(はじめに)
このブログから世界に飛び立ち、ショッキングな内容ゆえ大きなブームを起こした「AMAZONの超激安コンデンサマイクが高級機に変身する改造」、あれからまもなく3年。
https://ameblo.jp/shin-aiai/entry-12115618790.html
基板部品・構造体のチープさはご愛敬、プラグインパワー動作と3番HOTをやめ、ツェナーノイズさえ対策すれば本質的な良さを見せ、ソースフォロワー改造+αで国際級のマイクになることが世界中のマイクロホン技術者に驚きを以て迎えられました、今でもその流れは変わりません。
写真は日本音響家協会主催の公開イベントにおけるマイク鳴き合わせ風景(2016年3月)
青いマイクが超激安改造マイク(ソースフォロワー)BM-800です。
よほどj自信がないかぎりこんな場所に登場させることはあり得ませんね、負けると思ったらこんなことさせません。
世界の名機11本との鳴き合わせは一歩も引くことなく参加エンジニアは目と耳を疑った、ローの薄さのみ僅か指摘があったがヨーロッパ勢同様の上位ランキング、注目度はダントツの一位でした。
このブログから発したこの流れは現在でもとどまることなく、ツェナーノイズ対策法はその後メキシコ~英国方式が加わり、世界を二分して事態を面白くさせています。また価格が安いのでケースのみ流用して自作マイクを作ることも盛んにおこなわれています。
しかし
このシリーズの激安マイクには外観上の「違和感3点セット」がありました。
1.センスのない見苦しいボディカラー(ポップ感とも言えず、只ただ安っぽいだけ)
2.高級感など微塵もなく恥ずかしい「金色」リング(はずすとホッとする)
3.安っぽい金色のスクリーンメッシュ(AKG 414とは似ても似つかず視覚上拒否反応を起こす)
この三者が一体になるとさしずめ「夜店(露店)のオモチャ」の雰囲気になり、現在では「3」を残すも2年前とは様変わりしている。
コストアップする要素はなに一つないのでよほど学んだのでしょう。
ボディカラーは上の写真が世界のすう勢、黒を含めた無色系、メッシュスクリーンはせめてシルバー系の金属色、できればつや消しであることがマイクロホンとしては好ましいが、現在はあたりまえの姿に向かいつつある。
(生産国の色彩感覚は100均の商品でもわかる通り日本人、欧米人感覚と大幅なズレがある。そしてマイクロホンに奇異な着色・メッキを加えるのは絶対受け入れられない)
さて、今回は1インチのカプセルであるKT-2578の新作進化系を用いたマイクの製作にあたり、この違和感3点セットを排した新デザインを提案します。
(この形状は古く、1928年創業時のノイマンCMV3をイメージしました。)
デザイン以外の内容は1708 :高品位新型1インチ大口径カプセル採用DIYマイクロホン の記事とほぼ変わりません.がこのカプセルは2SK117GR使用を前提に設計されているためこれを守り、高抵抗は(1GΩ)を外付けとしました。
【製作】
今回はこんな材料を使って外観をキメました。
右のほうは6mm程度のインチネジであるので6mmのタップを使ってネジを立て直した。
左の水道材料には穴があいていないので5.2mmの下穴をあけ、6mmタップを通し左右の金具をネジでつないだ。
こんなイメージができたのでこれを具体的に作りこんだ
1.AMAZON激安コンデンサマイクを所定の対策を施し、仕上げた。
・XLR部のリード線を入れ替え、2番HOTにした。
・ツェナーダイオード撤去・5.6KΩ抵抗と入替実施
・ケース内側に制振ゴムの貼り付け(ケース固体鳴き防止)
・ここまででサウンドチェック実施.(正常動作を確認)
2.KT-2578系カプセルマウントを台座の加工と同時に仕込んだ。
・基板を外し、既存のECMも取り外す。
・カプセルブロックを交換し、写真通りねじ止め、完成させる。
表面
裏面
*出力の極性
線はコネクタ側で入れ替えていますので色とは無関係にこのようになります、左からGND、HOT、COLD(XLRコネクタでは1、2、3)です。
実際、耳で聴くだけでわかりますが念のため。
3.背面はインピーダンスがきわめて高いためFETによるインピーダンス変換回路を仕込み背面の静電シールドを完全におこなった。
背面シールドは銅メッシュ30を内側に、ステンメッシュ40を外側に、二重シールド実施。GNDは外枠共通にファラデーシールドを完全にした。
【回路図】
絶品コンデンサマイクの完成です。
大口径1インチの良さを存分に、
「激安中華」のアレンジ版とは思えないいい感じの仕上がりです。
聴感上も申し分なくFFTでも20kHZ以上十分伸びているようで、30KHZ以上まではカバーしている印象です。
【最後に】
従来ならこの音はDCバイアスならではの世界であった。
製作してまず感じたのはこの大型ECMカプセルの素性の良さである。
それは巻頭に紹介した通り激安マイク搭載の中口径(16φ)ですら堂々たたるもの、それは現在のECMの標準レベルと言える。
僅かに低域の薄い16φの不満点をカバーし、美しいディテールを生み出すこの1インチECMカプセルの優秀性は他では入手できないだけに貴重な一品といえる。
かつて(1970年台)からはじまった「DCバイアス絶対!、ECMはゴミ」というコンデンサマイクの定番常識は完全にくつがえされています。
かつての国産コンデンサマイク(DCバイアス)名機と比べても圧倒的にこのECMの勝ちです。
我々が勝手に「DCバイアス型」だと疑わなかった超高価なヨーロッパ勢を中心に、メーカーでは詳細をあきらかにしない名機の数々がかなり昔からまさかの「ECM」であったことを理解してほしい。現状を知ってほしい。
(クラシック録音の定番xxxxも、ドラムトップのXXXXも、ましてや楽器コンタクトマイクは100%ECMです)
DCバイアス絶対主義の時代はすっかり過ぎ去っていたのです。
今回のカプセルはこちらで入手しました。
KOWAテクノロジー https://www.kouwa-tech.tokyo/contact.html
以上
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