鉄道昇華 | 日々点描

日々点描

笑え、俺

 ここしばらく、電車に乗ったことがなかった。元々は、時間に縛られるのが嫌だったのと、線路のない場所へ気紛れに寄ることが出来んのが理由だったが、今となってはただの習慣になっていたに過ぎない。

 

 いつも車で行く先様からお誘いを受けた際に、特に「電車で来い」と付記があった。今更何故そんなこと言うのかと怪訝にも感じたが、連れの奨めもありまええっかと久々に駅に向かうことにした。

 見慣れぬ自販機から切符一枚買うにもほんのりと緊張しつつ、乗ってみれば楽チン。

 酷暑の中、涼しい室内に座ってるだけで目的地近所まで勝手に運んでくれる。至極当たり前の現実に、小さな感動すら覚えてしまった。

 思えば昨今、車の運転が極めて億劫になりつつある中、しかもガソリン高騰にあっては、電車って便利で素敵じゃないかと、考えを改めるに至ったのである。

 

 車窓も真っ暗の車内、風景も見えずにボンヤリしながら、手持ち無沙汰につい勘定してしまった。

 車両に乗客は俺を含めて24名。中で、スマホを見ていなかったのは俺ともう一人、腕組み目を閉じていたおっさんの二人だけ。

 残る22名全員が、まるで置物の如く同じポーズで微動だにせずスマホ眺めていた。

 

 やや不気味だったけれど、慣れればなんてことないだろう。

 これからは、電車に乗ろう。