1929 :AMAZONの「激安 超指向性マイク」の実用化改造(前編) | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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超指向性マイク(ガンマイク)の需要がビデオ音声用途をきっかけに増えています。

例によってAMAZONには2,000円台の激安製品があります・・・、

見た目同一の海外業務用と遜色のないものが2~3ブランド見かけますが今回、NEEWER限定で取り上げました。
 

「BUB」というブランド製品を最初に手にしましたがこれは同一デザインのかなり別モノ、分解・改造不能につきゴミ箱へ。

 

映像・音声機器専門でややマシなNeewer「NW-81」2,299円)を入手してみた。

これは初歩的設計ミスの製品ではあるが本質的な良さがあり、それを生かす方向の比較的簡単な手直し改造で音質を豹変させました。

きっかけは見た目にも好ましいガンマイクとしてイケるところに着目しました。

 

ハートブレイク しかし初歩的設計ミス=「TELE時逆相」は致命的です。

 

NEEWER NW-81(全長360mmです)

 

 ご覧の通り、ほぼ「安物感」はありません。

(しいて言えば3か所の金属リングは現場感覚からややズレているが金色でないので良しとする。ウィンドスクリーンにほぼ隠れる)

 

Sennheiser  MKH-416を意識しているのか重量は同一の175g(電池込)、長さが360mmと長いのはほぼ電池室分加わった長さに相当。

特にメーカーロゴなどは実使用時にはウィンドスクリーンにすっぽり隠れる、またシールでふさげば違和感はないだろう。

音と操作性が普通なら業務用途としても何の問題もないでしょけど・・・。

 

 製品では乾電池動作(単三 1本)、今回の改造ではファンタム動作化までは行わず、基本設計のミス手直しに集中、まずはこのマイクをまともなマイクに昇格させることを優先させた。

 

同一内容の「BUB」というブランドのモノは接着剤や両面テープで接着されている低次元の構造、最終的に分解不能にて基板の取出しが出来ず、ケースを金ノコで切断して基板を取り出すありさまでした。

BUBはプラブインパワーに対応し回路もかなり異なることを確認しました。

 

したがってNeewer2本と合わせ3本を入手したことになりますが、むしろ良い勉強となりました。

 

いずれも単三 1本動作だがNeewerは電池のみの対応、製品としては設計ミスを除けば許される範囲できっちりとしている。 

 

NW-81に付属してきた特性表  これはBUBでも同一データでした。

改造後の聴感上からこの表でもさほど違和感はありません。

 

 

注意 ファンタムでは動作しません。無理にファンタムをかけても動作しないばかりか内部のコンデンサ耐圧6V・16Vに対し危険な状態となります。

 

「TELE」と「NOMAL」の切り替えがあるが「NOMAL」は指向性ポジションというより「約12dBのPAD」としての動作だけであり、「NOMAL」ポジションの意味は疑問に思える。

 

同一デザイン品が数ブランドありますが「改造」を考えるならば「Neewer」です。

「BUB」で経験したように他ブランドではこの改造記事が役立つとは限りません。

 

 

 

クローバー (現物より回路を起こしました)

 

改造前回路図

切り替えSWは3ポジションです(OFF~Nomal~Tele)

 

 

 

【改造】

クローバー 肝心な「TELE」時、逆相になっているのをソースフォロワー出力にすることで「正相」にしてやり、まともなマイクにする。

同時にひずみ率の低減を期待した。

 

改造後回路図

これで正常化しました。

 

 

 

 

分解した様子

分解はネジ4本及びひねりロックのみ

 

 

 

改造箇所(部品面詳細)

文字が小さく読みずらい場合は保存・拡大してください。

 

 

コレクタ出力をエミッタフォロワに変更。(コンデンサはNichicon KT 50V10μF使用)

このときエミッタの223(0.02μF)は外し、820Ωは3kΩに変更、コレクタ抵抗(3kΩ)は短絡。

 

 

パターン切断箇所(拡大して確認ください

線材はスルーホールも通り抜けるAWG32の極細線使用

 

 

 

 

クローバー このマイクの良いところ

1.激安(2,299円でした)にもかかわらず、見た目にはほぼ業務用マイク

 と変わらない質感を持っている。

2.とりあえずXLR-OUTであること。

3.干渉管の設計の良さ、基本的な音質の良さを持っている。

4.分解・再組立前提の設計にて簡単にバラシ、組み立てが可能。

 

クローバー このマイク、肝心な「相」の問題を除けば大変出来は良いと感じます。

 

