ここでは,あなたが法テラスを利用できるか,法テラスの資力基準について詳しくお話します。
この資力基準は,利用できるかどうかの要件であるとともに,後の記事で紹介する償還猶予の制度や償還免除の制度とも連動します(償還猶予・免除では収入基準等の70%の金額を基準にする。)。したがって,とても重要な基準です。
なお,ここでお話するものは,弁護士に正式に事件を依頼する場合のものです。
無料法律相談の場合は,申込者の収入に組み入れるものがこれよりも少なくなり,ずっと利用し易い内容になっています。
また,この記事は,離婚等の事件で,夫(配偶者)が相手方になる場合を念頭に置いています。そこで一般の基準の説明ではなく,夫(配偶者)を相手方とする場合に絞っています。
夫と同居しつつ不貞の相手方に慰謝料請求するような場合は,収入や家族の人数のカウントに夫(配偶者)の関係をカウントしていくことになります。
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法テラスの弁護士・司法書士の費用を立て替えてもらいたいを開いて下さい。それに基づいて,法テラスの情報発信が不十分と思われるものについて説明していきます。
法テラスは経済的余裕のない人でも弁護士を利用できるようにという制度です。そのため,利用者の資力が一定水準を下回っている必要があります。これを定めるのが法テラスの資力基準です。
大きく言いまして,①収入の基準,②資産の基準の2つを満たす必要があります。
2 収入等の基準
先の法テラスHPに一覧表があります。この表をご覧下さい。その人の月額手取り収入(賞与を含む。)を計算し,いろいろなものを差引した金額がこの表の金額以下であれば要件を充たします。
イ 「家族」の人数
この一覧表では,「家族」の人数ごとに金額が定められています。
法律扶助の制度における「家族」の範囲は,実は一般の人には分かりにくい。
「家族」は,法律扶助の一般要件では,次の条件を充たす人です。
①同居していること
②申込者又は配偶者の扶養家族でああること(次のⅰ~ⅲを全て充たす)。
ⅰ 申込者又は配偶者の家族である。
ⅱ 申込者又はその配偶者から生活費の主たる部分が賄われている。
ⅲ その人の年間収入が103万円以下(賞与を含めた平均手取月収が74,000円以下)である。
そして,離婚など夫・配偶者を相手方とする場合は,上記の3つから配偶者を外して考えます。
離婚等の場合ですと,夫ど同居していても,その夫の収入は除外して考えます。当たり前ですよね。
あなたが,実家に戻って親と同居している,成人している子と同居しているという場合がありますよね。
このような場合,あたなの親やあなたの子が,上記②の扶養家族のⅰ~ⅲを全て充たせば,その人の人数をカウントします。ⅱかⅲを充たさない場合は,法律扶助の上での「家族」には当てはまらず,人数にカウントしません。
また,上記①の条件(同居)がありますので,例えば,高校生,大学生の子どもが親元離れて別居していて,あなたが仕送りしているという場合ですと,「家族」の人数にはカウントされません。しかし,この場合は,後にお話する別の方法できちんと考慮される扱いになります。
ロ あなたに適用される収入基準の額
① 法テラスの一覧表に,「家族」の人数ごとの収入基準額が記載されています。かっこ書きで,東京,大阪などの生活保護一級地は金額が上乗せされています。生活保護一級地は,厚生労働省の生活保護制度の頁よりを見て下さい。
都道府県単位ではなくて市町村別で東京,大阪以外にもかなりあります。
埼玉,兵庫,愛知,神奈川,京都,北海道,宮城,千葉,滋賀,岡山,広島,福岡
法テラス,不親切すぎ。「東京,大阪など」で済ますところに東京大阪中心主義を感じちゃいます。かならず,厚生労働省の上記の表を見て,あなたのお住まいの市町村が入っていないかを確認して下さい。
② 家賃・住宅ローンの額の収入基準上乗せ
ⅰ 家賃・住宅ローンの負担
申込者が家賃・住宅ローンを現実に支払っている場合,その金額は,法テラスの一覧表の限度額の範囲内で,収入基準に加算します。これは,とっても大きいです。特に東京都特別区にお住まいの方は収入から除外される額も上積みされています。
ⅱ 同居する親等への「家賃」分の分担
申込者が,申込者と同居して申込者に住居を提供している者に対し,定期的に金銭を支払っている場合は,これを家賃と見なし,上記の家賃・住宅ローンの場合の限度額まで収入基準の額に加算します。実家で親と同居していて家賃分としてとしてお金を入れている場合がこれに当たります。
ⅲ
このように,家賃・住宅ローン等の負担がある場合,収入の基準自体が単身者だと41,000円,家族4人以上で71,000円までUPしますので,それだけ収入基準を充たしやすくなります。
ハ あなたの「収入」の計算
① 税金や社会保険料を差し引きした手取収入月額です。賞与がある場合は月割にして加算します。
② あなたの実際の収入に加算されるもの
