都知事こぼれ話(13):東京国際金融センター構想(7) | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  東京都の持つ資産や技術を活用して、経済を活性化し、海外からの資金を東京に呼び込むことが出来れば、国際金融都市としての東京のランクが上がる。都には、大都市として世界に誇る技術やノウハウが蓄積されているが、私は、それを海外諸国に輸出することを考えたのである。大都市には、交通渋滞、大気汚染、ゴミ処理、ゲリラ豪雨など共通した課題があり、その解決には、都の誇る先端技術が役に立つ。

 たとえば、集中豪雨については、平成24年11月に目標整備水準を引き上げ、区部では75ミリ、多摩部では65ミリの降雨に対応できるよう護岸や調節池(河川の水量が増したときに、地下に巨大なプールを作って、そこに水を誘導して一時的に貯め、氾濫を防止するシステム)などの整備を進めることにした。平成26年度末の整備状況は、まず護岸整備については、324.0kmの予定のうち213.3km、つまり66%が整備済み。調節池は、11河川25箇所がすでに供用開始となっており、貯留量は212万㎥。私も環七の近くの善福寺川の調整池を視察し、その巨大さに圧倒されたが、それが集中豪雨から家屋の浸水を防ぐ大きな役割を担っているのである。

 2016年6月に「TOKYO TECH BOOK」という本を纏めたが、これには、東京が誇る様々な技術が、見開き英語・日本語の二カ国語で説明してある。「インフラ」、「環境」、「保険・産業」の4分野で構成し、まちづくりや道路、港湾、上下水道、消防救助、環境対策からトウキョウX(東京ブランドの豚)に至るまで、各局が持つ技術を幅広く収録したが、これを海外の都市に役立ててもらいたいと思ったのである。

 たとえば、道路陥没に悩むソウルは、都と協定を結び、われわれの技術支援の下、対策を講じている。在京の大使館や海外からの賓客にこの本を差し上げたが、高く評価された。東京都の技術が、世界の都市が抱える問題の解決に資すれば、嬉しいかぎりであるし、そのような都市間の協力が、国家・国民間の友好関係にもつながっていく。このような都市外交のメリットにももっと注目してもらいたいものだ。

 問題は、アジア諸国などの中には都の保有する技術を必要としながらも、それを購入するための経済力・資金力を欠く国々があることである。そこで、政府のODAなどを活用して対象国の経済力向上を図る道を模索する必要がある。私が官邸や各省と協議し政府との良好な関係を保つように努力したのは、そのような政府・都の連係プレイが念頭にあったからである。都としても、職員を当該国に派遣したり、先方から研修生を受け入れたりする努力を展開した。

 このような努力が実って、都の技術やノウハウを海外に輸出できれば、海外にインフラ市場が形成され、東京に資金が入ってくる。発展途上国を豊かにすることが、東京を国際金融都市に押し上げるのに資するのである。東京がニューヨークやロンドンなみの世界の金融センターに発展するためには、そのような大きな戦略が必要なのである。