トランプ政権は、なぜイランとの核合意から離脱したか    | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 1年前、トランプ大統領は、イランとの国際的な核合意から離脱する決定を下した。米英仏独中露とイランとの間で、10年にもわたる難交渉の末に2015年に締結された合意を、弊履のごとく捨て去ったのはなぜなのか。

先日、イラン政府は、アメリカによる制裁に耐えるのも限界だと、核合意の一部から離脱する意向を示して牽制し、中東の緊張が高まっている。

 イランとの核合意は、イランがとりあえず10年間は核開発を止める、その代わり経済制裁も解除するというものである。そしてIAEA(国際原子力機関)の査察をきちんと受けることが定められ、イランはその義務を忠実に履行してきた。

 しかし、トランプ、ボルトン、ポンペオといった強硬派は、少しでも核開発の可能性を残すのは受け入れがたい、完全な非核化でなければ承認しないという見解を展開しているのである。

 トランプは、政権交代を印象づけるために、前政権の実績に難癖を付けてひっくり返して大騒ぎする。たとえば、パリ協定(地球温暖化対策)やイラン核合意、TPPなどの国際条約を反古にしてしまった。世界中が大迷惑を被ろうがお構いなしである。選挙で指導者を選ぶ民主主義の盲点と言うしかない。

 秋の中間選挙を控えて、トランプは、ユダヤ教徒やキリスト教保守派の票を得ようとしており、それがイスラエルの首都をエルサレムとしアメリカ大使館を移設することや今回のイラン核合意からの離脱という政策につながったのである。中東の平和と安定がどうなろうと、選挙に勝ちさえすればよいというのである。

 さらに問題は、中東の力の均衡を揺るがす危険性があることである。シーア派のイランは、同じ宗派のシリア、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシなどを支援し、スンニ派のサウジアラビアと対立している。イスラエルとともに、サウジも今回のトランプの決定を歓迎している。事態が混沌としてくれば、核武装しているイスラエルへの対抗上、イランも核開発を再開するであろう。そうなれば、中東の緊張が高まることは必至である。

 アメリカはトランプを大統領に選んだが、世界の民主主義は生き残れるのであろうか。