鉄道の駅員さんは驚くほど優秀だと思っている。とくに、「駅員にお願いすれば常に合理的なきっぷが出てくる安心感がある」
小学生の頃、東北新幹線はまだなかったので、東海道新幹線で大阪から東京に着いた私たち母子は、東京駅から上野駅まで移動して上野駅から東北本線に乗らなければならなかった。
この東京駅から上野駅へ移動する際に、母とはぐれた。それは、東京駅から上野駅へ向かう際に、「間違えた」と言って母親が突然電車から降りたからだ。
因みに、乗った京浜東北線も、山手線同様、上野駅には行くので、乗った電車は間違ってはいない。
さて、次の神田駅に着いた私は、東京駅へ向かって行き違いになるよりは駅のアナウンスを使うほうがよいだろうと考え、神田駅の駅長室に向かった。
そこで、東京駅で母親だけが電車を降りたのではぐれた旨と、上野発の盛岡行き特急列車に乗ることになっているからと発車時刻と列車名を伝えた。
今考えると非常におこがましいのだが、このような事情なので東京駅と神田駅と上野駅にアナウンスを入れてほしいことまで伝えてしまった。その頃から上から目線だったようだ。
駅員曰く、「こんなしっかりした迷子は見たことがない」
いや、母とはぐれたことは認めるが、私は迷子になったのではない。迷子にされたのだ。
約1時間後、母親が泣きそうな顔をして駅長室にやってきた。
私は、本来は入ることができない駅長室に入れて、どちらかというと楽しかった。
加えて、「こんなしっかりした子を迷子にしたらダメですよ」と駅員さんが母親を叱ってくれるに至っては、嬉しかった。
そう、私は迷子になったのではなく、迷子にされたのだ。