いわき市整形外科「志賀リウマチ整形外科クリニック」のブログ

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いわき市整形外科「志賀リウマチ整形外科クリニック」の最新情報、膝の痛み、腰痛、五十肩、足手のしびれなどの原因や治療、その他日々の雑感などを綴ってみたいと思います。

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「頚椎症性脊髄症」

頚椎の症状

症状

ボタンのはめ外し、お箸の使用、字を書くことなどが不器用になったり、歩行で脚がもつれるような感じや階段で手すりを持つようになったりという症状が出ます。手足のしびれも出てきます。

比較的若年の方であれば、かけ足やケンケンをしにくくなるなどの軽度の症状を自覚できますが、高齢者では気づくのが遅れる場合があります。

原因と病態

頚椎症性脊髄症

加齢変化による頚椎症(椎間板の膨隆・骨のとげの形成)の変化によって、頚椎の脊柱管(骨の孔)の中にある脊髄が圧迫されて症状が出ます。

日本人は脊柱管の大きさが欧米人に比較して小さく、「脊髄症」の症状が生じやすくなっています。

 

診断

症状と四肢の反射の亢進などの診察所見があり、X線(レントゲン)所見で頚椎症性変化を認め、MRIで脊髄の圧迫を認めることで診断します。
中年以降ではX線での頚椎症性変化はほとんどの人に見られますし、MRIでの脊髄圧迫所見も症状がない場合でも見られますので、検査所見だけで診断することはできません。

神経内科の病気の一部は症状がよく似ている場合がありますので、注意が必要です。

予防と治療

転倒などの軽微な外傷で四肢麻痺(脊髄損傷)になる可能性が存在しますので、転倒しないように注意します。
一般的に日常生活に支障があるような手指巧緻運動障害がみられたり、階段昇降に手すりが必要となれば、手術的治療が選択されます。

大腿骨寛骨臼インピンジメントとは
(femoroacetabular impingement:FAI)

寛骨臼側、大腿骨側における軽度の骨性変形を背景として、股関節運動中、あるいは運動終点において繰り返し衝突(インピンジメント)が起こることによって、寛骨臼縁の関節唇および軟骨に損傷が生じ、股関節痛、ひいては変形性股関節症(OA)を引き起こす病態である。



☆FAIの分類

図1 FAIの分類





a(左).Pincer type impingement
・寛骨臼側に起因する。
⇒寛骨臼前外側の過度の骨製被覆によって生じる。
・30~40歳代の女性に多くみられると報告されている。
・大腿骨頚部とのインピンジメントにより関節唇が損傷され、やがて寛骨臼側の軟骨損傷をきたす。


b(中).Cam type impingement
・大腿骨側に起因する。
⇒骨頭頚部移行部に生じた骨頭の骨性膨隆部によって生じる。
・20~30歳代の男性に多くみられると報告されている。
・寛骨臼縁の関節唇-関節軟骨移行部に負荷を加えて軟骨剥離などをきたして関節軟骨が損傷される。


c(右).Mixed type impingement
・上記のPincer typeとCam typeを合併したタイプである。



☆股関節の一般撮影法

股関節のX線診断には正確な正面像を撮影する必要がある。側面像については軸位像、ラウエンシュタインⅠ・Ⅱ像、false profile像、Dunn像など様々な撮影法があるが、寛骨臼側あるいは大腿骨側で評価したい部位や病態に適した撮影法を選択する必要がある。
今回は当院でも撮影することが多い正面像・ラウエンシュタインⅠ像の撮影法についてまとめる。


【正面像】

図2 股関節 正面

・仰臥位で前後撮影(A→P)とする。
・大腿骨頸部を水平にするため両股関節を10~15°内旋させる。
(両足をハの字にして第1趾を付ける)
・恥骨結合上縁の上方3cmの点に垂直入射する。
・腸骨翼・閉鎖孔の大きさに左右差をなくすため、両側の上前腸骨棘を結ぶ線がフィルムと平行になるようにポジショニングする。


【ラウエンシュタインⅠ像】

図3 股関節 ラウエンシュタインⅠ像








・仰臥位で内外方向斜位撮影とする。
・非検側骨盤を45°フィルムからはなし、非検側膝を屈曲し立膝にする。(肩~腰までしっかり45°傾ける)
・検側股関節を45°外転させ、検側膝関節を90°屈曲させる。
・恥骨結合ー検側上前腸骨棘の中点に垂直入射する。



☆寛骨臼被覆の評価

図4 center edge(CE)角










骨頭中心を通る垂線と骨頭中心と臼蓋外側縁を結んだ線とのなす角度を表す。
20°未満を寛骨臼形成不全、25°以上を正常域、40°以上を過形成とする。




図5 acetabular roof obliquity(ARO)








 

臼蓋底を通る水平線と臼蓋外側縁と臼蓋底を結んだ線とのなす角度を表す。

0°以下で過形成とする。



図6 Sharp角(acetabular angle)








 

涙痕下縁と臼蓋外側縁を結ぶ線と水平線とのなす角度を表す。

男性:38~42° 女性:43~45°



図7 acetabular head index(AHI)








