生活保護受給中じゃなくても償還猶予OK~法テラス償還猶予基準 | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

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石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

1.
 このシリーズの前記事法テラスだと当面は弁護士費用を払わなくていい?~償還猶予の制度で,法テラスのHPの記載は正確ではなく,実際は,生活保護受給中ではなくても償還猶予を受けられることを強調しました。
 そこで,本記事では,

償還猶予が認められる基準

を具体的にお話します。なお,生活保護受給中は,当然に償還が認められるものとして,説明を省きます。

2 償還猶予が認められる要件

① 生活保護受給中に準ずる程度に生計が困難であること
(次の2要件で判断する。)


ⅰ 法テラスの算出方法で計算される収入が収入基準の70%以下であること

ⅱ 保有不動産,預貯金,その他の資産について,当該資産を償還に充てることができない合理的事情があること
(「平成23年新細則要件」。従前はこの要件はなかった)

② 事件進行中の償還を猶予するのが相当であること

3 収入基準の70%以下要件について

 法テラスの基準であなたの収入とあなたに適用される収入基準がどのように設定されるかについては,このシリーズの前記事私,法テラス利用できる?~資力基準の詳しい解説を,是非,熟読して下さい。

 具体例で説明しましょう。生活保護の一級地ではない石川県在住で,夫と別居してアパート暮らし,小学生と保育園児の子ども2人同居アパート賃料は月50,000円手取り収入(賞与含む)は月21万円,親からの援助などなし,夫は生活費入れてくれないという場合。子ども手当は夫が全額取得中。子どもの教育費とかもあるし,うつ病で心療内科継続受診中・・・・

 償還猶予についての収入基準の設定
   3人家族   一般地域 272,000円
   賃料加算額 50,000円(3人家族限度額は一般地域で66,000円)

   収入基準額(272,000円+66,00円)×償還猶予基準・70%=224,000円

 本人の手取り収入は21万円で,上記事例では,さらに加算されるものはない。
 したがって,償還猶予の範囲内教育費だとか医療費だとかこまごま考えるまでもなく償還猶予の収入基準を充たす。

4 
保有不動産,預貯金,その他の資産について,当該資産を償還に充てることができない合理的事情があるときについて


 この合理的事情の有無は,以下の要素を考慮するとされています。

住宅,農地又は動産であって,生活のために必要であり,かつ,これを保有することが,その資産価値等にてらし,被援助者の年齢,職業,住所地及び家族状況からして相当と認められること

②不動産その他の資産であって,換価困難であること

③現金,預貯金その他の金融資産であって,将来負担すべき医療費,教育費又は職業上やむを得ない出費等(冠婚葬祭費含む。)のために備蓄しておくことが必要であり,かつ被援助者の年齢,収入,職業及び家族状況からして相当と認められること

④民事執行法第131条各号に掲げる差押禁止財産であること
  民事執行法はこちら 
  重要なのは3号「標準的な世帯の二月間の必要生活費を勘案して政令で定める額の金銭」です。政令では,これを66万円としています。また,法テラスの償還猶予の関係では,現金だけでなく預貯金その他の金融資産めて66万円以下かどうかを見ることになります。

 離婚で思い悩む女性を考えた場合,資産の条件で償還猶予にならないという人はあまりいないように思われます。

 住宅用不動産の場合は,基本的に①に該当します。

 また預貯金については,④の要素により,66万円以下であれば全く問題になりませんし,さらに③の要素を考慮すると,さらに金額が上がると思います。

 私の感覚では,預貯金が99万円以下であれば償還猶予の場面では,猶予が認められていいように思います。なぜなら,破産する場合でも,手元に99万円の現金,預貯金を残しておくことが法律上認められているからです。
 ただ,この点は私がそう思うというだけです。いずれ法テラス石川に,預貯金がどのくらいあったら償還猶予がだめか聞いてみようと思います。まぁ,その人の収入とのかねあいで総合判断になるでしょうと言われるような気がしますが,目安的なものくらいはあるのではないかと・・・

 この資産の条件は,平成23年になって付け加えられたもので,従前は前記3の収入基準70%の条件だけで判断されていました。法テラスが条件を厳しくしたんですね…。
 法テラスも財政状態が厳しいんでしょうか・・・・・・

5  
 平成23年1月7日に日弁連会長宇都宮健司(当時)が弁護士全員に出した「民事法律扶助拡充に向けた取組ー準生活保護要件該当者に関する償還猶予および免除について」という通知があります(この通知は,法テラスが前記4の要件を付け加える前に出されたものでした。)。この通知には,以下に該当する方々は,償還猶予の相当性(前記2の②の要件)が認められる可能性が高いので,償還猶予の制度を利用するよう助言して下さいということがはっきり記載されています。

① 65歳以上の高齢者
② 障害基礎(厚生)年金等の受給者もしくは各種障害者手帳の交付を受けた者
③ 上記②に該当する者を扶養する者
④ 14歳以下の子供を1人以上扶養する1人親世帯(離婚前別居含む。)



 こういう次第で,私がこれまで取り扱った法テラスの離婚に関連する事件のほとんどでは,償還猶予が認められてきました。
 そして,それは,私がどうこうではなくて,制度がそうなっているからです。
 金沢弁護士会の素敵な素敵なH先生,N先生,新潟に移られたM先生,U先生,N先生みなさんそうされてきたと思います・・・気になるぅ?

 次の記事では,具体的に,償還猶予が認められるためにどうしたらよいかを紹介しましょう。

 つづく・・・・

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