(5)テロリスト
国際政治に大きな影響を与えるアクターとして、国際的なテロリスト集団がいる。最近の中東情勢を揺るがしてきた組織が、イスラム過激派のIS(イスラム国)である。シリア内戦にも深く関与し、欧米、ロシアなどが掃討作戦を繰り返してきた。
また、同じイスラム過激派にアルカイダがおり、彼らは2001年にアメリカで、ワールドトレードセンターへの旅客機での突入などの同時多発テロを引き起こし、世界に衝撃を与えた。そして、このテロ事件が、イラク戦争への導火線となった。
このようなテロリスト集団は、自らの唱える政治的目的を達成するために、暴力や暴力による脅迫を用いる。発展途上国における貧困などが民衆の不満をかきたて、テロの背景になっていることも忘れてはならない。
安全保障と言えば、従来は主権国家が他の主権国家からの侵略や武力による威嚇に対して講じる措置であったが、今やテロリストから国民の生命と財産を守るという役割が大きくクローズアップされている。
イスラム過激派としては、ISやアルカイダの他にも、レバノンを拠点とするヒズボラ、パレスチナのハマス、パキスタンのタリバン、イエメンのフーシ、サハラ以南のボコ・ハラムなどが存在している。
ISなどは、テロ活動を遂行するために武装しているが、武器や資金の供給がどのように行われているかは、全貌が明らかになっていない。しかし、たとえばシーア派のヒズボラやフーシに対しては、同じシーア派のイランが援助をしているとされている。
因みに、アメリカは、シリア、イラン、スーダン、北朝鮮をテロ支援国家に指定している(2017年11月現在)。
テロリストはイスラム過激派のみならず、中南米のセンデロ・ルミノソなど世界で様々な組織が活動しているが、コロンビア革命軍やIRA(アイルランド共和軍)のように、多くの組織が衰退したり、合法化されたりしている。それだけに、イスラム過激派のテロリストの活動が突出してみえる。
世界が恐れているのは、テロリスト集団がABC兵器(核、生物、化学兵器)を保有することである。北朝鮮がこれらの兵器を製造し、シリアやイランなどに輸出して外貨を稼いでいる。北朝鮮の非核化のみならず、ABC兵器の輸出にも監視の目を向けねばならない。
さらに、情報技術が進歩した今日、サイバーテロの危険性が指摘されている。2016年のアメリカ大統領選挙では、トランプ陣営を有利にするために、ロシアがサイバー攻撃を行ったと言われている。
もし、テロリスト集団が、ある国のネットワークを集中的に攻撃した場合に、交通網や通信網が混乱状態になり、日常生活にも多大の影響を及ぼす可能性がある。
とくに2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会では、このサイバーテロへの備えが必要である。テロリストが使用する手段も進化を遂げており、対応する側にも一段の技術革新が求められている。