北朝鮮にどう対応するのか | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 今朝5時58分、北朝鮮は弾道ミサイルを発射した。事前通告もない暴挙であり、国連安保理を中心として国際社会は厳しく対処する必要がある。

 ところで、19年前の8月末に、北朝鮮は弾道ミサイルのテポドン1号を日本に向けて発射している。そのとき、『エルネオス』という雑誌に「北朝鮮の脅威」というタイトルの論文を書いたが、その一部を以下に抄録する。

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 北朝鮮が、8月31日に日本に向けて発射した弾道ミサイル、テポドン1号は、射程が2000キロに及ぶ新型ミサイルである。このミサイルは、日本列島を完全に射程内に収めるもので、日本のみならず、北東アジアの安全保障にとって大きな脅威となる。北朝鮮は、弾道ミサイルではなく、人工衛星だと主張しているが、いずれにしても、発射してから10分以内に到達する武器で、核兵器や化学兵器(毒ガス)や生物兵器(細菌)で日本を攻撃できる能力を備えたことは間違いない。人工衛星であれば、大陸間弾道弾(ICBM)すら開発できることを意味し、世界全体の安全保障に深刻な影響を与える。

 国民が食糧不足で飢えても、軍事費は減らさず、着々と軍事技術の開発を進める恐るべき兵営国家である。このような体制の存続を許してはならないが、他国が武力で潰すわけにもいくまい。

 北朝鮮は外交巧者である。彼らは、アメリカしか相手にしない。日本や韓国の頭越しにアメリカと交渉する。その結果将来の核開発を凍結する見返りに、軽水炉建設や重油供給などの援助を勝ち取っている。新型ミサイルを開発してもらいたくなければ、カネを払えというのが、北朝鮮の言い分である。

 日本は、北朝鮮に対して厳しい態度を維持すべきである。厄介な隣人には、あらゆる手を使って対抗するしかない。

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 この論文中、テポドン1号→火星12号、2000㎞→5000㎞と変えれば、ほとんどそのまま今回のコメントとしても使える。19年前は、金正恩の父親、金正日が国家元首であり、軍が金正日へのプレゼント、国威の発揚として行った弾道ミサイル発射であった。この20年間で変化したのは、ミサイル・核兵器開発が格段に進んだことであり、世界にとって大きな脅威となっている。

 「アメリカしか相手にしない」という外交方針は、金正日のときから不変である。「金王朝」による独裁体制維持が最高の目的であることは、金正日も金正恩も同じである。しかし、金正恩は父親ほどの外交体験がないし、体制崩壊に対する危機感もより強く、非妥協的である。兄の金正男を暗殺したことは、その象徴的な出来事である。体制維持(飴)と引き替えに核兵器やICBM開発を断念させられるかどうかが、今後のアメリカ外交の課題である。外交の成功のためには、経済制裁のみならず軍事的オプションを含む鞭が不可欠である。