アメリカは、パックス・シニカ(中国による平和)を阻止できるか  | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 7月11日、ミリー次期米参謀総長は、上院軍事委員会の公聴会で、アメリカの安全保障上の将来の主要課題は中国だと明言した。その危機意識の背景にあるのは何か。

 中国の経済発展はめざましく、今やGDPでは日本を抜き、アメリカに次ぐ世界第二位に躍り出ている。軍事の面でも、中国は空母を建造するなど、着々と軍拡を進めている。習近平政権は、「一帯一路」政策を展開し、世界中に拠点を築こうとしている。

 世界システム論的に言えば、現在の「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」が将来的に「パックス・シニカ(中国による平和)」に取って代わられるのではないかと、アメリカが心配するのは当然である。アメリカは、その「悪夢」を絶対に阻止したいわけであり、先端技術分野で台頭しつつある中国を今のうちに完膚なきまでに打倒しようとしている。

 通信機器の分野における国際競争は激しさを増しているが、中国がアメリカに追いつけ追い越せと熾烈な競争に挑んでいる。その先兵がファーウェイでありZTEなのである。ZTEは、昨年4月に発動されたアメリカの制裁によって苦境に立たされているが、トランプ政権はファーウェイを次の標的を定めている。

 米中間の摩擦は、世界の覇権をめぐる争いであり、一位のアメリカを中国が追い抜くことができるのかどうかが問題である。当然のことながら、アメリカはそういう事態を避けようと様々な手を繰り出しているのである。それが、現在の貿易摩擦として現れている。

 習近平主席は、中華人民共和国建国から100年後の2049年には中国を世界一にするという目標を掲げており、それが実現すればパックス・シニカということになる。

 国力の構成要素は、経済力や軍事力のみではない。通貨(金融)もまた重要であり、今はドルが世界の基軸通貨であるが、人民元がその地位に就けるかどうか。実際には決済手段としての人民元のシェアは次第に拡大していっており、それもまた荒唐無稽な夢ではなかろう。

 さらには、文化・価値観の問題もある。資本主義経済が発展するには、自由な民主主義という政治制度が必要だというのが、先進民主主義国の「常識」であった。しかし、中国は、その常識とは逆に、経済発展につれてますます専制的になっている。自由な民主主義、そしてその代表であるアメリカは、パックス・シニカを阻止できるのだろうか。