このシリーズの前々回離婚の訴訟をやって諸事情で和解金100万円で終了したら？～償還免除の基準②法テラス弁護士費用で，相手から現実に入ったお金が比較的低額であった場合の償還免除について詳しく紹介しました。
そして，償還免除の基準詳細解説！～法テラス弁護士費用・5/1追記有りで，償還免除の基準について，詳しくお話しました。
今回は，相手から全くお金が入らないケースを取り上げます。
２．
例えば，ＤＶのケースで，とにかく早く離婚したい，慰謝料もいらない，婚姻費用も養育費もいらないという方が一定数おいでです。
婚姻費用とか養育費とかは，それを受け取ることで，相手に面会交流の口実を与えるのが嫌であるとか，お金の問題は大きいけれど，アイツになんかもらいたくないとか，いろいろな感じ方があります。
法律的には，養育費と面会交流は全く別ですが，ご本人がそのようにお感じになっている場合，必要な情報はきちんと提供した上で，最終的にはご本人の選択を尊重します。
また，最初から，相手からお金の入らないタイプの事件があります。たとえば，離婚後の親権変更とか離婚後の面会交流とかです。子が関わるだけに，当事者にとってとても大事な問題です。経済的に力のあるＤＶ夫が離婚後に子を道具としたＤＶとして，親権変更とか面会交流とかでまつわりついてくることは，残念ながら，現実に存在します。
こういうケースでは，経済的に余裕のない離婚後の元妻・母の方々には，法テラスを上手に利用していただけたらと思います。
３ 具体的ケース
石川県在住の母は，離婚後，10歳と7歳の子の親権者として養育中。アパート代は月6万円。母の手取り収入は月12万円。年収は税引き前で170万円（適当です）。相手方からの養育費は子二人合計で4万円。児童扶養手当は所得額による支給制限後で，月35,980円（適当）。児童手当が月額30,000円。預貯金は20万円。子どもの学資保険があり，解約した場合の返戻金見込み額は合計20万円。
離婚の際，面会交流について，月２回程度，子の福祉尊重，具体的内容は母と父の協議によると一般的に定めていた。しかし，その後，父が，頻回長時間の面会交流を要求し，電話で話をするとモラハラ攻撃。父は，面会交流は実父の権利だ，離婚の際の約束だと言って，母を攻撃し続けた。母は，その電話でのモラハラ攻撃に耐えきれず，面会交流の枠組み設定のため，弁護士に相談。子は父との面会交流を望んでいる。
調停では合意に至らず，調停不成立後の審判で，審判官が，極めて詳細な面会交流の方法を取り決めて，父母が電話で協議する余地がほとんどないようにするとともに，母側の適切な第３者が子の受け渡しに同行すること等を取り決めた。
４ 法テラス申込みと実費，着手金等
実費，着手金の基準は法テラスの実費・着手金の一覧表～法テラス弁護士費用参照。
①面会交流の調停事件
実費20,000円
着手金84,000円（基準84,000円～126,000円）
合計104,000円
②調停不成立後の審判移行時の追加決定
実費10,000円
追加着手金42,000円（42,000円を上限として法テラスが決める額）
合計52,000円
立替金合計156,000円
５ 事件進行中の償還猶予決定の検討
償還猶予の基準は，生活保護受給中じゃなくても償還猶予ＯＫ～法テラス償還猶予基準参照。
(1) 準生活保護受給者要件
① 収入要件
石川県，３人家族，家賃6万円
272,000円＋60,000円＝332,000円
償還猶予の収入基準＝332,000円×70％＝232,400円
申込者の収入
手取り12万円
養育費4万円
児童扶養手当35,980円
児童手当30,000円
以上合計225,980円
よって，償還猶予の収入基準ＯＫ
② 保有資産要件
預貯金20万円
学資保険解約返戻金見込み額20万円
以上合計40万円
差押禁止財産中の動産で，現金66万円の目安があるので，保有資産要件文句なしＯＫ
(2) 償還猶予相当の要件 まず相当。特に検討いらない。
(3) まとめ
よって事件進行中の償還猶予ＯＫ
６ 審判確定による事件終結，報酬決定，立替金残額確定
(1) 面接交渉の調停，審判事件の報酬金決定
報酬額の基準は，法テラスの報酬金（成功報酬）の計算方法～法テラス弁護士費用
相手からお金が入ってこない場合の標準報酬額84,000円
(2) 立替金残金の決定
①着手金・実費立替金残額 156,000円
②成功報酬立替金 84,000円
立替金残額 240,000円
７ 償還免除申請
償還免除の基準は，償還免除の基準詳細解説！～法テラス弁護士費用・5/1追記有り
(1) 準生活保護受給者要件
前記５ー(1)の償還猶予で検討したとおりＯＫ
(2) 資力回復困難要件
15歳以下の子を２人養育中のひとり親家庭。
法テラスは，血も涙もあるので，資力回復困難要件が認められるでしょう。
(3) まとめ
償還免除申請をして，法テラスが免除を決定すれば，全額償還免除。
このケースでは，子ども２人，家賃5万円で，収入は月手取り12万円，養育費4万円，児童扶養手当35,980円，児童手当30,000円で合計225,980円で償還免除が認められました。
８ 結論
このケースでは，ご本人が全く経済的負担なく，面会交流の調停・審判の事件について弁護士利用できました。
このケースは，実際に私が取り扱ったケースをアレンジしたものです。
このように，相手からお金が入ってくることがない事件については，是非とも，償還猶予や償還免除に最初から拘って，弁護士費用の負担をせずにすむかを考えて下さい。
そして，弁護士費用の負担をせずに済んだ分は，子どもの養育のため，存分にお使い下さい。
それが，この社会を多少とも良い社会にするためです。
弁護士費用の負担なく，面会交流の調停，審判を乗り切ったことを恥ずかしいと思う必要は全くありません。
あなたは，この社会の次世代を健全に育成するという大きな責務を，この社会のために日々，苦労してやっているのです。
このことについては，以下の記事をご覧下さい。
法テラスで無料・格安弁護士費用!（品がないタイトルかしら）～法テラス活用術・１（女性の方へ）
法テラス利用はあなたの権利，そしてこの社会を良くすることです1～法テラス活用術・2（女性の方へ）
法テラス利用はあなたの権利，そしてこの社会を良くすることです2～法テラス活用術・3（女性の方へ）
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