20世紀文明論(39):スピードの世紀⑤・・鉄道の歴史⑤ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 先々週は、名古屋と大阪に行くために、4日連続で新幹線に乗ったが、やはり便利である。車内で食事をしたり、読書をしたりしているうちに目的地に到着する。飛行機のように出発の15分前に到着する必要もないし、セキュリティ・チェックもない。

 鉄道1本は道路10本に値するという。二酸化炭素による地球温暖化などの環境問題が人類共通の関心事となっている今日、自動車に比べて様々な利点を持つ鉄道が見直されている。とくに、新幹線は大量の乗客を超高速で輸送する。しかも通勤電車なみの数分間隔で正確に運行するという偉業を成し遂げたのである。

 新幹線は、20世紀の日本が誇るべき発明である。時速300㎞というスピードでの鉄路移動を可能にしたからである。

 江戸の日本橋から京都の三条大橋まで半月かかった江戸時代の東海道53次の旅は、今は「のぞみ」で2時間弱しかかからない。朝6時に東京駅を出発すると、京都駅には8時09分に着く。

 これは科学技術の進歩であり、文明の進歩である。この快適さは、苦労して長旅をした江戸時代の人たちにとっては夢のような話であろう。私など、逆に半月かけてのんびりと東海道五十三次を歩いてみたいという夢もあり、それは時間に迫られる現代日本では最高の贅沢かもしれない。

 東海道線全線が開通したのが、1889(明治22)年である。新橋―神戸間がつながったのであるが、当時のダイヤを調べてみると、下りが新橋発16時45分で神戸到着が翌日の12時50分、上りが神戸発17時30分で新橋到着が翌日の13時40分である。

 所要時間は、下りが20時間5分、上りが20時間10分、平均時速は38㎞、最高48㎞である。下り列車は10時10分に京都に着いているので、新橋―京都間は17時間25分かかっている。20世紀初頭に比べると、20世紀末には、私たちは東海道53次を約8倍の速度で移動できるようになったのである。