舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  新年早々の米軍によるベネズエラ急襲に始まり、イランの政情不安、グリーンランド問題と、世界は大きく揺れている。一方、国内では、高市首相が解散総選挙を決めた。内外の課題が山積する中での突然の選挙に対しては、与党内を含め、多くの不満が表明されている。世界と日本はどこに向かうのか。

 

 アメリカが、国連憲章や国際法を無視して、貪欲なまでに自国の国益を守ろう

とする姿勢は、第二次世界大戦後にアメリカが主導して構築した世界秩序を崩壊させている。アメリカの寛大な経済援助、世界の警察官としての安全の確保、基軸通貨ドルを中心とする国際金融システムなどが、廃墟と化した世界を復興させた。そのような公共財を提供することは、「ただ乗り(free ride)」を許すことであり、それができなくなったということは、アメリカの力の衰退に他ならない。

 

 グリーンランドはデンマーク領である。トランプ大統領は、それを、軍事力を行使してでも獲得する意欲を示している。

 ベネズエラ攻撃には、石油利権は別にしても、独裁と戦い、民主主義を守るという大義名分があった。しかし、グリーンランドの場合、それはない。

 地球温暖化によって北極海の氷が溶け、航行が可能になったことが、グリーンランドの戦略的意味を大きく変えた。中国やロシアが触手を伸ばしているので、その前にアメリカが入手するという。

 当然のことながら、グリーンランドやデンマークは、「売り物ではない」と言って、猛反発している。デンマーク軍も臨戦態勢に入っている。デンマークのフレデリクセン首相は、アメリカが軍事侵攻すれば、「NATOは終わる」と言っているが、その通りである。

 

 主権国家を侵略することは、国際法で禁じられている。しかし、トランプは、「自分の心の命ずるままに動く、国際法は関係ない」と豪語している。

 アメリカは、過去にも、1989年12月~1990年1月にパナマに侵攻し、ノリエガ将軍を拘束した。2003年3月にはイラク戦争を起こし、2003年12月にサダム・フセインを拘束した。しかし、イラクに大量破壊兵器が貯蔵されているという開戦の口実は嘘だった。

 

 中東では、イラン情勢が不安定化している。革命で、1979年にイラン・イスラム共和国が成立して以来、宗教指導者による統治が続いてきた。しかし、欧米による経済制裁の影響もあって、経済情勢は悪化し、人々は街頭に出て、抗議デモを繰り返している。イラン政府は、インターネットを遮断して情報管理を行っているが、数千人の死者が出ているという。

 トランプは、イラン政府がデモ隊を弾圧したら、軍事介入すると公言し、その

準備を進めている。しかし、イランは軍事大国であり、激しい報復が予想され、安易には介入できないのが現状である。

 アメリカが軍事介入する場合、イスラエルとの共同作戦となろう。中東の勢力地図が大きく変わることになる。

 

 トランプ流のアメリカ第一主義、「ドンロー主義」は第二次世界大戦後の国際秩序に終止符を打つ。

 

 

 

 トランプ大統領は、西アフリカのナイジェリアで多数のキリスト教徒が殺害されているとして、アメリカが軍事介入する可能性を示唆した。ナイジェリアで何が起こっているのか、そして、トランプの警告の背後には何があるのか。

 

 ナイジェリアは、人口が2億3千万人とアフリカ最大で、石油などの天然資源に恵まれている。国土の面積は、日本の約2.4倍である。三大民族は北部のハウサ人、南西部のヨルバ人、南東部のイボ人で、宗教は北部がイスラム教、南部がキリスト教で、人口比率はほぼ半々である。公用語は英語である。

 1960年にイギリスから独立した後、宗教対立から、イスラム教徒がキリスト教徒を襲撃する事件が頻発してきた。2010年には、ベロムで2000人以上のキリスト教徒が殺害され、キリスト教会も破壊された。

 

 2020年12月、米国務省は、「世界で最も信教の自由が侵害されている国の一覧」を公表したが、ナイジェリアは「特に懸念のある国」とされた。

 共和党のクルーズ上院議員は、ナイジェリアを「信教の自由を侵害する国」に指定するように議会に働きかけを行ってきた。10月21日には、Xに投稿し、「ナイジェリアでは、信仰の故に世界で最も多くのキリスト教徒が殺されている。2009年以降、イスラム過激派は5万人以上のキリスト教徒を殺害し、2万以上のキリスト教の教会、学校などを破壊した」と述べている。

 それを受けて、トランプは、10月31日、ナイジェリアを「特に懸念のある国」に再指定した。そして、国防総省に軍事介入の準備をするように指示した。

 また、ナイジェリアへの援助も停止する可能性も示唆した。バイデン政権下の2023年には、アメリカはナイジェリアに10億ドル(約1540億円)の援助を実行した。2025年は、これまで2億5千万ドルしか援助していない。

 

