1612 : ツェナーダイオードの猛毒性領域について | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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転ばぬ先の杖 とはいうものの・・・・・

シートベルトやエアバッグだって凶器に変身する。

それならツェナーダイオードはどうだろう

 

「ツェナーダイオードはアナログ信号ときわめて相性が悪い。

ツェナーダイオード」と書いて雑音発生素子」と読む。

 

 

ハートブレイク ツエナーダイオードは単純でパッシブな「定電圧素子」などではなく、スイッチング素子です、というかスイッチング動作しかしない強烈な「アクティブ素子」です。

この弊害は「分かっているよ!」という技術者ほど理解していないのが実体、メーカー製であってもタカをくくった安易な回路設計が随所で見られます。

 

 

例のアマゾン超激安コンデンサマイク の場合

まずこの製品では9V台ツェナーダイオードが使われている事が決定的ミスであります。



ツェナーダイオードは逆電圧をかけていくと6V付近を境以下の電圧ツェナーダイオードは「ツェナー降伏」それ以上は「アバランシェ降伏」によって、すなわち別のプロセスにより定電圧作用を示します。


つまり動作プロセスの違うデバイスをひとくくりに「ツェナーダイオード」と呼んでいるに過ぎません。


このように半導体メーカーでは6Vを境にはっきりと「別デバイス」として扱っています。

 

5V以下のツェナーダイオードは流す電流によってツェナー電圧が大きくバラつくため好まれず6V以上ではノイズレベルが高い、ということになります。

 

特に問題なのは約6V以上の「アバランシェ降伏」=(電子雪崩)の領域ではツェナー領域に比較し、ケタ違いに大きなノイズを広範囲な周波数帯にバラまきます。

さらに難しいのはアバランシェ降伏領域ではツェナーのみの定電圧回路の電源インピーダンスは20Ω以下と、非常に低い値になり、激しく汚れたDCとなります。

 

この領域のノイズ(ホワイトノイズ)は電圧振幅だけでなく電源インピーダンスの低さから電流振幅を伴った大きなエネルギーを持ち、電流が少ないほど大きなノイズを発生させるのが特徴です。

「ノイズにはパスコン」という電子回路の常識はここでは通用せず、このホワイトノイズを止めることはできません。

どんな種類のコンデンサを用いてもこれを鎮めることは不可能なのです。


バッテン ここにコンデンサを入れた場合

ノイズが減るどころか条件次第でホワイトノイズは更に増大する例が報告されています。(10dB位増大)こうなるとまったく収拾などつくはずがありません。


 

知ってか、知らずしてか 6V以上のツェナーダイオードをアナログ回路に、ましてやマイクロホンに使用するなどまさかの自殺行為以外の何物でもないと言えます。

 

 

えんぴつ 過去記事:1016「ファンタム式ホワイトノイズ発生器」

 http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-10493085078.html

これは11Vのツェナーダイオードをエンジンにした構成になっています。

 シリーズの1017:「ピンクノイズ発生器」 はさらにじっくり時間をかけてノイズを作り込みました。

 

 

【一般オーディオ回路でも】

このプロセスは宿命的なものであり、アナログ信号に対して避けることのできない大きなダメージを与えます。

オーディオ回路で何をやっても残留ノイズ「ホワイトノイズ」レベルが下がらない場合は今一度確認する必要があります。

「理想的低雑音回路」であろうとどんな「高級低雑音素子」を使おうと、そのご利益など全部キャンセルしてしまうほど強烈です。

 

アバランシェ領域のツェナーダイオードはノイズを出すことが半分は商売のなので・・・・

 

どうしてもツェナーを使用せざるを得ない場合は5V を含むそれ未満のツェナーダイオードまたはLEDをシリーズ接続して、その合成によってこの恐ろしい「アバランシェ降伏ノイズ」からは逃げられます。

 


本 一方、過去の経験も参考になります。

 

4年前のこの記事でもアマゾンの中華マイクと同様の方法でノイジーな有名安物マイクを実用マイクに変身させています。

 

1217:Behringer ECM8000を「使えるマイク」に改造(中編) http://ameblo.jp/shin-aiai/entry-11230219227.html

 

このように猛毒のツェナーダイオードを、ましてやマイクロホンに用いるなど言語道断の行為、これを避ける回路として「非安定ブリーダー・ドロップ方式」こそマイクロホンにはふさわしいことを訴えていますが、Shinさんのマイクには当初からいかなるツェナーダイオードも使用を拒絶しています。

「ファンタム式パナ改マイク」では6年半前の試作機からツェナーダイオードを不使用にしているわけですが、これこそ優れた方式であることをあらためて実感します。

 

                         以上



 

(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、fet3など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (オリジナル・パーツで製作)  
(Shinの「ファンタム式パナ改マイク」は従来通りPanasonic WM-61A使用です)


 


 

モノ作り日本もっと元気出せ   

 

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