好きが苦しくて、自分を嫌いになるばかりの付き合いで
(※今回の投稿は連作です。よければ先に↓の1回目をお読み頂けるとよりイメージが膨らむかと思います✨)
「だって、どうせわたしより勉強が大事でしょう」
「芝居は現実じゃないでしょ、現実のわたしこそがあなたの中にいないみたい」
そんなことを、言われたことがあった気がした。
「仕事とわたしと、どっちが大事なの?」なんて、
ベタにすぎるセリフとそっくりな比較をされて、
何を言ってるんだろう、と内心思いながら恋人を説得していた学生時代があった。
そうして、僕はその時のその子の気持ちを、
数年ごしに、正確にトレースすることになった。
今ならあの子の気持ちがわかるし、
どうしてもっと苦しい気持ちに寄り添ってあげられなかったろうと、
今さら取り返しのつかないやりきれなさを覚えることがある。
それもこれも、15以上年上の、職場の先輩と付き合ってわかったこと。
「ごめん! 今日無理だ、行けない!! また今度にしよね!!!!」
トークルームを開いて感じる、やりきれなさ、怒り、絶望。
胸がカーッと熱くなって、心臓がぐるんぐるんかき混ぜられるようで、
持っている荷物を地面に叩きつけたくなるような激しい感情。
「なんでだよ!! これもう何回目!!?? 仕事がそんなに大事ならなんで俺と付き合ってるんだよ!!!!」
その時は知るよしもなかったことだけれど、僕は恋愛では「蠍座」になる。
規定時間外の、正確には給料になる「仕事」ですらない仕事のために、
もう何度目かわからないくらいの、僕との約束の反故。
「必ずしも必要でない仕事にすら及ばばい俺の存在って何…」
「もう俺に好きとか言わないで。だって好きじゃないじゃん、会わないでいられる程度の気持ちじゃん」
そんなことを言って、一方的に自分のものさしを押しつけて彼女を非難して、
メッセージの量もどんどん差ができていく。
同じ好きじゃないと嫌だった。
好きの感じ方が自分のやり方一つしかなかった。
彼女の愛を理解しに、感じ取りにいくだけの心の余裕がなかった。
「どうせ」「だって」「結局は」
子どもじみた皮肉、嫌味の連打、連鎖。
そのたびに彼女は「伝わらないかもしれないけれど、これでもあなたのことが大好きなんだよ」と言ってくれていた。
でももう、そのすべてが耳に入らなかった。
口でならなんとでも言える。
離れたところで、隙間時間に、大したカロリーもかけずにメッセージだけで僕の心を繋ぎとめようとするなんて、どれだけ自分は下に見られているんだろう、と、心はもう被害妄想のような迷宮に入って抜け出せなかった。
占いや心理学を学んだ今なら、自分だけが、そしてもちろん彼女だけが100%悪いということはなくて、「お互いの違いを埋める」「理解のための歩み寄り」が必要なだけだったんだと、思うことができる。
けれども、年の差、立場の差があったからか余計に、
「下に見られている」「年下だから、仕事の実力が足りないから後回しにされる」
そんなことばかり考えて、結局自分で自分をその「年下」「子ども」にしてしまって、その自分に嫌気がさして、の無限ループ。
それでも、無限ループにはまり込んで、
怒って恨んで取り乱して泣いて自分を嫌いになってを繰り返していても、
それでも自分でも信じられないくらい、彼女のことが好きだった。
好きだったからこそ、見失いもしたし、制御できなかったのかもしれない。
邪魔そうにしながらもたっぷりと伸ばしたまま大胆なカットはしない彼女の長い髪。
「もういっそショートにして完全にメンズになれば?」とまたいじられても、「確かに! それもいいかもしれませんねー」と笑っていた彼女。
いつか、「髪が綺麗だよね」と言うと、仕事中のケロッとした笑顔とはまた別の、世間を知らない少女のようなあどけなさで笑って、
「こういうところはあたしやっぱり女なんだなーと思う。せめて髪だけでも、わかりやすーい女らしさでいたいんだよね。………〇〇(僕)に、好きでいてほしいし」
僕はそれを聞いて、他の誰も知らない彼女の「女の子」としての素顔を見て、なんだか急にかなしくなって泣いてしまった。
「なにさ、、どうしたの? 大丈夫??」と困ったように笑う彼女。
「ごめん、ごめん」と言いながら、僕は自分の勝手さと、彼女への愛しさとでぐちゃぐちゃになっていた。
この人の、この顔が見られるだけで僕は生きてきてよかったと思った。
けれどもそれからもやっぱり、喧嘩は絶えなかった。
喧嘩というよりは、僕の独り相撲だったろうと思う。
断られて、当てが外れて、捨てられたような気持ちになって、めんどくさい自分を始めて………
僕には一つ、この彼女とのお付き合いを通じて、今に至るまでずっと信念にしている思いがある。
それは「自分の生を、性を、よりよく生きようと毎日がんばっているすべての女性は、みな素敵な”女の子”なんだ」ということ。
年齢も、容貌も、肩書も、関係ない。絶対に。
彼女が見せてくれた少女のような無防備な笑顔が、今も僕の心に残っている。
僕にとって女性の、すべての”女の子”たちの、あの笑顔よりうつくしいものはこの世にない気がするから。
だから僕は「好き」を抱いて努力しているお客さま皆さまに、
最後の最後の最後まで寄り添わせてほしいと願いながら、鑑定に臨んでいます。