今日は模様についてのお話。
この水玉のようで水玉ではない独特の模様、
何を表しているでしょう。
これは「ピーコックアイズ」とよばれ、
孔雀の羽模様からデザインされた
ブンツラウアー陶器特有の模様です。
ブンツラウアー陶器をつくるどの工房でも共通しているこの模様。
工房によって、また、職人によって
ピーコックアイズと花を組み合わせたり、
果物を組み合わせたり・・・
オリジナリティを出しています。
スポンジを使って絵付けをするのでこのような繰り返し模様になります。
でもなんだか、じっと見ていると不思議な気持ち。
こちらからも、そしてあちらからもじっと見られているような。
そもそもなんで、孔雀の目模様なんだろう。
孔雀の目って、何?
ヨーロッパにおいて、孔雀って何?
ヨーロッパでは孔雀は「太陽神の化身」といわれ、
女性や子どもたちを守る騎士のようだと考えられていました。
(インドでは孔雀は「魔鳥」といわれ、その目模様には邪悪なものを除く効果があるといわれています。)
いわば守り神。
『車輪の下』で有名なドイツの作家へルマン・ヘッセの作品、
『少年の日の思い出(Jugendgedenken)』にも孔雀の目モチーフはでてきます。
この作品の初稿は1911年に発表され、
『クジャクヤママユ(Das Nachtpfauenauge)』という原題でした。
蝶の標本収集に熱中する主人公は、友人の家から美しい羽をもつ蝶の標本
を盗んでしまいます。
この蝶はクジャクヤママユといい、孔雀の目模様をその羽にもっています。
邪悪なものから守ると同時に、そこにひそむ魔力によって
人間を誘惑する孔雀の目のように、
主人公にも暗い闇の力が差し掛かる一瞬を描いています。
ヘッセも孔雀の目模様のもつ魔力を信じていたようです。
なんだか、いろいろな意味で強い力に満ちたこの模様。
職人たちが模様を全て手描きしているブンツラウアー陶器には
手作りのあたたかさ、
職人の想い、
伝えられてきた伝統の重み、
歴史の深さ
など、言葉では言い表せられないたくさんのものがつまって
強い力で私たちを魅了しているのです。