前回記事の続きです。

 

(今回記事は、下記記事のリブログです。)

または(別ウィンドウで開きます)↓

 

それでは、前回の続き、

いよいよ小切手の登場です。

 

5 小切手

小為替の代わりに小切手ではどうか

というコメントも前述記事にありました。

しかし、私は使えないと考えています。

大阪市のHPでは小切手不可と明記しています。

 

 

(1)当座預金開設は簡単ではない

小切手については一般の方は

詳しくないかと思います。

 

まず、小切手を振り出すには、

当座預金口座を有することが必要です。

というか、当座預金から支払いを受けるのに

小切手(または手形)を使うという仕組みです。

 

そして、普通預金払戻請求書と違い、

小切手・手形は他者に譲渡でき、

支払に使うことができるというわけです。

 

しかし普通預金でさえ、最近は開設に

手間取ることもあるようですが

(特に新規設立法人など)、

当座預金開設は審査があるのです。

うかつに不渡りなど出されては、

銀行の信用もなくなりますし……。

 

ただ、裏技(?)がありまして、

郵便局の小切手制度に必要な、

郵便振替貯金口座は、口座開設段階では

当座預金ほどの審査はありません。

口座を持っている人はさほど多くないので

仕組みや手続きになじみがないと

いうのはあるでしょうが。

 

ただ、振替口座を持っていても、

一般には、小切手は使わず、

払込票(顧客等に渡すことも多い)での、

代金等送金の受取口座として使います。

(比較的手数料が安い。

 以前はもっと安かったが

 

そして、口座開設と違い、

小切手払利用にはやはり審査があります。

おそらくそれまでの口座利用実績等は

問われると思います。

 

(2)小切手帳は有料

無事審査が通ったとしても、

次のハードルが!

 

昔は数百円程度でしたが、

今は結構高額で、1冊(50枚)

2,200~11,000円です

(金融機関により異なる)。

11,000円はみずほ銀行ですが、

これでは小為替の方が安い。

 

基本、紙ベースの小切手等は

使われなくなる方向で、

値上げはあっても値下げはないでしょう。

 

(3)受け取る側にも取立手数料が

 かかる場合がある

実は小切手・手形は手形交換所経由で

処理されますが、特に遠方ですと

取立手数料を取られます。

これも昔は高くなかったのですが、

しかしこちらでは、同一手形交換所でも

結構な手数料がぁぁぁ……。

(手形のみ有料の場合もあるのですが)

 

(4)不渡りの危険性&取立てに時間がかかる

小切手を普通預金に入金すると

わかりますが、その分を払戻できるのは

数日先です。

 

それは上記の手形交換所の処理の時間と

不渡りとならず振出人の当座預金等から

支払ができたことを確認するための日数です。

 

万一当座預金残高が足りないと

普通は至急対応を求める電話が来ますが、

不渡り扱いとなります。

ちなみに不渡り2回で事実上倒産

という扱いです。

 

ただし、不渡りを回避する方法があって、

それは銀行振出小切手という制度です。

「自己宛小切手」「預金小切手(預手)

・貯金小切手」と呼ぶこともあります。

 

これは、銀行自身が振出した小切手なので、

一般人・企業と違い信用力があります。

ただ、日数がかかるのは上記と同じで

それは、特に昨今は銀行だって

絶対倒産しないとは限らず

リスクがゼロではないということのようです。

 

それに、そもそも、銀行振出小切手の

手数料は小為替より高額なんですorz

 

(5)法律の規定は?

 ア 地方自治法関係

実は、地方自治法施行令156条1項1号

(後記オ記載)という規定がございます。

 

結論から申しますと、

不渡りのない銀行振出小切手で、かつ
「権利の行使のため定められた期間内に

支払のための提示又は支払の請求を

することができるもの」
でないと不可なのです。

 

不渡りについては上記(4)で

申しました。

 

それと、もう1つの問題は、

税金のように一方的に納めるだけ

でしたら、小切手の呈示期間は

10日なので、その間に銀行等に

持ち込み取立依頼できます。

 

しかし、戸籍等については、

手数料納付と、反対給付である

戸籍等の発行が「同時履行」的に

なされるわけです(商品購入等と同様)。


「期間内」とは戸籍請求時即時と

解釈されると思われますから、
郵便局窓口で即時に換金できる

小為替と違い、銀行振出小切手は

手形交換所への取立てに
数日を要するため、この点でも

要件を満たさないと考えます。

 

※ やや古いですがこちらの記事を

参考にさせていただきました。

ただし、脱線しますが、↑には

「住民票は各自治体によって

値段がまちまちです。京都市では一通350円。

私は、住民票で350円より高額の

手数料を取っている自治体を知りません」

とありますが、例えばこんな自治体も。

500円なので戸籍より高いではないか?!