ⅰ 「家族」(配偶者を除く。)が,定期的に金銭をあなたに払っている場合のその金額
例えば,あなたと同居する親や子が扶養家族の要件を充たす場合で(先のイの②「扶養家族」の3条件),生活費の分担をしているときは,その分担額をあなたの収入に加算します。乏しい年金の中からお金を負担してくれているとか。子がアルバイトして稼いで生活費を入れてくれているとか・・・泣けてきます。
ⅱ 申込者とその「家族」が,「家族」に該当しないあなたと同居人から,食費等に関する援助を受けている場合は,以下の金額を収入に加算する。
ただし,申込者とその「家族」が受けている利益の額を疎明した場合は,その受けている利益の額を加算する。
申込者のみ 月額30,000円
2人家族 月額41,000円
3人家族 月額45,000円
4人家族 月額49,000円
例えば,あなたと同居する親や成人の子どもに一定の収入があって法律扶助のいう「家族」には該当しない場合,あなたとあなたの家族がその親の用意した食事を食べていたり,あなたの子どもから生活費分担分の金銭をもらったりしている場合です。
この場合,食事の提供という金銭的に把握しにくいものであることから,上記のように,申込者とその「家族」の人数に応じて,申込者の収入に上記金額を加算することになります。
ただし,「家族」が受けている利益の額を疎明した場合はその限度に縮まります。例えば,食事等は別で現金を受け取っているという場合は,その額が上記基準を下回るなら,領収証とか貸し借りノートとか作成して,そういう現金のやりとりを疎明すればいいわけです。また,食費については,全体家計簿をある程度正確に記録し,人数割で計算してあなたとあなたの「家族」の分が上記金額を下回ることとかを疎明すればいいわけです。
③ あなたの収入から除外するもの
医療費,教育費,職業上やむを得ない出費等の負担が考慮されます。
a 全額が考慮されるかどうかは,その具体的な内容によると思います。その負担の一定部分を考慮して収入から差し引くこともあると思います。
b 医療費については,診断書や病院・薬局等の領収書等を集めましょう。事柄の性質上,継続して医療費負担が生じるものがイメージし易いですね。ただ,入院とか手術とかで一度に多額の医療費支出があった場合でも,それは何らかの形で考慮されるのではないかと思います(曖昧で済みません)。
c 教育費は,保育園・幼稚園・小中高・学童保育・予備校・大学等が考慮されます。
塾,習い事は考慮されません。
d 職業上やむを得ない出費は,ケースバイケースだと思います。
ニ まとめ
以上のようにして,①あなたの「家族」の人数,②あたたとあなたの「家族」の収入基準額(家賃等で上方修正)によりあなたの基準を設定し,③あなたの収入に加算されるもの,④あなたの収入から除外されるものを計算して,収入基準を充たすかどうかが決まります。
ホ 別に住む親族(配偶者を除く。)へ送金している場合
申込者が,配偶者を除く別居の親族で申込者の扶養親族となるものに対し,定期的に生活費等を送金している場合
ここでいう扶養親族というのは,大まかには次の4要件です。
ⅰ 6親等内の血族及び3親等内の姻族
ⅱ 申込者から生活費の主たる部分が賄われていること。別居でもかまいません。
ⅲ 年間の収入が103万円以下(賞与を含めた平均手取月収が74,000円以下)
ですから,例えば遠隔地で就学している子どもに生活費を送金しているとか,別居している親に定期的に送金しているとかいう場合は,この扶養親族に当てはまるのではないかと思います。
この場合,法テラスの利用にあたって収入要件を充たすかは,次のように考えます。
①
申込者と送金先の親族それぞれについて,前記イ,ロの方法で,それぞれの収入基準額を算出し,これを合算する。
②
申込者と送金先の親族のそれぞれについて,前記ハの方法でそれぞれの収入を算出して,これを合算する。
③ 合算収入額が合算収入基準額を下回れば,収入基準の要件を充たす。
3 資産等の基準
法テラスの弁護士・司法書士の費用を立て替えてもらいたいをご覧下さい。
そこに「家族」の人数に応じた資産合計額の基準が一覧表で紹介されています。
やや字が細かいですが,法テラスのHPをよくお読み下さい。
資産の基準につきましては,離婚で思い悩む多くの女性の場合は,その基準以下の場合が多いと思います。
4 まとめ
別記事で,これらの基準を具体例に当てはめるとどうなるかを紹介して,イメージを掴んでいただくことを予定しております。
離婚等で思い悩む女性の多くは,これらの規定を当てはめていきますと,法律扶助の要件を充たすのではないでしょうか。
実際,私が扱ってきた離婚に関する事件では,圧倒的多数が法テラス利用です。少し悲しいかも・・・・(T_T)
さて,次回は,いよいよ,償還猶予と償還免除の解説に入っていきます。
つづく・・・
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