政治学講義㉙:(4)政治家と官僚④厚労大臣時代・・・Ⅲ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 安倍政権下で、森友学園や加計学園の問題が大きな政治問題となり、官僚による忖度、公文書の改竄などが厳しく指摘されている。厚労省も、裁量労働制に関するデータの不適切な処理が批判された。さらには、日本年金機構(年金記録で問題が露呈した社会保険庁を私が改組したもの)がまたもや、年金記録の入力ミスを発生させている。

 10年前の厚労大臣時代に、私は、大臣が役人を掌握できるような体制にすべく努力したものである。

 予算とともに、人事にも手を加えた。入省年次を考えながら適材適所を実行するのは容易ではない。厚生労働省の場合、医系技官などが「聖域」を形成しており、大臣といえどもこれに手を突っ込むことはタブーとされてきた。

 しかし、聖域には腐敗が生じる危険性もある。従来は医系技官が占めるポストとされていた医政局長のポストを文系の事務官に変えたが、この人事改革を断行できたのは、大臣になってから2年目のことである。1年目には、役人の抵抗が激しく、それは不可能であった。

「脱官僚・政治主導」を実現させようとするのならば、大臣は最低でも2年以上は継続して任務に当たらねばならない。省内の人心を掌握するためにも、大臣として一定の業績を上げる必要がある。

 官僚にも限界がある。それは、省益を超えるのが難しいということである。各種の審議会にしても、省益を守るためのカモフラージュの役割を果たすことが多く、批判的な識者がメンバーに選ばれることはあまりない。これでは、政治主導で大きな改革など不可能である。

 そこで、私は、大臣直属の研究会や懇談会などを立ち上げ、意図的に政府や厚生労働省に批判的な人物を委員に任命したのである。「安心と希望の医療ビジョン会議」や「年金記録問題作業委員会」や「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政の在り方検討委員会」などである。

 これらは、いずれも官僚の枠を超えた発想で、国民のための厚生労働行政を推進する上で大きな成果をあげた。また大臣のアドバイザーとして、他省庁や民間から優秀な人材を集め、「改革推進室」を発足させた。

 これは、フランスでは「大臣キャビネ」と呼ばれる組織で、省内の部局間の対立を調整し、各省との懸案事項についても大臣の手足となって問題解決を模索するものである。これは、とりわけ省庁間の縄張り争いを調整するのに役に立った。

 このように、私個人の努力で可能な限り行政効率を上げ、国民のためになる仕事を遂行できる体制を固めたが、個人の努力には限りがある。昨今の安倍政権下の役人の立ち居振る舞いを見ていると、日本の官僚制度、そして政治家と官僚の関係について、抜本的な見直しが必要であるとの感を強くする。