 

A:大腿骨頭内側端~臼蓋外側端までの距離
 

B:大腿骨頭横径

AHI=A/B×100

大腿骨頭に対する臼蓋の被覆状態を表す。




☆FAIに特徴的な骨形態

〇Pincer typeに特徴的な骨形態

図8 Cross-over sign











股関節正面像において寛骨臼前壁の外側縁が後壁の外側縁と交差する所見であり、寛骨臼の後捻を示唆する。


図9 Posterior wall sign









 

股関節正面像において寛骨臼後壁の外側壁が骨頭中心よりも内側にある所見であり、寛骨臼の後捻を示唆する。



〇Cam typeに特徴的な骨形態

図10 Pistol grip deformity(ピストルグリップ変形)











骨頭頚部移行部のくびれが消失・平坦化し、大腿骨外側への骨膨隆を伴う変形である。



図11 股関節軸位像におけるα角の増大






 

α角

…骨頭中心・前方の骨頭頚部移行部を結ぶ線と頚部軸(骨頭中心と頚部中央を結ぶ線)とのなす角を表す。
正常値は50°以下、55°以上を異常値として扱う報告が多い。

OS:Head-neck offset
…骨頭前縁ー頚部前縁の距離を表す。
正常値は10mm以上、あるいは OS/骨頭径D ≧ 0.14 が目安となる。


図12 Herniation pit










骨頭頚部移行部から頚部の前外側に生じる硬化像で囲まれた小円形の骨透亮像である。



☆FAIの診断指針

【画像所見】

Pincer type のインピンジメントを示唆する所見
①CE角40°以上
②CE角30°以上かつARO=0°以下
③CE角25°以上かつcross over sign 陽性

Cam type のインピンジメントを示唆する所見
CE角25°以上
主項目:α角55°以上
副項目:Head-neck offset ratio=0.14未満
ピストルグリップ変形、Herniation pit
⇒主項目を含む2項目以上の所見を要する


【身体所見】

・前方インピンジメントテスト陽性
(股関節屈曲位および内旋位での疼痛の誘発を評価)

・股関節屈曲内旋角度の低下
(股関節90°屈曲位にて内旋角度の健側との差を比較)
⇒最も陽性率が高く頻用される所見は前方インピンジメントテスト

※Patrickテスト(股関節屈曲・外転・外旋位での疼痛の誘発を評価)も参考所見として用いられるが、その他股関節・仙腸関節疾患でも高率に認められる。


【診断の目安】

上記の画像所見を満たし、臨床症状(股関節痛)を有する症例を臨床的にFAIと診断する。

梨状筋の基礎知識

梨状筋は、股関節の深部(大殿筋、中殿筋の下)にあり、股関節を外旋させる深層外旋六筋の中で主力になる筋肉です。梨状筋のさらに深部には、上双子筋があり、梨状筋と上双子筋の間を坐骨神経が通ります。梨状筋内を坐骨神経が通っているケース、梨状筋を挟むように坐骨神経が通っているケースも稀にあります。梨状筋は小さい筋肉ですが、狭いスペースに位置しているため、慢性的な短縮・拘縮が起こると周辺の神経(特に坐骨神経)や血管に対して容易に悪影響を与えます。

梨状筋の基礎知識

神経支配

梨状筋は、仙骨神経叢(L5、S1~2)の神経支配をうけます。 仙骨神経叢は脊柱管のL4~5、S1~4の左右から伸び坐骨神経を形成します。坐骨神経は、大腿の遠位部にて、総腓骨神経と頚骨神経に分かれる神経です。

解剖

  • 【起始部】仙骨の骨盤面(S3~4の骨盤仙骨孔の外側および間)
  • 【停止部】大転子の先端腹側表面

梨状筋は、仙骨から大腿方向にほぼ水平(少し下がる程度)に走行しています。

働き

梨状筋の主な働きは、股関節における大腿の外旋です。腰の位置で大腿を60~90度屈曲させると、梨状筋は内旋筋および外転筋として働きます。

梨状筋のトリガーポイント

梨状筋は、仙骨と腸骨の接点と大転子を結ぶ線上にあります。トリガーポイントは、梨状筋の筋腹からやや外側と正中側に見つかることが多いとされています。

トリガーポイントの位置と関連痛領域

梨状筋のトリガーポイントの位置と関連痛領域を下図に示します。患者が訴える関連痛領域から、原因となるトリガーポイントを探索することで、的確な治療につながることが考えられます。 梨状筋のトリガーポイントからは、仙骨周辺、臀部全体、大腿後面の大部分に関連痛が放散します。梨状筋にトリガーポイントができるなどして、慢性的に梨状筋が収縮・拘縮した状態になると、周辺の血管・神経(特に坐骨神経)を絞扼することがあります。これがトリガーポイントに起因する梨状筋症候群の原因になります。

トリガーポイントの位置と関連痛領域

  • ①のトリガーポイントは、梨状筋を3等分したときの外側(大転子側)1/3くらいのところにあります。
    • 関連痛は、臀部の外側から大腿後面にかけて放散します。
  • ②のトリガーポイントは、起始部付近に見つかります。
    • 関連痛は、仙骨周辺、臀部全体、大腿後面にかけて放散します。