 いずれかの国で、宗教対立から、キリスト教徒ではなく、イスラム教徒が大量に殺害されているとしたら、トランプは、今回と同じような対応をしたであろうか。答えは否である。

 

 信仰故に迫害されたイギリスの清教徒が、大西洋を渡り、作ったのがアメリカである。人工的な国で、日本やヨーロッパ諸国とは異なる。

 アメリカとは何か。それは、「キリスト教」である。プロテスタントが主流であるが、新天地を開拓していく人々にとっては、まさに命がけの日々であり、心の支えが不可欠であり、それがキリスト教の信仰であった。

 

 トランプは権力基盤を大衆に置くポピュリストの扇動家である。今日の政治は左翼と右翼ではなく、高学歴で自立した層と低学歴で集団思考の層との「対立図式」であり、後者は論理ではなく感情を優先する。

 キリスト教徒を殺害している国に対しては武力侵攻するというトランプの主張は、「キリスト教のアメリカ」では、多くの国民に支持されるであろう。

 

 アメリカが西部を開拓していくとき、それを正当化する標語が「マニフェスト・デスティニー(Manifest Destiny)」であり、「明白なる使命」、「明白なる運命」などと訳される。

  

 トランプは、今年の1月20日、大統領就任演説で、マニフェスト・デスティニーいう言葉を使い、保護主義を実行したマッキンリー大統領(在任1897~1901年)を模範としたのである。

「キリスト教のアメリカ」に加えて、「マニフェス・トデスティニー」は、今後、トランプ政権が世界各地で軍事介入するときの正当化に使われていくであろう。

 日本もヨーロッパも、この「異質な国」アメリカ、とりわけトランプ政権への対応に苦慮せざるをえない。

 

 

 トランプ大統領は、ガザでの戦闘を停戦に持ち込んだのに続いて、ウクライナ戦争を終わらせる努力を続けている。8月15日には、アラスカでプーチン大統領と首脳会談を行ったが、ウクライナのゼレンスキー大統領の主張とロシアの要求の妥協を図るのは困難を極めている。

 トランプの主張がコロコロと変化するので、ヨーロッパ諸国も頭を痛めている。プーチンに対して妥協的な態度を示したり、強硬姿勢を見せたり、日替わりメニューのような有様である。ある意味で、原則がない。

 トランプは、ロシアとウクライナの双方に、「現状の前線で停戦すること」を求めたという。しかし、トランプの要求通りにすれば、ロシアがウクライナ東南部を占領したままの停戦となってしまう。

 ところが、 トランプは、9月23日、ニューヨークでのゼレンスキーとの会談後、「ウクライナは、ヨーロッパの支援があれば、元の姿を戦って勝ち取る状況にある」とSNS に投稿した。プーチンへの不満からか、ウクライナ領土の一部をロシアに割譲することを示唆していた従来の方針を転換したような発言をしたのである。ところが、それから1ヶ月も経たないのに、また主張を変えている。

 今のトランプは、ロシアが戦争に勝っているし、経済も好調だという認識で、負けているウクライナが譲歩しなければ、ロシアによって滅ぼされると考えているようだ。

 トランプにとっては、条件がどうであれ、とにかく停戦することが大事だということである。

 トランプは、ゼレンスキーとの会談後、SNSに「私は、プーチン氏に強く促したのと同様に、ゼレンスキー氏に対しても殺戮を止め、ディールを結ぶときだと伝えた」と記し、さらに「戦争と勇気によって境界線がひかれた。現状のまま止めるべきだ。双方に勝利を認めさせ、歴史に判断を委ねよう」と書いた。

 しかし、ロシア安全保障会議副議長のメドベージェフ前大統領は、「双方に勝利を認めさせて停戦させろ」というトランプの主張について、18日、それは「我々のケースには当てはまらない」とSNSで反駁した。そして、ロシアの大衆紙「モスコフスキー・コムソモレツ」(電子版)は、20日、「プーチン氏がトランプ氏の条件を受け入れる可能性は低い」と伝えている。

 領土問題と並んで重要なのは、ウクライナの安全保障である。ロシアがウクライナに侵攻したのは、ウクライナがNATOに加盟することを阻止するためである。プーチンにとっては、ウクライナがNATOに加盟しないことが停戦の絶対条件である。

 トランプは、ウクライナをNATOに加盟させることはない。停戦を実現させるためである。

 それでは、ウクライナの安全をどうやって守っていくのか。

 9月4日にパリで有志連合の首脳会合が開かれ、「26ヵ国がウクライナへ軍隊を派遣するか、陸海空に展開すること」が、正式に合意されたが、まずは兵士の訓練や武器支援でウクライナ軍を強化し、その後、有志連合の部隊を派遣する。

 トランプは、米軍を派遣して直接関与させることは拒否している。要するに、ヨーロッパ諸国がウクライナを支援すれば良いという、いわば突き放した対応である。