「21世紀に蘇る柳田國男の農政学」

キャノングローバル戦略研究所山下一仁主幹著

 

から、要点だけ箇条書きにしました。(文責:安江高亮)

 

明治6年の地租改正で、年貢の徴収権が地主に移り、

地主が多勢を占めた帝国議会は小農主義をとり、

柳田國男などが唱えた中農主義は否決され、小農主義が今も続いている。

日本の農業は世界から取り残され、ガラパゴス化してしまった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

江戸末期~現在まで:農地・農業の歴史
 

▣ 江戸時代の農業:年貢は米で収めた。

▣ 明治6年の地租改正で、年貢徴収権者を所有権(地主)に。小作人は劣悪に。

▣ 横井時敬は小農論展開=地主派・農本主義(農は国の本)、国家主義と結びつ

 き戦前の支配的な思想。兵隊の供給源となる。

▣ 柳田國男は小作人と自営農を擁護(中農主義)したが、地主と学会を敵に回して抹殺される。兼業は生産性向上を求めないため良くないと主張

▣ 東畑清一は柳田國男の考えを継いだ。戦後、農業問題各種審議会に参加。

▣ 明治は、小作料は収穫量の半分なので小農主義が地主に有利:政治力

 限界生産力逓減の法則により、多くの労働の投入は地主に有利で小作に不利

▣ 明治・大正の2つの課題:零細な農業構造、地主制

ここまで戦前 1945年まで

 

ここから戦後

▣ 農林官僚の悲願だった農地改革が行われ、地主制は戦後解体されたが、その先の戦略(農業改革)が無かった

▣ 農協が小農主義(保身)を引継いだ。つまり、数を背景に政治力を持ち、農業にとって不幸な小農主義を継続した

▣ 1961年、農業基本法制定。選択的集中策として、特に米作に集中

▣ 1965年から農家総所得がサラリーマン所得を超えている。兼業だから

▣ 稲作は兼業農家とリタイアした年金生活者で行われている

▣ 銀行は他の産業を兼業できない。JA農協はできる。米価を高くすることによって

 多数の兼業農家を維持し、その兼業農家の農外所得、年金所得もJAバンクに預け

 てもらい、預金量日本第2位101兆円の『まちのみんなのJAバンク』が誕生

▣ 1970年から、米農政の基本は減反政策:その為に補助金を出し、供給を減らして米価を高くし、財政負担して、かつ消費者負担も高めるという政策

▣ 民主党政権が導入した戸別所得補償制度は小農主義

▣ 国民は一人当たり年間1万円、合計1兆円を負担。それで農業が改善したかという

 と、米価が高いので零細な兼業農家が滞留して専業農家の規模が拡大しない

▣ 減反は生産を抑えることなので、農地の単収、生産性を上げることもタブー

▣ 安倍首相2018年度より「減反を廃止した」と言ったがフェイクニュースだった。実態は強化:飼料用米やWCS(稲発酵粗飼料)に食用米販売収入と同額の補助金を出し有利にして、主食米を不足に導き価格高値維持している

▣(一般論)日本の農業は世界の大規模農業と競争できない(最大のプロパガンダ)

▣(柳田、山下の考え)関税の他に何も対策がないと考えるのは誤り:農地を改良

 して生産性の向上を図り、競争できるようにする。兼業の否定と専業農家の拡大

 を計れば世界と戦える

▣ 農協の資材が高い:経営改善が必要

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

キーワード

☆ 米価引き上げ

・農家所得のため米価を上げ供給過剰に。1970年減反政策開始=米価維持政策

☆ 農協制度

・経済更生運動 ⇨ 総合農協 ⇨ 戦時下の統制団体(米の配給)⇨ 戦後の農協

 酪農などはJA以外にも専門農協があるが、米にはJA以外の農協はない ⇨

 JAはノートリアス(悪名高き存在)=強い圧力団体(農林官僚小倉武一)

☆ 農地改革

・農地改革:農林省の案がGHQの指示により1946年に実施:農地は政府が強制的

 に安値で買い上げ、実際に耕作していた小作人に売り渡された。

・GHQは保守化した農村を共産主義からの防波堤にしようと農地法の制定を

 農林省に命じた。池田勇人は保守の支持基盤ができると考え1952年に成立。

 自作農を作った=耕作者=所有者。株式会社が自作農として認められない理由

 自民党の狙いは的中したが、農地法により零細な農業構造が固定され、規模拡大 

 による農業発展の道は閉ざされた。農林省は農地法の制定に反対だった。

 

山下一仁氏の持論

TPPを推進、「日本農業は世界に勝てる」(日本経済新聞出版社)

減反を廃止して米価を下げて、

主業農家に限定して直接支払を払うことにすれば、

財政負担も半額で済む。

今よりも消費者負担、納税者負担ともに減少できる。

さらに主業農家への農地集積による規模拡大、単収向上によって、

生産性が向上し、コストが低下すれば、直接支払がなくても競争できる状況になる。

そして、米の輸出を増やせばよい。

そうなれば、その数が多いのは「正しく国の病」だと柳田が主張した兼業農家はいなくなり、専業農家、主業農家中心の農業ができるのではないかと考える。

 

参考:主業農家:農家所得の 50%以上が農業所得で、1年間に 60 日 以上自営農業に従事している 65 歳未満の世帯員がいる農家(農水省ホームページ)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ブログトップに戻る