「もう一度、キスして」首筋(執着)編 | 信の虹 ー신의 nijiー

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ここは韓国ドラマ「信義」の登場人物をお借りして楽しんでいる個人の趣味の場です。
主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^

〜まずはお知らせと呟き〜

12/31に行われる、りえさん主催の"シンイで年越し企画2017"へ参加させていただきます^ ^

(今回の更新の後、春頃までお休みする予定でしたが、お休みは企画参加の後にしたいと思います)

 

シンイでキスシーンと言えば"一応"一度だけですが、

偶然その時の事を思い出しながらお話を考えている時に、りえさんが12月はキスをお題にお話を綴られると知りまして。

嬉しくなって便乗させていただくことに♪

更に年越し企画開催のお知らせを聞いて、二重の喜び♪♪

 

毎回とっても緊張しますが、しかし参加して本当に良かった、書いて良かった、楽しかった!と毎回思う年越し企画。

まだまだこれからお仲間が増える事を期待して、年末を楽しみにしたいと思います。

りえさんに今までのイベント開催を深く深く感謝しながら、ベテラン様から初めてさん、そして読み手の皆さん、みんなで一緒に楽しめたら嬉しいなぁ…^ ^

 

 

「ふむ…りえ殿の屋敷へ行き、参加の意を示せばよいのだな?」

「…やめてくれ、叔母上」

(叔母様も書く気満々のようです!( ´艸`))

 

 

 

 

今日のお話はドラマ18話「そばにいさせて」の頃にこんなことがあったりして…という創作話です。

ドラマでも秋の設定だったものの山の草木がまだ緑でしたが、冬に入る頃をイメージして書きました。

二話分の量なので長いです。良かったらお時間ある時にどうぞ〜。

 

 

 

 

掌編「もう一度、キスして」首筋(執着)編

 

 

吹き下ろす山からの風が、木々達の乾いた葉をざわめかせる。

典医寺や自室に篭りきりでは気が滅入る。と、

ウンスは武女子をなんとか口説き落とし、王宮の片隅にある沢へと向かった。

以前、チェヨンに隠れて外出した時もここを訪れたが、すぐに見つかり連れ戻されたことがあった。

 

また探し出して欲しいような、一人で思いに耽りたいような。

ウンスはそんな心地で、木々の隙間から見える清んだ空を見上げた。

頭上で葉を揺らしてかさかさと音を立てる樹木の幹を下へと伝って足元に目をやると、小さな川が流れている。

その川の上流を目で辿ると、遠くには滝壷があり、飛沫をあげる瀑布が見える。

山から下りてきた支流が岩肌を滑り落ち、水面へと叩きつけられるその様子をじっと眺める。

風の音、木々の音、水の音。

ウンスは目を閉じて、ほんの暫しそれらに耳を澄ませ、身を任せた。

 

 

そうしていると、少しの間だけでも頭の中を空っぽにできた気がして、

ウンスは「まあ、何とかなるわよ、うん」と自分に言い聞かせながら両腕を上に広げ、ううん、と体を伸ばした。

部屋に閉じ籠ってばかりで硬くなった体に、血液が巡る。

いつも外でそんなことをすると、腕を上げたことで衣が捲れ上がる様を見て

チェヨンが小言を言ってくるのだが、今は一人だ。

警護についている武女子達もまさかそんな事までは報告しないだろう。

まあ、報告したとしても怒られるのは慣れているから、やったもの勝ちだ。

 

ウンスがそんな事を思いながら、ふと視線を移すと

一輪だけ咲き残っている、椿の花が目に入った。

他の花達はすっかり落ちてしまったようだが、一つだけ今にも枝から離れそうにして身を咲かせている。

 

『私・・・帰らなくてもいいかな』

 

先程、典医寺で背を向けたチェヨンに縋り付き、つい口から出してしまった言葉をなぞる。

それは、チェヨンには答えることのできない問いだった。

約束が命よりも重たい人だ。

毒に侵されたウンスに、帰るな。などと言える訳がない。

頭で理解はしていても、あの時ウンスは想いを口に出さずにはいられなかった。

 