 

まあ夕張市は財政的な問題でしょうが、

東京都北区は、本人等は300円なのに、

司法書士や債権者等の

他人からの請求は500円という、

地元住民から苦情が出にくい

上手いというかずるいやり方です。

 

(紹介ブログの記載時期時点で

どうだったのかは分かりません。

なお、少なくなりましたが、

住民票200円という自治体も

まだあります。)

 

また「納付金額を超えないものに限る」

の規定についてですが、

要は「お釣りの無いように」

ということなんですけど、

実務上は、「いくらになるか分からない」

(1人でも生存者がいれば戸籍で450円、

全員除籍(死亡・婚姻等)していると

除籍で750円)、

「何通になるか分からない」という

事情もあるので、ここは柔軟な扱い

(とせざるを得ない)です。

 

ただし、小為替で多めに送った場合、

他の方からの小為替を使って

お釣りがくることも多いですが、

小さい役場では切手となることもあります。

 

 イ 民法の規定は?

民法415条では「債務の本旨に従った履行」

を求めており、要はお金で払う、

と決まっているなら切手とかではだめですよ、

ということです。
 

そして、同402条では、

「金銭債権は通貨で弁済」とあります。
 

ただし、全てキャッシュというのも

現実的ではないので、

通貨と同視されるものとして、判例では、
銀行振込、郵便為替、銀行振出小切手は
原則有効としています。

(大判明治39年2月13日、
東京地判平成10年6月10日、

最判昭和48年12月11日等)、
 

しかし、一般の小切手は不渡りの

リスクがあるため原則無効です

(最判昭和35年11月22日等)。

 

したがって、受け取る側が

「小切手でも良いですよ」

と言ってくれれば良いのですが、

支払う側の権利として、

「現金でなく小切手で」と

いうことはできません。

(まあそうはいっても商業取引では、

一般的に小切手は通用すると思います。)

 

※ なお、これについてはこちらを

参考とさせていただきました。

 

 ウ (余談1)国税納付では

国税を納付する場合は、実は、

銀行振出でない一般の小切手でも可能です。

(登記の登録免許税でも同様……

あまり知られておりませんが。)

 

「証券ヲ以テスル歳入納付ニ関スル法律」

「歳入納付ニ使用スル証券ニ関スル件」

(これは勅令(今の政令扱))

というのがあって、そこに規定されています。

(これも、下記オで引用しましたが、

昔ながらの文語体カタカナ表記で

一般ノ方ニハ、トッテモ読ミニクイ。)

 

なお、不渡りとなった場合は

「初めから納付がなかった」扱いです。

 

 エ(余談2)退職手当の支払いは?

労働基準法施行規則というのがありまして、

退職手当(いわゆる退職金ですね)は、

一般の給料の支払方法(現金・振込等)

の他、銀行振出小切手や郵便為替での

支払を認めると規定されています。

(受取人の同意が必要です。)

 

これも、下記オに条文を示しました。

 

こうやってみますと、

現金等>銀行振出小切手>一般の小切手

とやはり分けて考えているようで、

法律の世界でも、場面場面に応じて、

どこまで許容するかを、

決めているように思います。

戸籍手数料の話からはかなり脱線しましたが。

 

 オ (専門家向け)参考条文

最後に、上記で紹介した法律条文を

最低限ながら引用したいと思います。

一般の方は、回りくどさを

楽しんでみてください

 

地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)

(証券をもつてする歳入の納付)
第百五十六条 地方自治法第二百三十一条の二第三項の

規定により普通地方公共団体の歳入の納付に

使用することができる証券は、次に掲げる証券で

納付金額を超えないものに限る。
一 持参人払式の小切手等(中略)で、手形交換所に

加入している金融機関(中略)を支払人とし、

支払地が当該普通地方公共団体の長が定める区域内であつて、

その権利の行使のため定められた期間内に

支払のための提示又は支払の請求をすることができるもの

(以下略)

