政治学講義㉟:(4)政治家と官僚④厚労大臣時代・・・Ⅸ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 森友・加計問題などは、「安倍政権と一部のマスコミの戦い」のような様相を呈している。トランプ大統領もまた一部のマスコミに対して敵意を丸出しにしている。

 それは、マスコミが世論形成に大きな影響を及ぼすからである。マスメディアへの対応を誤れば、それこそ政権に取っては命取りとなる。もし、安倍首相退陣ということになれば、反安倍政権のマスコミの勝利ということになる。

 私が閣僚として仕事をした安倍、福田、麻生政権に多くの問題があったことは認めるが、政権に対するマスメディアの対決姿勢もまた、自民党政権の崩壊に大きく貢献したと言えよう。

 マスメディア、とりわけテレビへの対応をどうするのかは、難しい課題である。私のように20年以上もテレビの世界で仕事をしてきた人間ですら、大臣としてマスメディアにどう向き合うかという課題に、毎日頭を悩ましたものである。

 基本は、情報公開。そして、できるだけ大臣自らが会見して、記者たちの質問に答えるという姿勢を一貫して堅持した。これは間違っていなかったと思う。

 厚生労働省という役所は、広報ということが苦手であった。それは、管轄する分野が広く、しかも国民生活に密着した分野であるため、四六時中、マスメディアの批判にさらされており、それだけにマスメディを毛嫌いしてきたのであろう。

 私は、大臣に就任するとすぐにこれを根本的に改めることにした。まずは、大臣会見室の整備である。立って会見できるように、演題を用意する。背景は濃紺のカーテンで引き締める。

 さらには、厚生労働省のロゴマークを一般から公募して決めた。そして、パワーポイントを活用し、テレビ画面のようなディスプレイを使って重要な論点やデータを映し出して説明できるようにした。それは、新型インフルエンザへの対応などで、たいへん効果的であった。

 このように情報を公開し、会見を通じて国民とコミュニケーションを深めたことも、政策遂行に大いに役立った。族議員たちは、公開される前に情報を入手しなければ不機嫌となる。しかし、彼らを特別扱いする必要は毛頭ない。

 しかも、日本の政治家は、情報漏洩の専門家であり、秘密が守れない人種である。事前に情報を渡しでもするならば、すぐにマスメディアにリークする。

 族議員と官僚は癒着しているので、「大臣、先生方(族議員)に根回しを」と言ってくる。「テレビニュースに流れる前に知らせねばならない」というので、私は、「それなら1分前でよい」と言って、あえて族議員の不興を買わないように、本当にぎりぎりのところで、役人を通じて彼らに情報を伝達させたのである。

 政治家、官僚、業界に加えて、マスコミが政治過程にどのような影響を及ぼすかについては、本格的な研究が必要である。「批判はするが責任はとらない」というのがマスコミであり、それが現代の大衆社会にポピュリズムの要素を増やしている。