【追記2/16】

次の追加記事をアップしました。

”オペラに見る相続争い

~ジャンニ・スキッキ~その3番外編”

https://ameblo.jp/shimpo-shiho/entry-12575508833.html

 

 

(初出2/12)

オペラネタ「ジャンニ・スキッキ」

の続きです。

 

その1はこちら。

https://ameblo.jp/shimpo-shiho/entry-12574324496.html

 

前回は、

⇒はい、ここから先は悪事です。。。

まででした。。。。。。

 

いまこの部屋にいる面々以外に

ブオーゾの死を知る者が

いないことを確認してから、

遺体はベッドからどかして

別室へ運ばせる。

 

ブオーゾ被相続人

(死亡者・遺言者)ですよ。

 

そこへ間の悪いことに

医者が往診に来、

スキッキはブオーゾの声色で

「もうすっかり回復したから」

と言って追い帰す。

 

⇒中々芸達者ですね。

 

声色一つで医者をうまく騙せたことで

スキッキは調子に乗り、

公証人を呼んできて、

ブオーゾに化けた自分が

遺言を口述するんだ」

とその計画を披露する。

これ、決して真似しないで下さい!

ブオーゾの財産は現金と、

各所に保有する不動産物件である。

中でも製粉所と付属するラバ

そしてこのフィレンツェの自宅

価値ある物件と誰もが知っている。

 

⇒不動産は分かりますが、

ラバが高額資産なんですね。

当時は……。

(注:ご指摘を頂き、

ロバ→ラバに訂正しました。)

 

公証人が来るまでの間、

親戚たちはスキッキ

変装を手伝いながら、

めいめいが彼の耳元で

「自分に製粉所ラバ

それとこの邸宅を分与するように

言って下さい」と頼み込む。

 

⇒日本でも、子供が親に

遺言を書かそうという場合、

同じようなことが起きている

かもしれません。

 

スキッキは親戚一同に

法律により、遺言状の改竄者と

その共謀者は片手を切断された後

フィレンツェ追放となる。

だから『さらばフィレンツェ、

手のない腕でご挨拶

となりたくないならこの事は

一切他言無用、いいな」

と厳かに警告し、

一同も秘密厳守を約束する。

⇒今の日本の法律では、もちろん、

「切断」も「追放」もありません。

しかし、これからニセの

公正証書遺言を作るわけで、

これは、公正証書原本不実記載罪

ということで、5年以下の懲役

又は50万円以下の罰金

処せられます(刑法157条1項等)。

 

また、前の遺言「修道院へ遺贈」

を破棄しており、

これは、民法891条5号によると、

「相続に関する被相続人の遺言書を

偽造し、変造し、破棄し、

又は隠匿した者は

相続人となることができない」
とあり、相続欠格者として、

相続することができません

(本件での相続人は、

ゲラルトだけですが。)

 

そして、私用文書等毀棄罪(刑法第259条)

ということで、5年以下の懲役ともなります。

公証人証人2人を引き連れてやって来る。

 

⇒日本の公正証書遺言でも、

2名の証人が必要です。

証人は、相続人や受遺者

(遺贈を受ける人)は、

公正を損ねるおそれが

あるのでなれません。

 

ブオーゾに扮したスキッキはベッドの中から

「新たな遺言を作成したいのだが、

手が麻痺して書けないので

口授の筆記をお願いしたい」と言い、

公証人も納得する。

 

⇒日本の公正証書遺言では、
字が書けるかどうかにかかわらず

「口授」(こうじゅ/くじゅ)による

ことになっています。

(実務では、事前に文案を

考えて、用意しておくことが

ほとんどです。)

 

まずは「以前の遺言は全て撤回する」

 

⇒これは、現在の遺言作成の

実務でも、紛争防止のため、

よく使われます。

スキッキは、よく法律実務を

知っているようです。

 

続いて「葬式は金をかけず簡素に」、

「修道院にはごく小額を寄贈」、

「現金は親戚一同に均等に分与」、

さらに「各地に点在する小規模な不動産物件は

それぞれ親戚の誰々と誰々へ」と、

ここまでは親戚一同の希望通りに遺言を述べ、

皆はスキッキの手際の良さに感心する。

 

⇒修道院への件は、

「たくさん寄付すると盗んだ金

だったと言われるから」

上手な理由付けをしています。

なお、不動産物件は

登記簿の記載のとおり

書きましょう。

そうでないと、登記できないかも。

いよいよ高額物件の分与。

スキッキは分与先を宣言する。

ラバは ― 親友ジャンニ・スキッキへ与える」、

「私が今いるこのフィレンツェの家

 ― ジャンニ・スキッキへ」。

 

⇒やってしまいました!

 

親戚一同騒然となるが、

スキッキはベッドの中から

「さらばフィレンツェ」と歌いだして

先ほどの警告を思い出させ、

皆を沈黙させる。

 

⇒法律論を離れれば、

とっても上手いやり方です。

 

最後に「製粉所は ― ジャンニ・スキッキへ」。

こうして遺言状が完成すると、

スキッキ証人と公証人

礼金を与え帰らせる。

公証人の費用は規定があります

財産額や、財産を渡す相続人等の数、

場合により出張等の加算などもありますが、

私が扱った案件では10万円前後でしょうか?

証人費用は、特に規定はありませんが、

知人に頼めず、司法書士や公証人に

手配をお願いする場合、

1名当たり、5千~1万円くらい
でしょうか。

公証人らが去った後、

親戚一同はスキッキのことを

「泥棒、裏切者」と口々に罵るが、

 

⇒気持ちは分かりますが、

ここのシーンもひどいです。

 

スキッキは「ここは俺の家だ、

みんな出て行け」と

全員を追い出してしまう。

所有権に基づく物権的請求権

などとも専門的には申します。

ただ、本当は、スキッキ

所有権者ではありません。

(法律的にはやはり、

本物の遺言が有効で、

修道院が所有者ですね。
しかし、みんな共犯なので、

そうは言えないわけです。

独り残ったスキッキ

ベランダに通じるドアを開けると

そこにはラウレッタリヌッチョの2人。

彼らは遺産騒動そっちのけで、

眼下に広がるフィレンツェの景色を愛で、

互いの愛を確認していたのだった。

 

スキッキは若い2人を

祝福するように微笑み、

観客に向かって

「紳士、淑女の皆様。

ブオーゾの遺産に

これより良い使い途があるでしょうか。

この悪戯のおかげで

私は地獄行きになりました。

当然の報いです。

でも皆さん、もし今晩を楽しく

お過ごし頂けたのなら、

あの偉大なダンテ先生の

お許しを頂いた上で

私に情状酌量というわけには

いかないでしょうか。」

と後口上を(台詞で)述べ、陽気に幕となる。

 

⇒このセリフは、ダンテの『神曲』

によるもので、法律の制裁は免れましたが、

やはりというか、地獄行きに

なってしまったそうです。

 

まあ、最後は、純愛シーンで

きれいに終わりました。。。かな?

 

なお、全曲で50分程度です。

ご興味があればどうぞ↓。

 

 

最後までお読み頂いた皆様、

お疲れさまでした。

 

【2/16改訂】

(2/15追記)として、

地獄の底のジャンニ・スキッキ

https://itaken1.jimdo.com/2010/07/27/%E5%9C%B0%E7%8D%84%E3%81%AE%E5%BA%95%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8B-%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%83%E3%82%AD/

の情報を、一度こちらに追記しましたが、

量も多いので、冒頭紹介した

”オペラに見る相続争い~ジャンニ・スキッキ~その3番外編”

に、さらに補筆の上、移しました。

 

 

 


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