国際政治学講義㉗:(4)20世紀の意味 ②社会主義の世紀・・⑪ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 世界システム論の観点からは、ソ連の存在は重くない。近世以前には帝国が世界を支配したのに対し、近代以降は帝国に代わって資本主義システムが世界をカバーしたと考えるからである。したがって、非資本主義のソ連邦は、マージナルな存在でしかなかった。

 しかし、国際政治の力学から見れば、第二次大戦後に軍事の点で、そしてその点においてのみ、ソ連は大きなウエイトを占めたのである。日本では、それに加えて社会主義イデオロギーが知識人に一定の影響力を与えた。

 その日本の左翼知識人たちの幻想も、次第に雲散霧消していく。世界が、ソ連共産党によるサハロフやソルジェニーツィンに対する弾圧を知ったからであり、社会主義のイメージは失墜していく。

 そのような中で、西欧の社会主義者たちは、イメージ好転への努力を重ねていく。たとえば、共産党は「ユーロコミュニズム」を標榜し、その他の左翼政党も「ユーロレフト」と自称した。人権を抑圧するソ連型の社会主義と差別化を図るためである。

 基本的人権を踏みにじり、チェコのドブチェクによる「人間の顔をした社会主義」の試みを戦車で潰したソ連は、経済の分野でも西側に大きく水をあけられてしまった。とりわけ、先端技術の開発では西側に完敗したと言ってもよい。アメリカを驚愕させた1957年のスプートニク・ショックから20年も経つと、西側がソ連を追い越し、その優位は歴然となった。

 1976年9月6日、ソ連の戦闘機、ミグ25が函館に着陸し、パイロットのベレンコ中尉がアメリカへの亡命を求めたが、この戦闘機を調査した日米防衛当局は、その心臓部が真空管であることに驚いた。世界がトランジスターの時代になっているにもかかわらず、ソ連はまだ一昔前の真空管に固執していたのである。軍事大国ソ連は、実は技術のブレイクスルーに失敗していた。

 なぜ、このような遅れが生じたのか。それは、社会主義そのものに起因する理由があるからである。

来る6月12日の開催を目指して、いま米朝首脳会談の準備が進んでいるが、北朝鮮のような共産主義型独裁政治が技術進歩や経済発展を可能にすることができるのであろうか。核兵器やICBMの開発に成功しても、それらの技術は海外から、たとえばウクライナから、多くの場合は非合法に移入したものが基本である。

 トランプ大統領は金正恩独裁体制の保証をするというが、皮肉なことに、それは北朝鮮をますます繁栄とは無縁な存在にするであろう。ソ連邦崩壊の歴史がそのことを教えてくれる。