1911 : 私と写真撮影 「ボケフォトファン」との出会い | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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私と写真撮影 ボケフォトファンとの出会い

ただし私の撮影法、誰にもお薦めしません。

 

 そこはカメラファンや写真撮影愛好家のハッピーな場所ではない、写真撮影のなかでその表現に悩み、つまはじきされても自己表現の末たどり着いた「流刑地」なのかもしれない、すなわち「地獄」だ。

 

 

(ここに掲載した写真はレタッチをはじめ一切加工しておりません)

 「真昼のオーロラ」 

カメラ:EOS R  レンズ:Helios44-M4  58mm F2 (前玉反転改造)開放・フリーマウント撮影

(ロシアレンズ)=「(独) Carl Zeiss Biotar 」のロシア版

 

写真=光画、つまり光で絵を描くことだ。

 さて筆者と写真撮影との関係は30数年前、某メーカー、カメラ部門ににしばらく在籍していたことがきっかけです。「写真なんて写ればみんな同じだ」と公言する私にドイツレンズの魅力を中心に写真教育の機会を与えてくれた会社のおかげでしだいに自然写真の撮影になじんでいました。

 

同メーカー系の地域写真クラブで10年位活動していましたが年月が経過、習熟をするにつれ仲間の例会作品についてしだいに違和感を感ずるようになっていきました、それはアウトフォーカス部(ピントの外れた部分)の表現(ぼけ)の扱いについてです。

 ①シャッターチャンスより、そこにあるかもしれない「アウトフォーカスの美」を蒸しだして「絵」を完成させる。②そこに現れる意図しない光の造形を美の対象とするかどうかです。

私はその役割はこだわりを持って臨みたい、それは録音においてのホールトーンの役割と良く似ていると感じています。

 

(異端児で結構だ)

 浅いピント(開放撮影)を好むゆえ「ピンボケ」と紙一重の悩みを抱え、クラブ仲間の方向性とは異なるため「Shinさんワールド」と呼ばれ、指導にあたる写真家の評価と仲間内の評価は対極関係になっていき、しだいに写真クラブでは「異端児」扱いされるようになりました。

 

 当時、「ネイチャーフォト」という言葉が生まれ、1970~1980台にかけ、そのけん引役として多くのファンをかかえながら僅か41歳で生涯を閉じた写真家「木原和人」の表現世界に心酔していた。

 同時に「ノンジャンル」であるはずの写真クラブにおける活動に限界を感じ、次第に写真撮影から遠ざかっていった。

 

10年近い空白の歳月を経て時代はデジ一眼、これまで大判、中盤のダウンサイズ的だったはずの35mmも「フルサイズ」と呼ばれるようになり贅沢な対象であると知った。

当然フルサイズボディを選ぶことになるが、それは恐ろしく高価であることに驚いた。

 

やっとのことデジ1眼(EOS 5DmkⅡ)に持ち替えたまでは良いが、ボディ込みで片手ではしびれてくるほど重くレンズもまた巨大かつ超高価、絞り操作すらややこしい国産最新レンズのさらに違和感の強いロクでもないアウトフォーカス表現に「これが最新国産レンズのレベルなのか?」と驚くと同時に自分の想いを写し出すことは不可能、機能豊富で進化したはずの最新カメラとレンズは私にとっては失うものが大きく、見掛け倒しのお宝撮影機材は5~6年ほぼ放置されっぱなしとなった。

 

そんなある日、ネット上(Facebook 公開グループ)ボケフォトファン=堤代表(5,500人)を発見しその一員になりました。(2017年4月)

「ボケを主役に」と主客転倒した会の趣旨は、これこそが木原和人以来30年間 自分の求めてきた方向性だったのです。

 ボケフォト定番の「玉ぼけ」(下写真1・2)を駆使するにはハイテク最新AFレンズでどうにもならない。

収差を残したクラシックレンズをメインに、既存レンズに若干の改造を加えて収差を増やすアレンジも交えて自分のレンズとして仲間に加えていきました。

「クセレンズ」=クセ玉はボケフォトを楽しむ最初のハードルとなります。

玉ぼけ(バブルぼけ)レンズの定番、数十年前の「Trioplan 」=独 Mayer Optik の入手から始めた。

 

 

くせレンズ使用1

「窓辺」

EOS 5DmkⅡ Meyer-optik-Görlitz Trioplan 100mm F2.8

(独レンズ) 約100年前ドイツで設計されたトリプレットレンズ。

 

