Wonderstruck(原作) | 不健康ランドの小乱闘

不健康ランドの小乱闘

かなり無理。でも負けない。

映画「ワンダーストラック」の

原作を読んでみた。

 

同じ作者の「ユゴーの不思議な発明」と同様、

独特の挿画がはさまれた少年少女文学。


これが、かなりよかった。

 

物語のほとんどは、映画も変えてはいない。

だが、ちょっとした変更の積み重ねが

壊滅的な影響を及ぼすことに

気づいていないのは監督か、それとも原作者兼脚本家か。

 

 

1.ベンの母親の描写。

映画では、「パパは誰なの」とベンに訊かれて

タバコを吸いながら誤魔化すという姿しか描かれないんだが、

原作ではそもそもベンは母親にそんな質問はせず、

母親はベンに優しい。

優しいと同時に、

疑問に対してはすぐに答えず自分で考えさせたり、

おとなしい息子に向かって「相手の目を見て話そうね」と励ましたり。

――なんでそういう描写を映画はしなかったかなぁ。

 

2.デビッド・ボウイのSpace Oddity。

これは母親が大好きだった曲で、

何度も聴いてるうちにベンは

「トム少佐」が自分の父親じゃないかという妄想に陥る

という下りが、映画では分からん。

 

3.母親と住んでいた家で発見した物の中には

本だけじゃなくてロケットもあって

その中には男性の写真もあって

その名前がダニエルだということまで分かっていた。

 

4.オオカミは

映画では、ベンの悪夢に出るだけだけど、

原作では、ベンはオオカミが嫌いじゃない。

とはいえ、悪夢は原作にも出てくるから、

この辺の整合性には原作でも疑問符かな。

 

5.ベンがジェイミーに腹を立てるには、

それなりの事実の積み重ねがあったのであって、

映画ではそれを省略しちゃってるから

それだけであんなに怒るんかい?と思っちゃう。

 

6.ローズが自然史博物館の大隕石の上に

「Where do I belong?=私の居場所はどこ?」

と書いたメモを置いたら、

50年後のベンがそれを見つけるかと思うでしょ。

でも映画ではそんなことは全くなくって

「ありゃりゃ」だったんだけど、

原作では期待通りだったんですね、これが。

とはいえさらにひねってたけど。

 

7.そしてその「私の居場所」が

原作ではラストにつながるんだけど、

映画ではつながってなかったと思う。

だからベンの居場所がどうなるのか

全然分からなかった。

 

ほかにも縷々あるけど、

いい原作なのに、

こういう積み重ねが映画をダメにしてる。

なんでこんなことしちゃうんだろ。


ちなみに残念ながら、
邦訳は出てないみたい。