※ この記事は公開から13年以上経過していることにご留意ください。
2024年1月追記
ECM(エレクトレット・コンデンサマイク) は 「エレクトレット現象 」
を利用して、成極電圧を不要とした画期的なコンデンサマイクとしてSONYによって1968年11月この世に登場した。
初のECMはカセットレコーダに搭載され、「このマイク(C-38A)同等の性能、世界初」をうたい文句に鼻息荒く登場した。(1968年12月)
そのテレコTC-1160はShinさん発売と同時に求め、それまでのダイナミックマイクとは次元の違う鮮明な録再音声にビックリし、周囲もドギモを抜いた忘れられない経験があります。
翌年春、単体ECMも登場。
C-38Aが9.5万円当時、単体マイクのECM-21は1.1万円でその「伸びきった高域」を持つ高品位のマイクは一世を風靡しました。
しかし、いかんせんエレクトレット振動板のなせる業、Shinさんも「何か変だ」と感じ始めたらもうダメ、独特の超高域のシャクレ上がりは許せない。
(ECM-21はその後の22を経てECM-23→23F系列として現行機種となっています)
ECM-50Nなど放送用に導入されたECMでは、それまでのRCAのBK-5(軸方向単一指向性ベロシティ)との音質差を嫌い、ウィンドスクリーン使用で襟に付ける事で、TV画面上の効果と併せて「サ行強調」を避けるスタイルが定着しました。
その後バックプレートをエレクトレット化した「バック・エレクトレット・コンデンサマイク」へと改良が図られ、単体製品も「超高域のあの悪魔が許せない!」のキャッチコピーでオーディオ雑誌を飾っていました。
しかし、いま考えるとその悪魔の原因は成極電圧を要する「コンデンサマイク」との決定的な欠点は方式的問題ではなく、むしろあのQの高そうなレゾネーション筐体の音響回路の側にあるとShinさんは思っています。
※※ 気になるのは 「エレクトリック・コンデンサマイク 」と誤って理解、表記されている場面が非常に多い点です、Google などで見てください、放っておけないほど乱れていませんか。
(この記事を書いた2010年4月11日現在上記リンク先では90%が「エレクトリック・コンデンサ」と表記されています、いまからこの関係者には徹底的に直させます、まずSONYが元凶だ)
中でも いくら何でもこれは許せません、ECMの発明者であるSONY がこれでは、やっぱりこの会社のマイクロホン事業は半世紀以上の歴史に幕ですか。 存続してほしいけど無理でしょう、「撤退したい事業」の文字が見えていますよ、残念です。
http://www1.jp.sonystyle.com/Qnavi/Product/ECM-G5M/ 「エレクトリックコンデンサ・・・」と記載
http://www1.jp.sonystyle.com/Qnavi/Product/ECM-S80/ 「エレクトロレットコンデンサ・・・」と記載
※「商品名です」という事ならさらに深刻です、世界的発明である自社技術に対する誇りや愛情を失ったとき 「神話」 とはこのようしてに崩れていく。
※2010.04.19 SONY により部分訂正されたが、まだたくさん残したままです。
04.23 残りもすべて訂正されたがこの混乱の下手人だ、と理解している。
さて、気を取り直して・・・・・
◎今回は明らかなPC用ECMの製品も含めてジャンク屋まがいのご披露です
※製造技術のUPやバック・エレクトレット化で、予期しないゼネラル・ユーズな機器に優れたマイクカプセルが使われている場合があったりするのは全く不思議ではないので、片っ端から観測とヒアリングテストを行ってみました。(明らかにダメそうなカプセルは入手していません)
上段左から ≪ホシデン≫ KUB-7823 KUB-6123 KUB-8223 (いずれも単一指向性)
下段左から ≪パナソニック≫ WM-13EU WM-61A (いずれも無指向性)
◎その他のサンプル
左から昔の富士通PC付属マイク、 エレコムMS-HS59SC、 アキバで見つけたクリップオン
【結論】
1.単一指向性6本、無指向性4本テストした結果、パナソニック(WM-61A、WM-62PC、WM-