そしてだんだんわかってきた事は、「写真」の創世期、それを「光画」と呼ばれた通り、カメラを使って描く「絵」だということ。

 

(ミラーレス1眼カメラボディ EOS R にTrioplan 100mm F2.8を付けた様子) iphone7で撮影。

しかしこのような何もかもがビシッと写る表現(パンフォーカス)はボケフォト作品では禁止されています。

 

 

カメラはキャンバス、レンズは絵筆やドローイング・ナイフに相当して絵を描く、それが私にとっての「撮影法」=ボケフォトとして馴染んでいきました。

それを強力に押し出せるのは「絞り開放」によってのみ可能であるが、被写界深度の浅さゆえマニュアルフォーカス、手持ち撮影と合わせると難易度は高くなります。

仮にAFが可能であっても合わせるべきピント位置をカメラまかせにすることはまず不可能です。

 

 

ミラーレス1眼との出会い

ボケフォトを始めて、みかけ倒しの巨大なレンズから解放されると或ることに気が付いた、「ミラーレス1眼」だ。

低価格なAPS-CフォーマットのEOS M-3を購入、(年代落ちの在庫品のため約3万円)。

カメラとしては相当チープだが「ミラーレス」であるショックの方が大きい。

ファインダーの役割が次元を超えて進化、EVFにより撮像素子の映像を見て撮影する、つまりシャッターを切る前に撮影結果、ボケの様子が見える事に感激した。

EVFファインダー、これが有ってこそクラシックレンズが現代によみがえる撮影システムになってくれました。

 

 

くせレンズ使用2

「見上げれば」 

EOS-M3 (ミラーレス1眼) Pentacon AV 80mm F2

(東独レンズ) 東西冷戦時代Meyer-optik社は「Pentacon人民公社」= (東独側Carl Zeiss)の一部となりMeyer-optik-Görlitz Diaplan」の名前を「Pentacon AV」に変えられて生産が続けられた。

 

 

写真レンズ不使用

「彩彩」

EOS 5D mkⅡ レンズ不使用(ボディキャップに5φの穴をあけたルーズ・ピンホール)撮影

 

 

「窓辺に」 

EOS R  Eschenbach(エッシェンバッハ)7倍ルーペ(独)を写真レンズの代わりに使用

 

合体レンズ使用(メーカーのちがう古いレンズ2個を合わせてくせレンズに)

「クリスマスローズの反乱」

EOS R minolta(Rokkor 55mm F1.8の対物レンズをNikon(NikkoR)50mm F1.4に入れ替え合体

(Mi-Ni Art Lensと仲間内では呼んでいる)

 

つまり見た目はニコンのレンズだけど前からよく見るとミノルタ、という変種レンズ。

どちらもZeissの「プラナー(ダブルガウス)」タイプなので前群、後群のそっくり入れ替えが可能。

設計(アレンジ)のちょっぴり違うレンズを合体してわざと「収差」を起こしてアウトフォーカス部に想像もできない描写をさせる。それは一般にいわれる「ボケ味」とはやや異なる。

それでいてピントの合った部分はシャープであるのが特徴となる。
 

ピントの合った部分から外れていくと錯乱円(さくらんえん)と呼ばれる崩れた像が現れ、それを誰もが「ピンボケ」と呼ぶ。

 それはピントの合った像がしだいに崩れていく宿命として多くの場合しょせん「錯乱円」、主題(テーマ)に対する副題(サブテーマ)としてさえ扱われることさえなく、ピントの当たった部分にテーマ(主題)を置くことを常識とされてきました。当然といわれてきたがそもそもその事に違和感を感じていた。

 

時は流れてデジタル一眼レフに変わり、より多くの写真を経済負担なく撮れるようになったがAFとズームレンズが主流となりかえってこの不満と違和感は大きくなっていった。

 

一昨年、運命的、劇的な出会いに恵まれました。

それはWeb上の写真同好会「ボケフォトファン」(堤代表  5,500人)です、私にとって31年間紋々としてきた写真撮影の明確な方向性がそこにはあり、長年求めてきたことは間違いではなかったこと、私の人生を大きく変えてくれました。

 

 それは(テーマ)主題をボケに置くといういわば主客転倒ともいえる写真撮影である。

「主」「客」の関係において「ボケを主題に、ピントの当たった部分を副題に」など、頭がおかしいと現在でも考えられている、構わない。

それはヘソ曲がりのしわざではなく贅沢に美を求めて行きついた答え、「真実を写す」とはおよそかけ離れ、より絵画的思考、つまり美しいボケを伴った「カメラとレンズで絵を描く」行為だと認識しています。

