国際政治学講義㉝:(4)20世紀の意味 ②社会主義の世紀・・⑰ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 世界の人口は、74億人(2016年)で、うち中国は13億8千万人である。つまり、人類の5.5人に1人は中国人である。彼らが、どのような生活様式をとるかで、地球環境は大きく変化する。

 たとえばエネルギー消費量である。最近はだいぶ改善されたが、北京に行くとPM2.5、深刻な大気汚染に悩まされたものである。豊かになれば、エネルギー消費量は増加する。かつては、自転車が庶民の足であったが、いまでは自動車に取って代わられた。このモータリゼーションの進行が大気汚染を悪化させたのである。

 もし鄧小平の改革開放という決断がなかったならば、非効率的な社会主義計画経済は、エネルギー多消費型社会を改善することはできなかったであろう。今後、社会主義市場経済が順調に成果をあげていくのか、習近平の舵取りに注目が集まっている。

 アメリカは、トランプ政権になってから、増大する貿易赤字の最大の元凶として中国をやり玉にあげている。2017年のアメリカの対中貿易赤字は2017年には3752億ドル(約40兆円)にのぼり、トランプはこれを2020年までに2000億ドル(約22兆円)減らすことを要求している。

 トランプの保護貿易主義は徹底しており、アメリカは、鉄鋼に25&、アルミニウムに10%の関税を課す措置を実施しており、これに対してメキシコ、カナダ、EUなどは報復関税で応じている。

 中国に対しては、巨大な貿易赤字のみならず、知的財産権の侵害、不公正な貿易慣行などがやり玉にあがっている。中国は、アメリカ産品を700億ドル(約7.7兆円)分購入することを提案するなど、妥協的な姿勢を見せているが、米中摩擦が容易に終息に向かうとは思えない。

 それは、軍事のみならず経済の分野でも、アメリカと中国の覇権争いが激化しているからである。第二次大戦後の国際秩序であるパックス・アメリカーナに挑戦するのは、EUでも日本でもロシアでもなく、中国であるようだ。しかし、通貨での人民元はドルやユーロや円のような国際決済手段としての地位を獲得しておらず、中国が完全に国際経済・金融システムに統合される日はまだ来ていない。

 共産党の一党独裁が続き、自由な多元主義ではない政治体制の下で、その課題を解決できるのであろうか。