 

地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)

(証紙による収入の方法等)
第二百三十一条の二
3 証紙による収入の方法によるものを除くほか、

普通地方公共団体の歳入は、第二百三十五条の

規定により金融機関が指定されている場合においては、

政令の定めるところにより、口座振替の方法により、

又は証券をもつて納付することができる。
4 前項の規定により納付された証券を

支払の提示期間内又は有効期間内に提示し、

支払の請求をした場合において、

支払の拒絶があつたときは、当該歳入は、

はじめから納付がなかつたものとみなす。

この場合における当該証券の処分に関し

必要な事項は、政令で定める。

 

民法(明治二十九年法律第八十九号)

(金銭債権)
第四百二条 債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、

その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。

ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的と

したときは、この限りでない。

(以下略)

 

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った

履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、

債権者は、これによって生じた損害の賠償を

請求することができる。(以下略)

 

国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)

(納付の手続)
第三十四条 国税を納付しようとする者は、

その税額に相当する金銭に納付書

(納税告知書の送達を受けた場合には、納税告知書)

を添えて、これを日本銀行(国税の収納を行う代理店を

含む。)又はその国税の収納を行う税務署の職員に

納付しなければならない。

ただし、証券をもつてする歳入納付に関する法律

(大正五年法律第十号)の定めるところにより

証券で納付すること(中略)を妨げない。

 

大正五年法律第十号

(証券ヲ以テスル歳入納付ニ関スル法律)

第一条 租税及政府ノ歳入ハ政令ノ定ムル所ニ依リ

証券ヲ以テ之ヲ納付スルコトヲ得

但シ印紙ヲ以テ納付スヘキモノニ付テハ

此ノ限ニ在ラス
 

第二条 前条ノ規定ニ依リ納付シタル証券ニ付

支払ナカリシトキハ政令ヲ以テ定メタル場合ニ限リ

初ヨリ納付ナカリシモノト看做ス

此ノ場合ニ於ケル証券ノ処分ニ付テハ

政令ヲ以テ之ヲ定ム

 

大正五年勅令第二百五十六号

(歳入納付ニ使用スル証券ニ関スル件)

第一条 大正五年法律第十号ニ依リ

租税及歳入ノ納付ニ使用スルコトヲ得ル証券ハ

次ニ掲クルモノニシテ其ノ金額ノ

納付金額ヲ超過セサルモノニ限ル

但シ第二号ノ場合ニ於テ利子支払ノ際課税セラルル

租税ノ額ニ相当スル金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
一 小切手ニシテ持参人払式又ハ記名式持参人払ノモノ

(中略)

② 前項ノ証券ニシテ提示期間ノ満了ニ近ツキタルモノ

又ハ支払不確実ナリト認ムルモノハ出納官吏、日本銀行

又ハ市町村其ノ受領ヲ拒絶スルコトヲ得
③ 証券ノ支払場所カ受領者ノ所在地ニ

在ラサルモノニ付亦前項ニ同シ

但シ支払場所カ受領者ノ払込又ハ送付ヲ為ス

日本銀行ノ本店、支店又ハ代理店ノ所在地ニ

在ルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二条 証券ヲ提示期間内ニ提示シ支払ヲ

請求シタル場合ニ於テ支払ノ拒絶アリタルトキハ

租税又ハ歳入ハ初ヨリ納付ナカリシモノト看做ス

 

労働基準法施行規則

(昭和二十二年厚生省令第二十三号)

第七条の二

② 使用者は、労働者の同意を得た場合には、

退職手当の支払について前項に規定する方法に

よるほか、次の方法によることができる。
一 銀行その他の金融機関によつて振り出された

当該銀行その他の金融機関を支払人とする小切手を

当該労働者に交付すること。
二 銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手を

当該労働者に交付すること。
三 郵政民営化法(平成十七年法律第九十七号)

第九十四条に規定する郵便貯金銀行がその行う

為替取引に関し負担する債務に係る権利を表章する

証書を当該労働者に交付すること。

 

 


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