クローバー このマイクの問題点・特徴

1.肝心な「TELE」の時、感度の良さだけではない独特の違和感、そう「逆 

  相」です。そしてSWを「NOMAL」に切り替えると「正相」になる。

2.「TELE」「NOMAL」は指向性に変化は見られず、大きなレベル差と

 音質差(逆相)がある。

TELE時逆相、NOMAL時正相は製品として落第・致命的です。

3.ファンタム動作には対応していないことに注意。

4.アンバラOUTである。

 

 

しかしながら、この散らかった概要を整理してやれば優れた特性を引き出せる、と確信しました。

 

 

切り替えSW部分

 

 

【手直し改造内容】

1.TELE/NOMALといずれも「正相」出力させ、音の正常化。

2.TELE/NOMAL切り替えによるレベル差は約6dBに、音質の向上。

3.電池専用、不平衡出力についてはそのままとした。

 

 

 

改造回路図

(改造内容)

注意 注意:パターンは大変ひ弱なため、力ずくでチップ部品を外すことは厳禁、すぐパターンをダメにします。

新たな3kΩは必ずしもチップ抵抗である必要はありません。

 

1.TELE時、ソース出力としてNOMAL時ともに「正相出力」させた。

 

2.出力段エミッタのパスコン0.02μFを撤去、820Ωは3kΩに変更

(強くコテで熱して両極ごと溶かしてチップ部品を外す)

 

3.出力段カップリングコン16V10μFを50V10μF:nichicon KTと交換

(既存のコンデンサを外さず新たなコンデンサをエミッタ側に半田付け。

ファンタム対応にする準備として適正耐圧のコンデンサ使用、極性変更)

 

4.コレクタ抵抗3kΩは短絡。

 

 

実験をしながら簡単で有効な方法を検討中。

(できる限りどなたでも改造できる簡単な方法にします。)

 

(結果)

クローバー 「後頭部から頭の中をかき回されるようなイヤな逆相音」は消え、あたりまえの超指向性マイクにチューンUPされた。

「TELE」と「ノーマル」はレベル差はあるが改造前からは大きく改善された、同時に音質差によるチグハグさもなくなった。

どうってことない、これで普通になっただけだ。

 

クローバー 「TELE」「NOMAL」とのレベル差は約6dB、これは本来「指向性切り替えSW」であるがその目的は果たしていない。

「NOMAL」ポジションは特に必要ないだろう。

 

クローバー 音質は良く、特にロングボディとスリットまわりの音響設計がきちんとし

  ています。

 

 

 

(このあとの最終形はいかに)

最終形は後編で決めますが・・・・・

1.電池のみの動作

2.ファンタム電源のみの動作

3.ファンタム、電池 2WAY動作

4.ゼンハイザー12V方式

 

ニーズから考えれば ファンタムと電池の2WAY方式ですね。

アンバラOUTではありますが現実的に問題はないと判断、ここに手は加えないことにします。

 

 

 

クローバー 前編のしめくくりに

 こういった改造記事を書くと、同じ改造を実施される方だけでなく肯定意見と同時に必ずご批判の意見がWeb上に散らばって現れます。

技術的な批判意見もあれば、「音屋で買ったほうがイイ」、という堅実派もあり、いつも勉強させられます。

この改造には原理原則にもとずいて自身の判断で決めていく一定の経験と技を求められますので、それがない方は絶対おやめください。

 

 私は世にいう「二束三文のゴミマイク」を世界に通用するマイクロホンに変貌させることを行い、それは錬金術に似た行為ではありますが、大きな「善」だと考えています。

なぜならば「未完成」を「完成」に導く、という自然の流れに沿った行為だからです。

 

 3年前のAMAZON「激安中華マイク改造」は既存海外高級製品に負けない実力を持つマイクロホンに変貌することで、全世界に飛び火して大ブレイクし現在、「定番改造」として定着しました。

世界のメーカー・販社に歓迎されるはずもない一方、業界には少なからぬショックと影響を与えてまいりました。

 

 世の中には私の能力では到底届かない「その先の詳細解析」までされる研究者もおられ、互いに刺激材料として有り難いかぎりですがそれぞれの知恵が分散したまま終わっていることだけは実にもったいなく感じます。

 

 二束三文の激安マイクに改造で「活」を入れ、世界レベルに引き上げることは私のライフワークですが引き続き、業界刺激のカンフル剤としていきたいと考えています。

 

 

クローバー 後編ではこのNEEWER NW-81のファンタム/電池、2WAY動作を実現させたい。

 

   後編に続く

 

 

 

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