平成23年4月の償還免除の要件変更と私の苦くて悔しくて申し訳ない案件~法テラス弁護士費用 | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

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石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。


(1)
 償還免除に関し,非常に苦々しく思い,私の依頼者に対して法テラスのかわりに深く深くお詫びしなければならなかったケースがあります。

 依頼者に対し,申し込みの際に,まず償還免除になるだろうと説明してきケース。
 しかし,事件進行中,平成23年4月に新たに保有資産要件と免除要領が追加されました。
 そのために,後になって,免除申請が否定されました。
 私のこれまでの経験上,たった1件の免除申請拒絶事例です。

(2)
 その新たな要件追加がなければ,文句なしに償還免除が認められたケースでした。
 最初から相手からお金が入ってこない事件でした。
 そういう事件で法テラスを利用するかどうかを決める際,最終的に償還免除になるかどうかはとても重要です。
 申し込み時の要件では,償還免除確実でした。それが新たに追加された要件で,後になって償還免除が否定されしまう。
 後出しじゃんけんもはなはだしいと思いました。

(3)
 その方は,苦しい生活の中で,中学生の子の学費のためにこつこつと貯金をしていました。
 それが新たに付け加えられた保有資産要件にひっかかってしまったのです。
 私は,ご本人の苦しい生活状況等を詳細に主張し,証拠もつけ,新たな基準の当てはめも行い,後出しじゃんけんの問題点も指摘し,償還免除が認められるべきだという長い意見書を作成して提出しました。
 しかし,だめでした。

(4)
 昔,生活保護行政において,将来の看護費用な非常時支出のため活保護受給金を苦しい生活の中でこつこつと貯めていたところ,その預貯金が資産とみなされて生活保護支給額を減額したというケースがありました。
 多くの弁護士は,生活保護行政のその非道ぶりに怒りました。
生活保護費預貯金訴訟
 
 その生活保護行政のケースと私が経験したケースと。
 後だしじゃんけんがある分,法テラスのケースの方が非道いと思いました。

 後だしじゃんけんで,子どものためにコツコツ貯めた学費を差し出せという法テラス。

 かつての(財)法律扶助協会であれば,まず,こういうことにはならなかったのではないかと思います。


(1)
 実は,法テラスがまだ弁護士集団が運営する(財)法律扶助協会であったころ,償還免除は積極的に活用すべきとされていて,平成16年11月19日付で(財)法律扶助協会専務理事が各支部支部長宛に出した通知「立替金償還免除運用指針について(通知)」では,以下のような指針がありました。

 下記の者が事件の結果経済的利益を得られなかったときは,立替金償還の免除を決定する(多重債務事件を除く)。
① 生活保護受給者

② 生活保護受給者に準ずる程度に生計が困難であり,かつ,下記のアからキの要件のうちの何れかの事由のある者

ア 65歳以上の高齢者
イ 重度または中度の障害のある者
ウ 疾病により長期の療養を要する者
エ 重度または中度の障害のある者を扶養している者
オ 疾病により長期の療養を要する者を扶養している者
カ 15歳以上の子を養育中のひとり親家庭(別居中含む。)。
キ DVや虐待の被害者である被援助者

 この旧(財)法律扶助協会のカ,キの基準は画期的でした。
 しかし,法テラスが発足した後,このカ,キの基準は消えてしまいました。

(2)
 日弁連は平成23年1月7日,会長名で全会員向けに準生活保護要件該当者に関する償還猶予および償還免除の積極活用をよびかける通知を発しました。
 その通知の中では,日弁連は,資力回復困難要件の取扱いとしては,以下の者については,適時かつ積極的に免除の申請がなされるべきとの結論に達したとしてます。
① 65歳以上の高齢者
② 障害基礎(厚生)年金等の受給者もしくは各種障害者手帳の交付を受けた者,あるいはこれらに該当するものを扶養する者
③15歳以下の子どもを1人以上扶養する一人親世帯(別居中含む。)
④疾病により長期の療養を要するため,現に収入を得ておらず,かつ今後1年程度の間に労務に服することが見込めないもの
⑤上記に準ずる事由により,今後1~2年で現在よりも生計が改善される見込みの乏しいもの

 この日弁連会長が全会員に宛てた通知では,「15歳以下の子どもを1人以上扶養する一人親世帯(別居中含む。) 」の被援助者も 適時かつ積極的に免除の申請がなされるべきと明言されていました。

(3)
 しかし,法テラスは,平成23年4月1日から施行されることとなった民事法律扶助業務運営細則(細則)の改正において,以下の対応を取りました。


 「保有資産要件」を新たに盛り込んで償還猶予,償還免除の要件を厳しくしました。

 「準生活保護要件該当者についての免除要領」を制定し,収入要件に関する資料,資産の有無に関する資料を,償還免除申請者には,かなり細かく提出させることとしました。

 このように要件の厳格化を行う一方で,償還免除の要件の一つである資力回復困難要件のなかの「⑤ 全各号に準ずる事由により,今後1ないし2年で,現在よりも生計が改善される見込みに乏しい者」に該当する場合として,以下のような玉虫色の官僚答弁で終わっていること。

例えば15歳以下の子をひとり親家庭で養育している場合などが考えられますが,

今後,事例の蓄積を踏まえ,同号該当性判断の参考となる事例集を作成することなどを検討しています。

 日弁連会長が全会員に発した平成23年1月7日の内容が見事にお茶を濁して終わらされています。


 この記事では,私は,法テラスを思いっきり批判しています。
 それは,私は,法テラスに頑張ってほしいからです。
 このブログで,恥ずかしながら,しもちゃん作「がんばれ法テラス!の歌」まで作っちゃいました(笑)

 この記事です。法テラスでもあなたが弁護士を選ぶ~法テラス申込方法

 私,法テラスには,本当に,このどーしょーもない日本の中で次世代を育んでいる女性たちの味方であってほしいです。

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