カメラボディとCFやSDカードはキャンバスに相当、レンズは絵筆やドローナイフに相当し撮像素子に絵を描き出す。

クセを熟知したレンズで美しいボケ伴った絵を描き出すのが「ボケフォト」的思考だ。

 

もちろんピントがどこにも当たらなくともいい、「絵画」でもそれは作者の表現範疇。

こうなると、もはや「写真撮影」とは言えない、と眉をしかめるかたは多い、しかし18世紀後半、周囲の画家たちはモネの絵画の作品名からそれを「印象派」と呼び、蔑視し、中傷をあびせた時代があった。

「ボケフォトファン」メンバーも写真社会的にはちょうどそれと同じ扱いを乗り越えつつ益々自己表現を続け、「写真の印象派」として徐々に浸透している。

海外でも「Bokh」と呼ばれ日本発の美の対象として広がりつつある。

 

ただしアブノーマルな技術・表現は「抽象絵画」同様、ノーマルな基本セオリーの先にある、このため写真撮影の入口としてボケフォトを選んではいけない。

「わーっ綺麗!私もやりたい」、その前にちゃんと写真撮影を、まず一般写真の範疇でしっかり学んで十分経験を積んでから入門すべき表現世界。なぜならば、ボケフォトのパラドクスもオーソドクスも「ボケ」の扱い以外撮影の基本セオリーは同一だからである。

 

ところで 写真レンズはなんでまたドイツ(東・西)、ロシア(ソ連)製がこんなにも多く、写真家が好んで使うのはなぜ?、どうして粗悪な 「旧東ドイツ」や「ソ連」のレンズなんか使うの?、優秀な日本製レンズは世界一でしょ。

 それはちがう、写真レンズのあゆみをたどればその壮絶な開発の歴史、第二次世界大戦をはさんだ国家間の問題とそれに流されてきたメーカーと技術者の苦悩と仕事の結果に驚かされるでしょう、それらは1世紀経っても色あせないホンモノだからです。

 国産レンズはその模倣である、しかし単に模倣のうちはマシだったものを日本流に「カイゼン」してきた事が結果をどんどん悪くしていった、もはや手がつけられない。

 

国産最新「高級ズームレンズ」などでは14群18枚などあたりまえ、異常だがまだ上もある。

無理やりそこまでやったら味もそっけもなくなるのは当然、重箱の隅をつつきまわして「理想レンズ」と言い張るか。

大きい・重い・高い・描写力のダメなズームレンズが主流?、しばらく使わないでいたら「加水分解」っぽい、ベタベタにならないうちに「返品不可」ヤフオク行き。

そういうレンズをいつの間にか「高級レンズ」と呼ぶようになった。

私はそういう現在の国産カメラメーカー、レンズメーカーの方向性を断固拒否します。ボディにつられて入手した手元の超最新「高級レンズ」も一度だけ使って驚き、すぐ購入価格の半額でヤフオク処分した、なんと汚らわしいレンズなんだ。

 

 

最後に

コンデンサマイクロホンと写真レンズ

ジャンルは違うが立ち位置の同じ機材との関係はおもしろい、妙な共通点が多くどちらも深みは底なしである。

共通のもう一つの特徴、それは精密工業製品としてはどちらもドイツにその源流と発展体系すべてのノウハウを持つことである。

日本でのマイクロホン、写真レンズの発展もこの域を出ることはまだない。

 

レンズの場合はカールツアイスこれにあたり、マイクロホンではノイマンがこれにあたる。

さらに写真レンズではその同一設計・直系製品がロシア(旧ソ連)によって大量生産されてきたことは

戦争という歴史的なひずみが原因だとしてもツアイスの高度なノウハウが、ゆがんだ工業化に晒されることなく、進化しないまま現代に引き継がれてきた稀有な事実として現在なおその価値は変わらない。

 

(ご参考に)

・「ボケフォトファン」・・・ボケ・フォト・ファン 美しきボケフォトの世界。 ボケ表現のすべてがわかる撮り方ブック (玄光社MOOK)

https://www.fujisan.co.jp/product/1281701044/

 

facebook 公開グループ ボケフォトファン

 

 

 

 

以上

 

 

 

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