国際政治学講義⑮:(3)世界破局のシナリオ ⑥ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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(6)感染症

 

 人類の歴史をふり返ると、戦争とペストのような伝染病が世界の人口規模を調整する役割を果たしてきた。戦争は、核兵器の出現で抑止力が高まっているが、感染症のほうは新しい病原菌やウイルスの誕生で常に蔓延する可能性がある。

 私が厚生労働大臣のとき、2009年4月に、アメリカとメキシコで新型インフルエンザが発生し、世界中にパニックが広がった。日本も、このパンデミックへの対応を準備していたが、突然の発生に政府をあげて対応した。日本でも患者が発生し、担当大臣の私は昼夜を問わず対応に追われた(拙著『厚生労働戦記』に詳しく書いた)。

幸い、医療現場や国民の協力を得て、また海外からワクチンを輸入するなどして、終息させることができた。これが弱毒性の豚インフルエンザであったので助かったが、強毒性の鳥インフルエンザであったらもっと大変だったと思う。

 その鳥インフルエンザが変異した新型インフルエンザが、スペイン風邪である。これは、第一次大戦中の1918~19年に世界中に大流行したインフルで、5000万〜8000万人が死亡している。第一次世界」大戦の死者数が1000万人、第二次世界大戦の死者数が3200万人であるが、これらの数字と比べると、その多さに愕然とする。兵士にインフルによる死者が急増して、それが第一次大戦の終結を早めたとも言われている。

 都知事時代の2014年夏には、東京の代々木公園でデング熱が発生した。海外で感染した人が、代々木公園付近で蚊(ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ)に血を吸われ、その蚊が媒介して感染が広がったようである。このときも、消毒を徹底するなどして、対応に万全を期したが、次々と襲いかかる感染症には閉口したものである。

 2014年夏には西アフリカでエボラ出血熱が大流行した。これは死亡率が90%という恐ろしい伝染病である。医療の発展と衛生状態の改善によって、人類は次々と感染症を克服してきた。しかし、また、新たな細菌やウイルスが出現し、人類の生存を脅かす。

 最近は、沖縄から始まって「はしか」が日本中に流行しているが、かつて流行った伝染病がまた流行することもある。けして侮ってはならない。それは、風疹や梅毒についても同様である。

 感染症は人類を滅ぼす可能性がある。ABC兵器のうち、核兵器も地球を破滅させるが、生物兵器もまた同様な危険性を伴っている。これからも、感染症との戦いは続く。