トリガーポイントの原因

梨状筋は急性・慢性の両方のストレスを受けやすい筋肉です。小殿筋にトリガーポイントができる急性的な原因として、中殿筋や小殿筋と同様に、急激な過負荷が挙げられ、慢性的な原因としては日常生活様式が挙げられます。

急性的な原因

梨状筋は大きさの割に、過剰な負荷が突如としてかかりやすい筋肉で、損傷しやすいといえます。

  • 急に重いものを持ち上げたり、下ろしたりする。
  • 転倒しそうになった時、とっさに態勢を立て直す。
  • 事故などによる急激な衝撃
    • 身体の目に見える部分が無事でも、深部にダメージが入ることはよくあります。わかりやすい例では、むち打ち症が有名ですが、梨状筋でも同様の現象が起きることがあります。

慢性的な原因

梨状筋は、股関節の動きにおいて重要な役割を担うため、逆に股関節を動かさない状態が長く続くと、悪影響があります。現代社会は座位が中心です。座位により股関節は動かされる機を失います。

  • 長時間にわたり梨状筋が収縮するとき
    • 自動車を長時間にわたり運転すると、アクセル操作とブレーキ操作を行う右足において、長時間にわたり梨状筋は収縮することになり、トリガーポイントの原因になります。
  • 運動不足
    • 身体を動かさない生活は、梨状筋に対して急激な負担をかけないまでも、動かさないというストレスが蓄積され、トリガーポイントの原因になります。関節可動域は全域で動かすことにより、付着する筋肉のストレスを解消することができます。
  • 仙腸関節捻挫、股関節の関節炎
    • 梨状筋の付着部周辺の関節に障害が発生すると、梨状筋に悪影響を与え、トリガーポイントが発生します。

トリガーポイントによる症状

梨状筋のトリガーポイントにより、座位の際に静止できなかったり、股関節において大腿部が外旋することで足が外反したり、内旋が制限されたりします。

慢性化すると、仙腸関節障害を引き起こすことがあります。

梨状筋にトリガーポイントができると、梨状筋が短縮して坐骨神経を圧迫し、梨状筋症候群と診断されることがあります。一方で、梨状筋にトリガーポイントがあっても坐骨神経を圧迫しておらず、本来なら梨状筋症候群ではないけれど、梨状筋症候群のような症状をきたすこともよくあります。

いずれの場合でも、梨状筋のトリガーポイントを消失させるための治療(トリガーポイント注射)を施行することになります。

ばね指(弾発指、指の腱鞘炎)

 

指は腱によって曲げ伸ばしをすることができます。

 

手を握ったりする強い力を発揮する筋肉は前腕にありその力を腱が伝えます。

 

その通り道で 指を曲げる屈筋腱が浮き上がらないように押さえているのが靱帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)と呼ばれるものです。

 

丁度、その構造はベルトとベルト通し の関係に似ています。


この靱帯性腱鞘は指に部分にありますが、それが終わる指の付け根付近に力がかかり炎症を生じやすいところがあります。

 

その部分の腱や腱鞘が炎症を起こし、 “腱鞘炎”になり、さらに進行すると引っ掛かりが生じばね現象が起こります。これを“ばね指”と呼んでいます。
 

注:腱の周りには腱鞘があります。

 

硬い靱帯性腱鞘のある部分は滑膜性腱鞘で裏打ちされていて、腱と靱帯性腱鞘が擦れて摩擦が生じにくいようになっています。

 

そのほかの腱の周囲はパラテノンという柔らかい軟部組織が覆う構造になっています。

 

症状

 

指の付け根で屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると、“腱鞘炎”になり腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、指の付け根に痛み、 腫れ、熱感が生じます。

 

朝方に症状が強く、日中は使っていると症状か軽減することも少なくありません。

 

進行するとばね現象が生じて“ばね指”となり、さら に悪化すると指が動かない状態になります。

 

 

 

原因と病態

原因

 

更年期の女性に多く、妊娠出産期の女性にも多く生じます。

 

手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのも特徴です。

 

糖尿病、リウマチ、透析患者にもよく発生します。母指(親指)、中指に多く、環指、小指、示指にもよくみられます。

病態

指の使いすぎによる負荷のため、動かすたびに摩擦のために炎症が進み、腱鞘が肥厚したり、腱が肥大し、通過障害を起こすために一層症状が悪化します。

病態

 

診断

 

指の付け根に腫脹や圧痛があり、ばね現象があれば診断は容易です。

 

糖尿病、リウマチ、透析患者では、多発性に生じます。

 

治療

 

保存的療法としては、局所の安静(シーネ固定も含む)や投薬、腱鞘内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)などがあります。

 

この 注射は有効で、おおむね3ヵ月以上は無症状なことが多いですが、再発することも少なくありません。

 

改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘の鞘を開く 手術(腱鞘切開)を行います。

 

切開するのは腱鞘の一部だけです。小さな傷で済みます。