E13UY)を超える音質のECMカプセルはやはり皆無であった。
2.単一指向性ECMは、速度成分の取り入れかたと筐体構造によって最終動作が決定する。
せっかく単一指向性カプセルを使用しながら動作理論に矛盾がある場合、「無指向性」となる。
3.PC用のECMの中には思わぬ掘り出しモノが隠れている可能性を否定できない。
4.かつてこのような実験は見た事はなく、「ちまたの評価」で選ばれたりするのがECMカプ
セルです。
なかなか多くの比較は出来ないが、いざ手にとって意識的にカプセルの個性を探ってみると、思わぬ宝物に出会うかもしれません。
WM-61Aなど、パナソニックだけでなく選択の幅を広げてみると意外なモノが見えてきます。
◎なによりもマイクを自作をされる皆様へのガイダンスになれば幸いです。
【ECM カプセルのスクランブルテスト】
1.KUB-7823 (ホシデン、単一指向性)
高域のクセが強く「サ行強調」が強く見られる。
①完全に両指向性マイクである。
②単一指向性としてはバックキャビティの効果を利用して低域を補完したマウントが必要であ
る。
③高域に鋭いピーク・ディップがある為利用範囲は限られる。
④残留ノイズは今回のサンプル中最も大きく目立つ。
2.KUB-6123 (ホシデン、単一指向性)
低域は全く出ないので音楽用途には全く向かない、スピーチ用途またはPC用途。
①8KHZを頂上にした特性を活かし、スピーチを中心とした音源に対応する。
音楽用途には一切に不向きである。
②単一指向性としては近接効果が薄い。
③正面からの音よりも背面からの音声の方が好ましい、接話状態でウェルバランス。
3.KUB-8823 (ホシデン、単一指向性)
ホシデンの単一指向性ECMの中では音楽用途に使えそうな唯一のマイクカプセル。
高域のクセの少なさ、低域の量感など良い素性を持つ。
昔の富士通PC付属のマイクと外観・特性・とも酷似しているが、音質は富士通に一歩譲る。
①8φという口径は今回の中では2番目に大きいので自作では収納ケースを要検討。
②構造上ソースフォロワ改造が不可能である。
③全体特性はWM-61A、WM-62PCと非常に似ており、これに近接効果が加われば楽器用の
コンタクトマイクなど音楽用途として十分使えそうな聴感印象である。
④単一指向性マイクとして仕上げるには速度成分(逆相)の取り込み方が決め手となる。
【今回テストしたすべてのマイクカプセルのスペアナ波形】
※測定環境のクセを考慮して波形をご覧ください
使用SP : ROLAND MA-12内蔵・・・・(密閉10cmフルレンジ) の正面10cmで観測
4.WM-61A (パナソニック、 無指向性)
パナ改ではなくソース接地の観測波形です(fetⅡの接続を変えて試験)
①無指向性ECMユニットとしては62PCなどと共にまれに見る名機
②ソース接地でも十分高音質ですが、よほど理由がない限りソースフォロワで使用しないともっ
たいないとShinさんは思います。
③1個100円で手に入るが桁違いの実力は誰もが認める。
5.WM-61A ソースフォロワ(パナ改) (パナソニック、 無指向性)
ご存じパナ改、ある意味でリファレンスとなる。
①使用したのはShinさんの「ファンタム式パナ改 fetⅡ」 です
②音質は絶対的な定評があります。
③ソース接地の61Aと比較しf特性データではその差は全くと言って良い程ありませんが、その音質は聴感上、定評のあるWM-61Aに磨きがかかり想像以上の高価なマイクと勝負出来るほど別物に変身する。 (中~高域・低域共にマイルドに熟成された音が手に入る)
(※ファンタム式パナ改fetⅡの場合であり、従来の一般パナ改の高評価とは桁違いの実績を持つ)
6.WM-E13UY (パナソニック、 無指向性)
こんな優れたカプセルが4個100円
①WM-61Aや62PCと比較してややカン高さを感ずるが、ほぼ同じ傾向の音。
それでも今回の他社サンプルのどれよりも高品位である25円の薄型カプセル。
②WM-61・62と完全にシリーズ化されている、ソースフォロワ(パナ改)への改造は最も難しそうなので、Shinさんは試したことがない。
