妊娠中絶を拒否するアメリカ     | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 アラバマ州議会が可決した法案にケイ・アイヴィー知事が署名し、妊娠中絶を全面的に禁止する全米で最も厳しい法律が成立した。強姦や近親相姦による妊娠も対象にする。中絶を認めてきた連邦最高裁の判決(1973年「ローvsウェイド」)を覆すことが目的で、50州のうち16州が同じような動きをしている。

 この背景には、キリスト教がある。アメリカ建国の基礎は 「銃とキリスト教」である。銃は自らの身体を守るため、キリスト教は心を守るためである。この二つがなければ、開拓の苦労は乗り越えられない。

 アメリカは、特殊な国であり、例外的な国である。伝統社会の日本人にとって、人工的に創られた国であるアメリカは自分の発想では捉えきれないところがある。キリスト教の力はヨーロッパでは弱まっており、私が生活体験のあるフランスのカトリックでも、ドイツのプロテスタントでも同じである。

しかし、アメリカでは今なおキリスト教が人々の考え方や生活を律している。そのことを中西部の大学で痛感させられた私は、「キリスト教のアメリカ」の特異性についてかんがえてきた。

 「アメリカは興奮して狂ってしまった(America went haywire)」からトランプ大統領を誕生させたのか。アンダーセンは、このポピュリズムは「この国の当然の宿命(nation’s natural destiny)」であるという(Kurt Andersen "Fantasyland : How America went haywire : A 500-year history"(Random House, 462pp) New York Times, September 2-3, 2017)。

   fake news,post-truth, alternative facts などは、いわばアメリカのDNAであり、それがアメリカを例外的な国にしているのであり、トランプを当選させたものである。

 そのDNAの元祖はピューリタンであり、その宗教的熱狂が幻想、神秘主義を生む。ニュートンやロックが影響力を持つ「理性」のヨーロッパとは対称的である。アン・ハッチンソンは17世紀前半にアメリカ植民地で活躍した反体制的宗教活動家であるが、「真実と自分が感じたものが真実」という考え方は、今のalternative facts の考えかたにつながる。幻想(fantasy)と現実(reality)が混同してしまっているのである。

 キリスト教こそがfake newsを生み、アメリカ人を集団的妄想に導いていく。そして、それは極端な相対主義にも導く。アメリカという「幻想の国(Fantasyland)」をどうすれば理性の方向に変えていけるのか。

 キリスト教原理主義を理解しなければ、アメリカの民主主義の本質が分からなくなる。