種の生る丘 | 日々点描

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笑え、俺

 長らく改装閉園していた農業系テーマパークが、新装開園したと聞いて早速出かけてきた。

 

 綺麗な園内で、子供達は数分で飽きそうな草花や栽培野菜が所狭しと並んでいる。数年前ならば俺も即座に退屈するか、そもそも興味がなく行くことすらなかったけれど、連日農作業に勤しむ日々となってからは、展示陳列品全てが興味津々の鑑賞対象なのである。

 

 散策している途中で、園内北側に見慣れぬ草の群生地を発見した。

 そこそこ草木を認知してきたつもりなのに、まるで未知の生物である。しかも、囲いの中で整然と並んでいるからには、雑草では有り得ず管理下の作物であることは明らかだ。

 丁度その中で作業している関係者がいらしたので、遠慮なく問い合わせてみた。

「何すか?これ」

「人参の種だがね」

 懇切丁寧な紹介に目から鱗がボロボロと落ちる思いだ。

 

 つまり、こ~ゆ~ことである。

 人参は、収穫終盤でそれなりの管理と手入れをすれば、こんな具合に自分で種の花を咲かせることが出来て、それを使えば種を買わずとも延々と家内収穫サイクルが可能だというのである。

 

 ネットや書籍で、数多くの指南書を読み漁ってきたけれど、そんなんどこにも一行も一ミリも出ていなかった方法なのだ。

 

 そこで、俺はおのれのヒラメキに、しばらく痛みが続くくらいの力でパァンと膝を打った。

 そ~かそ~だったか読めた読めた農業界の裏と闇の世界。

 

 思えば指南書の発行元は、ほとんどが種メーカーだったのである。

 種が不要になる栽培法など、種メーカーは口が裂けてもバラすわけはなかった。民衆は、大企業の策略に騙されていたらしい。

 

 てことは恐らく、他の作物だって種を自分で作れるんじゃなかろうかと、やや興奮しながら帰路についたが、さしあたりどこを調べて誰に聞いたらいいのか心当たりがない。

 無念である。