ストレスと脳 | 身体の使い方の秘訣 〜運動の土台、整体の土台は、身体の使い方スキルUPにあった〜

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身体の使い方をレベルアップさせる秘訣を公開しています。

美しい姿勢、変幻自在な動き、対人関係におけるベストな「間」、疲れにくい体質の構築など、身体を「思い通り」にデザインする方法、整体施術をレベルアップさせる方法についてお伝えします。

● ストレスと脳

こんにちは、山崎です。


『セラピスト&整体師養成講座』のブログでは、『感性と技術』という故松本義光先生の記事を公開しました。

こちらでは、松本義光先生による『ストレスと脳』の記事を公開します。

※一部、改変しています。



ストレスと脳 Ⅰ

私たちの身体には「ホメオスターシス」(恒常性機能)という機能があります。

この機能は身体を一定の健康な状態、例えば体温を35度から36度くらいに保とうとする働きや心拍、血圧を一定の常態に保とうとしています。

これは自律神経系や免疫系、内分泌系などの身体を正常に機能させ生命を維持するためのあらゆるシステムを動員しているからなのです。

このシステムを正常に働かせるようにコントロールしているのが間脳、中脳、橋、延髄からなる「脳幹」といわれる部分です。

環境的要因や心的要因、身体的要因によるストレスが長い間続いてしまい潜在化したり、たびたびの強いストレスにさらされると、脳幹の働きのバランスが崩れてしまったり、脳幹の働き自体の機能低下が発生し、生命システムのコントロールが乱れてしまいます。

そうなると生命維持のシステムに狂いが生じ、ホメオスターシスが低下しストレスに抵抗できず、病気や怪我を招きやすい身体になってしまいます。

また脳幹は様々な感情の基本である、情動の発露でもあります。

つまり、好奇心、やる気、気力、根気などの生きる意欲や、喜怒哀楽の感情や愛情等の感情に影響を与えています。

ですから、脳幹の働きに異常が発生すると、気力や意欲、感情が低下し、心的ストレスを抑制することができず、生きる意欲までもが失われていきます。

つまり、ある種のストレスにさらされ続けた身体は、脳幹機能の「ホメオスターシス」が損なわれた状態、ストレスに対しての免疫が壊れてしまった状態になってしまうのです。

このような状態の時に、更なるストレスにさらされてしまうと、神経系の緊張はますます高まり、身体の反応はストレスホルモンの分泌によって、常に緊急回避の状態になってしまいます。

ストレスとは「外圧に対する内的圧力の応力」ということですから、身体と心の反応の仕方そのものがストレス、ということになります。



ストレスと脳 Ⅱ

「ホメオスターシス」恒常性機能とは、人の身体が外界からの条件によってある変化を起こしたり、身体に生じた別な要素によって常態が非常態へと変化したときに、もとの状態へと揺り戻す力のことを言います。

つまり身体のバランスを保っているわけです。

では、この「バランス」とは如何なる状態のことでしょうか。

「バランス」のとれた身体とはどのような状態のことを言うのでしょうか。

バランスとは固定された「安定」ではなく、一定の範囲内で「揺らぐ」ことのできる均衡のとれた状態のことを言います。

バランスは「自然性」ということにもつながります。「自然」は固定されていません。いつでも、どのようにでも反応し、適応することができます。

「自然性」とは「復元力」ともいえますし、「適応力」とも言うことができます。私たちの身体は、成長とともに様々な情報にさらされ、そのたびにストレスという抵抗のための内圧を高めていく作用を起こします。その内圧をうまく処理することのないまま、蓄積していく結果、筋肉の緊張のバランスや、呼応する脳幹の機能バランスをくずしてしまいます。

豊かで柔軟な復元力を持つ身体は、硬く固定化させてしまい、復元力を欠き、外圧が加わるたびにより硬化させ、自然性を欠いてしまいます。

身体は「ゆらぎ」の幅をもたなくてはいけません。

変化の中にこそ「バランス」は確立され、より自然性に近づき、自然と一体化したバランスのとれた生命を育むことが可能なのです。



ストレスと脳 Ⅲ

ストレスと脳と身体バランスは関連しあった相互関係で成り立っています。

ストレスは生命の進化にとってなくてはならないものであり、その影響は、筋肉の反射や脳の反応として現れ、その反応によるホルモンの分泌や、自律神経系の働きによって、身体と精神とのバランスは変化して行きます。

