦略ミスで立候補出来ず、メイ首相が誕生したのである。メイ内閣では外相に就任したものの、メイ首相の穏健なEU離脱案に反発して閣外に去っている。

 保守党内には、ジョンソンに対する根強い反対論がある。また、彼は、10月31日を期限に「合意なき離脱」に突っ走る可能性がある。EUは、メイ首相と交渉して妥協した以上の譲歩は拒否するだろうし、それをジョンソンは受け入れないであろう。ボリスを待っているのは、イギリス政局の混乱である。