国際政治学講義㉜:(4)20世紀の意味 ②社会主義の世紀・・⑯ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 資本主義経済は、自由な多元的民主主義体制の下で開花し、人々の生活を豊かにすると考えられてきた。ドイツが東西に分断されていたとき、社会主義陣営の中では比較的良好な経済運営をしてきた東ドイツを見て、「ドイツ人はあの社会主義でさえ機能させることができる」と、政治学者仲間で軽口をたたいたものである。

 東西冷戦が終わる前の中国は、改革開放経済が始まっていたとはいえ、なお貧しい発展途上国であった。誰もGDP世界第2位の姿など想像できなかったのである。今では、さらなる繁栄を目指して中国は経済成長を積み重ねている。これをどのように説明するのか、難しい問いである。

 中国では、共産党による独裁が続いている。広大な国土の隅々にまで統治網を張り巡らすことができるのは、共産党のみである。このようにネットワークを独占する者が権力も独占する。つまり、統治能力のある組織は中国共産党しかないと言ってもよい。

 日本やアメリカやヨーロッパのように、共産党以外の政党が全国にネットワークを確保する状態は、まだ想定できないし、共産党もそれを許さないであろう。独裁の反対概念は多元主義であり、複数の政党が存在して選挙で権力を追求するシステムである。民主化とは、独裁から多元主義への移行である。

 ナチズムなどの現代の独裁を研究するとよく分かるが、独裁者が最も恐れるのが、自分と同様な全国的ネットワークを持つ集団である。たとえば軍隊がそうである。実際に、ヒトラーに反旗を翻したのはドイツ国防軍であった。

 したがって、ヒトラーもサダム・フセインもチャウシェスクも、軍隊に対抗するために自分の親衛隊を創設したのである。キリスト教会もまた、全国的なネットワークを持っており、ヒトラーに対する抵抗の拠点となった。

 中国では、人民解放軍は共産党の完全な支配下に置かれているし、軍人に対する政治教育も徹底して行われている。また、大学では、副学長などにその所在地の共産党幹部が就いており、しっかりとした監視体制がとられている。

 そのような政治体制のもとで、経済はどうなっているのであろうか。20世紀末にまで戻って振り返って見るが、鄧小平の後継者である江沢民は、1997年9月の第15回中国共産党大会で、「社会主義市場経済」を継続することを確認したのみならず、株式制度を本格的に導入することを決めた。つまり、資本主義へと大きく舵を切ったのである。