厚労省への監察:身内の調査では公平性は保てない。年金記録の場合はどうしたか。 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 毎月勤労統計の不適切調査について、1月22日、厚労省が設置した特別監察委員会が調査報告書を公表した。しかし、身内による事情聴取など公平性に疑問符が付けられている。年金記録問題のケースはどうだったのか。拙著『厚生労働省戦記』を基にして再現する。

 年金記録問題は、2006年後半から民主党による追及をきっかけに次第に波紋を広げていったが、民主党の調査要求を受けて、衆議院調査局は、2007年2月14日、「国民年金・厚生年金の納付した保険料の記録が消滅する事案等に関する予備的調査についての報告書」を衆議院厚生労働委員会に提出した。そこには、「宙に浮いた年金記録」が約5000万件存在すると記されており、これが国会で問題となっていった。そして、7月の参議院選挙の争点とすべく、民主党は5月以降、この問題を徹底的に国会で追及し、またマスコミも大きくとりあげるようになった。

 これに対して、政府は、2007年5月25日には「年金記録への新対応策パッケージ」、6月4日には「年金記録問題への新対応策の進め方」を公表し、名寄せ等による記録回復、原因究明のための検証委員会と被害者救済のための第三者委員会の設置の方針を固めた。

 それを受けて、6月8日に、総務省に松尾邦弘元検事総長を委員長とする「年金記録問題検証委員会」が発足し、この委員会は精力的に作業を進め、10月30日には報告書をまとめた。また、6月22日には、同じく総務省に、「年金記録確認第三者委員会」が設置され、保険料の納付記録が見つからず、証明する証拠が不十分な人の記録を公正な立場で訂正する任務を負った。中央第三者委員会と、地方に50の委員会が発足した。

 自民党では、中川秀直幹事長直属のプロジェクトチーム「年金問題緊急調査対応委員会」を作り、5月29日に第一回会合を開き、党としてもこの問題に正面から取り組むことにした。この委員会には、茂木敏充を主査とする検証チームを置き、管義偉、世耕弘成、鴨下一郎らと共に私もメンバーとして村瀬清司長官らから事情を聴取した。

 さらに公明党とともに、「与党年金記録問題対策本部」も立ち上げ、6月12日には第一回会合を開いた。

 自民党検証チームは、社会保険業務センターの三鷹庁舎と高井戸庁舎を視察したり、検証チームは、関係者からのヒアリングを進めたりして、問題の背景を解明していった。検証チームの精力的な作業を基にして、7月5日、年金業務刷新に関する政府・与党連絡協議会において、政府・与党は、「年金記録問題に対する信頼の回復と新たな年金記録管理体制の確立について」という対応策を決定した。

 この日の記者会見で安倍首相は、「最後のお一人に至るまですべて記録をチェックし、保険料を真面目に払っていただいた方々に正しく年金をお支払いしていく」と明言した。そして、「1年以内に名寄せを行い、突き合わせを行う。所属先がわからない5000万件の年金の記録と突き合わせを行う」としたのである。