7.WM-62PC (パナソニック、 無指向性)
WM-61Aとの違いは「低感度」以外ほとんど見出せないほど同一性を感ずる。
WM-61Aに比べ最大SPLは10dBアップする。
これも4個100円です。
①内輪でWM-61Aと並んで最もバランスのとれた高品位なナチュラルサウンドで今回のサンプ
ル中、最もコストパフォーマンスの高い優秀なカプセルである。
②WM-61Aとの違いは感度差です。音質は良く聴き比べるとごく僅かにハイ落ちが感ずる。
③ファンタム式パナ改用としても140dB/SPLを超える爆音まで問題なく扱える。(※ファンタム式パナ改の場合) 改造はやや難易度が高い
8.富士通、昔のPC付属のECM (マイクカプセルを使用)単一指向性
PC用としてはナチュラルな音質なため気になっていたモノ
①今回のマイクカプセルの中では最も現実的な音楽を扱える単一指向性ECMカプセルという聴
感印象である。
②KUB-8823と大きさ・形・特性カーブも似た傾向だが、こちらの方が1ランク上。
④背面からの音は非常に優れたバランスを示す
⑤ソースフォロワの出音も品位があり好ましい
⑥収めるケース次第で背面特性を活かした単一指向性超小型マイクが完成出来るはずである。
9.アキバのPCショップ店頭、バルクの安物クリップON 単一指向性
アキバで2~300円で購入したものだが気になっていた。
ヤフオクでも見かけ1,000円スタートであった。
①特性カーブでは高域の暴れが見えるが、聴感的には悪くない。
②このマイクカプセルはバラさなければ出てこない、安っぽいこの形状はどうも・・・・
10.CM-103Rマイクカプセル (アイコー電子、無指向性)・・・OEM品と思われる
3線式、大変めずらしくソースフォロワー結線したリード線付のDIY用マイク
①WM-61・62と非常に良く似た優れた音傾向、ややそっけない聴感印象だがパナだと言っても
十分通じる音の類似度。
②9.4mmφのサイズは今回の最大。
11.MS-HS59SC(Skype用) (エレコム、 単一指向性)
特にとりえもなく論外品、5~15KHZ付近の大きな暴れがある。
Skype用の中でも音の悪さで有名なマイク。
「無指向性」という仕様だが実際は極めて「両指向性」に近い「単一指向性」である。
PC用アクセサリ・マイクにはこういった「非音響界的」なズレやメチャクチャさがあり面白い。
【テスト考察】
1.「好ましい音のマイク」とは何か?を見直した場合、低域200HZ以下のロールオフカーブに
よって全体音の印象がガラリと変わる事を聴感上感ずる。
2.評価接続し、カプセルを触った出音が「カシャカシャ」云うものにロクなモノはない。
3.特性カーブは音質の良し悪しと必ずしも一致しない事を目の当たりにした。
またフラットな特性が絶対的ではない。
4.単一指向性マイクは「カプセル単位」では本当の評価は出来ないアウトライン評価である。
それは、無指向性ECMと決定的に異なるのは「カプセル単体では音質は決まらず」筐体に
組み込んで何ぼの世界である。
なぜならば、単一指向性マイクの音響回路はカプセルを収める筐体を含めて形成される。
それは背面特性を含めて設計・決定される。
5.ほぼこのレベルのマイクカプセル使用製品の中から「名機」が排出されている。
そのような製品ではカプセル価格より2桁~3桁上の販売価格となっている。
6.プリモ・フォスター・オーディオテクニカのECMカプセルをぜひ使って見たい、恐らくとんでもな
い答えが出るはずである。
※【今回のマイクカプセルの入手先】
パナソニック・・・・・秋月電子
ホシデン、アイコー電子・・・・・千石電商(販売品は激しく変わるようです)
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【おことわり】
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管理人(Shin)
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