監護者父・母との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介③ | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

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石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

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このシリーズ
1 面会交流について悩んでいるお母さんたちへ
2 『離婚した親と子どもの声を聴くー養育環境の変化と子どもの成長に関する調査研究』から
3 監護者母の場合の父との面会交流,子の評価①~人数,割合の紹介 
4 監護者母・父との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介① 
5 監護者母・父との面会交流なしの場合の子の意見~子の声の紹介②
6 監護者母・父との面会交流あり・なしの子の意見について~私が感じたこと
7 監護者父の場合の母との面会交流,子の評価②~人数,割合の紹介

 前回期日では,監護者父の場合の母との面会交流について,面会交流あり,なしそれぞれの人数と割合,肯定的評価,否定的評価の人数と割合を紹介しました。
 この記事では,具体的な子の声等を紹介していきます。

2 監護者父,母との面会交流ありのケース8人

 肯定的評価  7人
 「分からない」 1人 

 『離婚した親と子どもの声を聴くー養育環境の変化と子どもの成長に関する調査研究』 では,冒頭に,以下のように解説した上で,個々の声を紹介していきます。

 離婚時に子どもの年齢が低い場合,父が監護者となり,母との面会交流を円滑に続けていくには,子どもの心情を十分に理解して,安定できるように支えてやる,親の心構えが必要である。「やってよかった」と評価している7人のうち6人は現在も何らかの形で母との交流は続いているが,親の離婚についてはそれぞれの心情が表現されており,考えさせられる。

3 肯定的評価7人のうち2人について,かなり詳細に子の声を紹介しています。

①男性,離婚時10歳,現在中学生

 母と食事をする機会を随時もっている。
 面会交流については「母に会えるからよかった」と受け止めている。
 父母の離婚については,父から話があったが,考えや意見は聞かれず,自分からも言えなかった。
 「離婚後,母親にしてほしかったことは」の問いに,「甘えたかった」と回答
 「これから親が離婚しようとしている子どもにアドバイスするとすれば,どのようなことがありますか」の問いに,「一度でもいいから自分の考えを伝えてみる」,「離婚すると大抵どちらかの親(又は両親)を恨むことがある。そのとき,どうしようもない感情がわいてくる。それをどのように解決するかが今後の問題のように思われる」

 以上の回答を踏まえ,FPIC解説では,「4年間母との面会交流を続けながら,冷静に自分の気持ちを整理し,感情と客観的に向き合えるように成長しているのではないかと考えられる。」とまとめられています。

② 女性,離婚時10歳,現在20代

 離婚原因が母の異性問題という「理由が理由だけに,母についていくのが難しかった」が,「母と別れるのは苦痛だった」。
 父は面会交流を認め,交流は現在も続いており,「やってよかった。母を理解する機会を与えられた。会うことは重要」,「父の理解に感謝している」。

 以上の回答を踏まえ,FPIC解説では,「離婚時の年齢が10歳なので,離婚原因が母の異性問題では父の理解がなくては面会交流を円滑に続けることは難しいが,理解してくれた父に感謝しつつ,それでもなお親の離婚については,『正直な気持ちは,全部なにもかも話したい』と,つらかった気持ちを話せる人がいたらという思いは今に至っても持ち続けている。」とまとめられています。

4 面会交流ありの8人のうち「分からない」と回答した1人

 男性,離婚時5歳,現在30代

 FPIC解説は,以下のように紹介しています。

 離婚原因になった女性と父が再婚し,中学に入学してから,祖母の強い勧めで母と数回宿泊を伴う面会交流をした。23歳のとき父が再び離婚したことで,「誰のために耐えてきたのか分からなくなった」という思いを伝えてきている。面会交流について問われても,「分からない」としか答えようがない経験をしている。

5 まとめ

 以上のように,監護者父で母との面会交流ありの8人中,面会交流について肯定的評価7人のうちの2人,「分からない」として1人の声を紹介しました。

 肯定的評価で紹介されている子はいずれも離婚時10歳,「分からない」の男性は離婚時5歳です。

 「分からない」と答えた男性30歳男性(離婚時5歳)は,FPICの解説からしますと,「父の不貞を原因とする離婚→それにも関わらず親権者を父と定めた→父がその不貞相手と再婚・その不貞相手と同居→その中での母との面会交流→父が再び離婚」という経過を辿ったようで,そのような一連の経過の中でご自身のこれまでの人生について,「誰のために耐えてきたのか分からなくなった」という懐疑を持ち,その中で,面会交流自体も,自分にとって意味のあるものだったのかどうか分からないという状態になっているようです。
 この男性は,父母の不和とその後の離婚による傷つき・喪失体験があり,その後,父が不貞相手と再婚したことから,その義母との関係を構築していくことが大きな課題となり,おそらく幼い中でその課題を「父のため」と考えて引き受けて「良き子」であろうとし続けたがが,その努力も父と義母との離婚によって大きな意味喪失にさらされ,「生きる意味」への懐疑へとつながっているように私には思われました。
 私は,そのような中にあっても,ご自身の人生の意味はあるのだと思っていただけたらと願います。

 また肯定的評価の②の女性のケース(母の異性問題が離婚原因)は,とても大切なメッセージを含んでいるように思います。
 私は職業的に,妻に不貞をされた男性の相談・依頼もありまして,そのようなケースでの男性の屈辱感・恥辱感がいかばかりか想像します(夫に不貞をされた妻も,別の意味合いで深刻な心の傷を負います。)。
 そういうケースの中で,父が母との面会交流を認めたこと,そこに至る父の葛藤は大変なものだったでしょう。
 そのような父の姿を,子もしっかりと感じとっているということです。
 面会交流は,この女性にとっては,分かれた母を理解する機会であると同時に,一緒に暮らす父が悩みつつも選んだ態度を子として体験し,「父の理解に感謝している」としています。
 この面会交流は,母を知る機会であるとともに父を知る機会でもあるのです。

 面会交流は,父と子の関係性,母と子の関係性,父と母の関係性という3者の中で,それぞれの振る舞いが影響しあいます。
 そして,それを子は体験するわけです。
 ですから,私は,監護親に対しては,面会交流を認めるという態度であれ,または,それを認めないという態度であれ,その状況の中でのその監護親の態度を子は体験するということを意識して,子に対して誇りうる態度を選んでほしいと思います(誤解のないように言いますが,私は,別居親が面会交流をDVの道具として利用するような場合など,実際の具体的状況によっては,面会交流を監護親として拒絶することが,監護親の『誇りうる態度』として選択される場合もあると思っています。)。

 同様に,別居親に対しては,面会交流を求める,求めない,求めるとしてどのような内容でそれを求め,その面会交流をどのように実施するかの態度決定を子は体験するということを意識して,子に対して誇りうる態度を選んでほしいと思います。

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