都知事こぼれ話(3):ポピュリズムと日欧の政党(1) | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 カメレオンは、状況によって体色を変化させ、背景に溶け込んで見つかりにくくする能力を持っている。大衆が感情的に動き、それが一定の「世論」を形成するとき、その大衆からの集票を目的に、主義主張、信条、政策をかなぐり捨てて、その「世論」に阿る政党が出てくる。そのような政党をカメレオン政党と呼びたい。そして、そのような政党の無節操な動きがまた、ポピュリズムを増幅させる。吹く風に身も任せて右に左に揺れるのであるから、心棒も何もない。ただ、選挙に勝ちさせすればよいという魂胆である。

 ヨーロッパは、今、移民排斥が大きな争点となり、右傾化、ショービニズムの跋扈が懸念されているが、その流れを担っているのは、ヒトラーのナチズムにもつながるような外人排斥・自国民第一主義を政策とする極右政党である。

 2016年12月4日に決選投票が行われたオーストリア大統領選では、緑の党のアレクサンダー・ファンデアベレン氏が自由党のノルベルト・ホーファー氏に僅差(得票率で51.7%対48.3%)で勝利した。この自由党は、1956年にナチス・ドイツの元党員らによって設立され、その後、元党員を排除しつつ、「オーストリア民族主義」を掲げ、難民排斥を唱う。彼らが党勢を拡大した背景には、経済のグローバル化に伴う失業率の増加、難民・移民の増加がある。

 フランスでは、2017年5月の大統領選挙で、マリーヌ・ルペン党首に率いられるフランスの極右政党、国民戦線が決選投票に駒を進めた。また、オランダでは、2017年3月の下院選挙で、ヘルト・ウィルダース党首率いる極右の自由党(PVV)が第一党の地位を狙った(結果は第二党にとどまった)。また、ドイツでも秋には連邦議会選挙が行われるが、フラウケ・ペトリーが率いる反移民を唱える右派政党「ドイツのための選択肢(Altanative fur Deutschland):AfD」の躍進が予想されている。

 これらの政党は極右政党であるが、カメレオン政党ではない。カメレオン政党は、極めて日本的な現象である。つまり、これらヨーロッパの極右政党と日本のカメレオン政党を「ポピュリズム」という言葉でひとまとめにすることはできない。少なくとも、前者には主義主張や政策の一貫性がある。しかし、後者は、たとえばトップが変心すれば、その方向に動くという点で独裁的で、有権者にとっては、予見・計算不可能な政党である。