そして脳の反応の中でも、最も大切な部分が、「脳幹」といわれる部分です。

ここは生命の中枢であり、人間が生命体として働くことのできる基本的機能を司っています。


1.「脳幹」の作用

私たち人間の身体は、自らの意志で考え、行動し、生活を行う一方、意志とは関わりなく常に一定の生理作用を機能させています。

自律神経系、内分泌ホルモン、免疫等がその機能で、バランスよく正常に働いている状態では、健康な身体と思考を保つことが出来ます。

この生理作用の機能をコントロールし、生命の維持機能を司っている器官が、「脳幹」です。

「脳幹」は生命維持のための基幹機能だけではなく、身体の平衡バランス、危機回避、記憶、判断、言語中枢、筋肉反射、基本的情動にいたるまで様々な機能と能力をコントロールしています。

言ってみれば、「脳幹」が働いているから私たちは生きているのです。

そして「潜在意識下」の能力と心のコントロールも「脳幹」の働きで、これが正常に働いている限り、私たちは人間でいられるともいえるでしょう。



ストレスと脳 Ⅳ

2.「脳幹」の疲労

今、この「脳幹」がオーバーワークの状態にあり、「疲弊」しきって正しい機能バランスが狂ってしまったり、脳幹の能力自体が「退化」しつつあるのです。

この原因が現代社会がもたらすストレス因子からくる、「身体のストレス過多状態」なのです。

このストレスの元となるストレス因子は、大きく三つに大別されます。

一つが「心理的因子」で、個人の性格、気質、生活体験、情緒といった心に起因するものです。

二つ目が「身体的因子」、年齢、性別、慎重や体重等の身体特性、肢体不自由等の障害的身体異常などがこれにあたります。

三つ目は「環境的因子」、仕事、人間関係、家族関係、夫婦、暑さ、寒さ、土地の特性などの身体外の環境がこれにあたります。

こうした様々な因子が作用し、私たちの身体はストレスを感知し、反応していきます。

このストレス反応は「心理的反応」と「身体的反応」の二つに分けられます。

「心理的反応」は不安、怒り、抑鬱、緊張等の感情となって表面化します。

「身体的反応」では、自律神経失調、内分泌ホルモンの分泌バランス異常、免疫の不活性や筋・骨格系の緊張過多等となって現れてきます。

現在、このように表出したストレス反応を解消しようと、様々な方法が施されておりますが、最終的には脳の緊張を解き、「脳幹」の働きのバランスを整えるところに行き着かなくてはなりません。



