2023年 5月 3日(水)
今日の気分は?
まるでドラマのような1日
この日はお昼過ぎに子供たちとの1泊2日の面会を終え、広尾の自宅に戻ってきたのは14:00。
鹿児島・博多出張と面会で、1週間会えてなかっためぐにやっと会えると思って、ドキドキしながら家のドアを開ける。
なんて声をかけようかな、なんて考えながら鍵を開け、家に入るも、人の気配がない。
あれ?めぐがいない...?
どこかに行ってるのかな。誰といるんだろう。何時に戻ってくるんだろう。ぐるぐると思考がめぐる。
今日の予定についての連絡はない。連絡なしでどこかに行くなんてこれまでなかった。
LINEを送るも、既読にならない。
だんだんと胸騒ぎが大きくなる。寂しさが込み上げる。
そういえばLINEの返信もそっけない。気のせいじゃないと思う。何か怒ってるのかな。
ダイニングに腰掛け、込み上げてくる寂しさに身を委ねる。こんなに寂しくなるなんて。心にポッカリ大きな穴が空いたような感覚。
今どんな気持ちでいるんだろう。なんで何も言ってくれなかったんだろう。
何も言わずに、目の前からいなくなってしまった。
それがたまらなく寂しかった。
しばらくして、出張の荷解きをする。力が入らないけど、ひとまずスーツケースの中身を空にしてみる。
スーツケースは邪魔だから、ベランダに出そう...
と、ここで気づく。
あれ?めぐのスーツケースがない...?
スーツケースを持って出るっていうことは、泊まりに行ってるのか?
誰かの家に行っているのだろうか。
よく見ると、洗面道具も全てなくなっている。今日帰ってこないことは確実なようだ。
状況がわかってきて、心がさっきより落ち着きを取り戻し始めた。
冷静になった頭で、部屋を見渡す。
このとき決定的なことに気づく。
淡路島の家の鍵がない。
これで全部つながった。どうやら淡路島に戻ったようだ。
そうと分かったら、やることは一つ。俺も淡路島に向かうしかない。
今後のスケジュールのこととか、飛行機の予約とかあるけど、そんなことはこの際どうでもいい。キャンセル料とか、余分にかかる旅費とか、そんなことは些末なことだ。
俺にはもっと大事なことがある。
空にしたばかりのスーツケースに再び荷物を詰め始める。
と、ここでめぐからのLINE。
「淡路に戻るね」
よかった、とりあえずは読み通りだ。けど、きっとこの感じはすごく怒ってる。
おれにできることは、とにかく今すぐ家を出て、早くめぐのいる淡路島の家に行くことだ。
その結果どうなるかは分からない。家にあげてくれないかもしれない。罵声を浴びせられるかもしれない。
それでもいい。とにかくめぐに会いに行こうと思った。
ギリギリ間に合う最短の新幹線を予約し、家を飛び出した。
ダッシュして16:36恵比寿発の電車に乗れば、ギリギリで16:55品川発の新幹線に乗れる。
恵比寿に向かってダッシュしていると、運良く支払い中のタクシーがつかまった。
恵比寿から電車に乗り、品川へ。なんとか16:55の新幹線に間に合った!
もはやここまでくると清々しい気分だ。
新幹線はまぁまぁの乗車率。
しばし、窓からの景色を眺める。
クレーン3兄弟。
神奈川の夜景スポットとして有名な湘南平(しょうなんだいら)。
新幹線に揺られながら、めぐに対する気持ちを手帳に書き出して、気持ちを整理していた。
とにかく「愛してる」と伝えたい。どう受け取られるかは分からない。けど伝えなきゃならない気がした。
あっという間に名古屋へ。この前来たばかりだから不思議な感覚。
名古屋を出てからも、自分の気持ちを内観していた。自分の中ではもう吹っ切れていたというか、あとはやるだけという気持ちだった。
京都を出たあたりで、めぐのブログが更新されたというメールの通知が届く。
タイトルは「顔も見たくない」
読みたいような、読みたくないような複雑な気持ちになったが、読まなければならない気がして開いた。
そこには、僕の知らなかったこの2日間の、めぐの中の怒りが書き綴ってあった。
正直これにはこたえた。
やっぱり無理かもしれない。
何も言わずにいきなり会いに行ったところで「そのくらいで許されると思うな」と言われるんじゃないだろうか。
さっきまでの吹っ切れた気持ちはどこかに行き、急に死にたい気分になった。
けど、ここであることに気づく。
めぐのブログをよく見ると、「今、名古屋を通り過ぎた」と書いてある。
おれもつい30分ほど前に名古屋を通り過ぎたばかりだ。
とっくに淡路島の家にいると思っていたのに、まだ新幹線に乗っている?
もしかして、同じ新幹線に乗ってるとか...?
いや、さすがにそんなことあるはずないか。
新神戸駅についてから、最短の高速バスに乗り換えるには5分しかなかった。とにかく急ごう。
新幹線がホームに着いて、ドアが開くなりエスカレーターに向かって駆け出す。
すると、
100メートルくらい先の方から、見覚えのあるミントグリーンのワンピースとキャップ姿の女性が歩いてくるのが一瞬見えた気がした。
人違いか?人影に隠れてよく見えない...と思ったら、見えた!
やっぱりめぐだ!
同じ新幹線に乗っていたなんて!
こんな奇跡ってあるだろうか。最短で乗り込んだ新幹線が、まさかめぐと同じだなんて。
心臓が異常なほどにドキドキしている。
なんて声をかけたらいいんだろう?なんて言われるかな?無視されるかもしれない。
けどもういい。とにかく夢中で追いかける。
沖縄でめぐに告白したあとで伝えた「何度フラれても、好きだって言い続けるから」という言葉。そのときの気持ちがふと蘇ってきた。
↓追いかけながら撮っためぐの背中
次のエスカレーターに乗る手前でめぐに追いついた。
なんて言えばいいかもわからないまま、いきなり真横から肩を抱いた。
あっけにとられた表情でこちらを見るめぐ。
「なんでいるの?」
と言われたと思う。やっぱり怒ってるのかな。迷惑だったかもしれない。
エスカレーターを無言で降り、降りたところの広場で、めぐを思いっきり抱きしめた。
とにかく気持ちを伝えなきゃいけなかった。
めぐのブログに書いていたことを思い出して、咄嗟に出た言葉。
「おれが間違ってたと思う」
「気づいてあげられなくてごめん」
(めぐも覚えててくれて、ブログに書いててくれたので思い出せた)
勝手に出てきた言葉だから、本心だったと思う。
ビンタされるかな、「勝手なこと言わないで」とか言われるのかな、
と思っていた。
けどめぐは泣いていた。気持ちが通じたのを感じた。
同じ新幹線の乗客たちが横を次々と通り過ぎていくのも気にせず、しばらく抱きしめてた。
心底安心した。
何を言われても、どんな態度を取られても受け入れるつもりだった。けど実際は、優しい世界が広がっていた。
一緒にバスに揺られて帰るのは久しぶりだ。家に着いたとき、なんだか付き合い始めた頃を思い出した。
こんなにホッとするものなのか。東京滞在が長引いて、疲れていたのもあったと思う。
やっぱり、めぐと淡路島こそが僕のホームであることを実感した。
今日うれしかったこと
めぐに追いついた瞬間
会えて本当に嬉しかった。