ストレスと脳 Ⅴ

3.「ストレス」と「脳幹」

私たちはストレスといえば心因的なものばかりを考えがちになり、「心のストレスケア」を行おうとします。

しかし、ストレスは心だけではなく「身体」にも多大な負担をかけているのです。

この身体のストレスが、筋肉や皮膚、関節への緊張を過剰にし、その緊張が解消されることなく積み重なり、常態となり、顕在意識の範疇では気づかなくさえなってしまいます。

感度が鈍いということは正しい情報が伝達されないということでもあり、必要でもないのに緊張信号が脳から放出されたままになってしまいます。

大脳から送られてくる緊張信号は、脳幹を刺激し、様々な生理的反応を起します。

その反応が先に説明した「脳幹の機能」(自律神経、ホルモンの分泌、免疫、情動、身体反射、危機回避などの生きていくうえでの機能)なのです。



ストレスと脳 Ⅵ

4.「脳幹」と情動ホルモン

「脳幹」の機能の一つに基本的な情動の発露があります。

「脳幹」に生じた情動はホルモンの分泌を促します。

驚愕や悲しみ、怒りは「アドレナリン」を分泌し、不安や恐怖は「ノルアドレナリン」を分泌します。

そして快の感覚には「ドーパミン」が分泌されます。

この三つの分泌ホルモンが顕在的感情に影響し、表情を作り、感情を作り、好奇心や克己心、友情や愛情の発露となります。

では、この脳幹からのホルモン分泌の指令が脳幹の疲弊により能力が落ち、発せられなかったらどうなるのでしょうか。

私たちの顔から表情が消え、情愛や、向上心、好奇心といった、人が進歩・進化していくための感情エネルギーがもたらされなくなってしまいます。

また、「脳幹」からのホルモン分泌の指令が間違えられてしまったら、どうなるでしょうか。

例えば、私たちは誰かと競争し負けたとき、「悲しみや怒り」の感情が湧き「アドレナリン」を放出します。そして「アドレナリン」により、大脳辺縁系を経て新皮質に現れる感情は奮起の感情を起し、次には負けないように能力を向上させるように努力します。

しかし、このときアドレナリンではなく、快ホルモンである「ドーパミン」が分泌されたら・・・。「負ける」ことが快感となり、奮起や克己といった前向きな感情は湧いてこず、その人の能力は向上するどころか低下してしまうでしょう。



ストレスと脳 Ⅶ

5.「脳幹」と自律神経

「脳幹」からの指令によるホルモン分泌は自律神経系のコントロールにも大きく関わっています。

怒りや悲しみといった感情の発露は、神経を緊張させ、筋肉が緊張し、血流を阻害してしまいます。

つまり、交感神経優位の状態になっているわけです。

このとき「脳幹」が正しく機能していれば、神経が緊張し、脈拍や血圧が上がってしまった状態を回避するために副交感神経優位の状態にコントロールし、興奮性ホルモンの分泌を抑え、脈拍を落とし、血管を拡張し、興奮した神経系を抑制し、免疫系の働きも高めてくれます。

このように「脳幹」の働きは人の生命を維持し、病気になりにくく、怪我からの回避能力が高い、心身ともに健康な身体を形成していきます。

そして、この「脳幹」の働きのバランスを崩してしまっているのが、ストレスなのです。



ストレスと脳 Ⅷ

6.ストレス回避

ストレスを心因性に重きを置いて解消法を行っても、身体的ストレスが解消されなければ、「脳幹」の働きを回復させるためのリラクセーションが得られません。

身体的ストレスを解消するために、身体そのものの潜在的ストレスへのアプローチが必要となります。

この「潜在的ストレス」は、心身の奥深くに潜在するわけですから、顕在意識、つまり、大脳の表層の自己認識の部分で捕らえても効果は薄いのです。

もっと奥、古皮質に直接刺激が行くような感覚器官に働きかける必要があります。その一つが、身体の随所に存在する「体性感覚」なのです。

この感覚器は皮膚や筋膜、筋肉、関節、内臓等の多くの部分に存在し、身体の内部と外部からの刺激情報を感知する基幹です。

つまり、この器官に対して緊張を解いていく信号を送り込んであげればよいのです。

この手法を「快の触り方」といいます。

快の触り方により、代謝が安定すると身体に発生したエネルギーの圧力が低下し、身体内と脳内に発生していたストレスが解消されていきます。

ストレスが解消されていくと脳内の機能は安定し、脳幹の働きもバランスの取れた元の状態へと復元し、身体のホメオスターシスを向上させます。

※不快の触り方は、これらの逆の効果が出てしまうということです。



セラピスト&整体師養成講座では、

・骨格バランス
・緊張と弛緩バランス
・自律神経のバランス
・感情と思考のバランス
・直観と感覚のバランス

などなど、偏った学びではなくセラピストにとって本当に必要な学びをお伝えし、バランスの取れたセラピストへの昇華を目指します。


養成講座の『特典』に書き忘れてしまいましたが、故松本芳光先生が残された遺産、

・PDF113ページの資料『ストレスコントロール』
・PDF53ページの資料『感性と技術』


のプレゼントもありますので、養成講座以降にもこれらを『自分の言葉』にできるように頑張ってもらえたらと思います。


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