色濃く艶やかで雄々しくもみえる緑葉の中に、儚く身を埋める紅の花。

ウンスにはその椿が、この時代に残りたいのだと必死にしがみついている自分のように思えて、心の中で「花が落ちませんように」と祈った。

 

 

 

 

 

 

「やはりここでしたか」

 

背後からのチェヨンの声に、ウンスは笑顔で振り向いた。

 

「あ、バレちゃった?」

 

小言を言ってもどうせ聞かぬだろうと思ったのか、チェヨンは何も言わず、短い溜息をついてウンスを呆れたように見つめた。

 

「・・・何よ」

 

「何でもありません」

 

ヨンはウンスから顔を背けると、かさつく音を賑わせる木々の葉に耳を傾けるようにして空を見上げた。

 

「どこをほっつき歩いてるんだ、危険だと何度言ったらわかるんだ。・・・って思ってるんでしょう?」

 

ウンスは、考えていることはお見通しだという風な顔でヨンを見上げると、返ってくる言葉を待った。

 

「・・・脱いでくれませんか」

 

「え?」

 

「その衣です。彼奴から渡されたものでしょう。別のものに着替えてもらえませぬか」

 

ウンスは空を見上げたままのヨンから目を離し、自分の着ている赤い婚礼衣装を見やると、

「ああ、これのこと・・・そうよね、これじゃあちょっと動きにくいしね」

と、大きな袖を振ってみせた。

 

しかし続けて、

「でもこっちの方が寒さは凌げるのよね、生地が上等だから」

そう言って、びゅう、と音を立てて通り過ぎた冷たい風に目を細める。

 

「戻りましょう。お送りします」

 

ヨンはウンスの手を取り歩き出した。

しかし、ウンスがそれを引き留めるように手に力を込めると口を開く。

 

「ねえ。椿がさ、」

 

「何です?」

 

「椿がね、一輪だけ残ってるの。ほら、そこに」

ヨンは立ち止まって振り向くと、ウンスの伸ばした指の先を何も言わずに見つめた。

 

「その花が最後なんだと思ったら、ちょっと寂しくなっちゃって」

そう言ってウンスが哀しげに微笑んで肩をすくめる。

 

最後。

その言葉が"別れ"という意を思い起こさせて、ヨンは眉を寄せると掴んでいた手を離し、ウンスの肩に手を掛けた。

 

『私が帰ったら、全部忘れてくれる?』

典医寺で告げられた言葉が、ヨンの胸を冷たく撫でる。

 

(忘れられるわけがない)

 

手を掛けた先の赤い衣と紅の花を比べるように視線を動かすと、

ヨンは「よく御覧なさい」と告げながら、

剣の鞘で枝を押し下げ、緑葉の茂みの中を見せるようにして、ウンスへ顎で指し示した。

ウンスが示された先を見ると、その枝々には花が落ちた跡ではなく、若い緑の蕾がそこかしこに付いている。

 

「・・・?」

 

「椿の時期はこれからです」

 

あれ?そうだっけ。と首をかしげるウンスに、ヨンは呆れたように

 

「この花は一人で時期を間違えて早々に咲いたのでしょう。そそっかしい、まるであなたのようだ」

と、告げた。

 

「そそっかしいって何よ」

ウンスが頬を膨らませながらも、「そっか、じゃあみんな枯れて落ちちゃったんじゃなくて、これから咲くのね」と、嬉しそうに微笑む。

その笑顔を見て安堵したように再び手を取り、ヨンが歩き出す。

 

「ちょっと、まだ見ていたかったのに」

そう告げるウンスにヨンは構わず、

「風が冷たい。早く戻りましょう」

それにいつ府院君の手先が現れるとも限らない、こんな時に一人で出歩くなど、と、小言を並べながら先を急いだ。

 

その後ろでウンスは少し小さくなってヨンの急ぐ歩幅に合わせていたが、

先程の馬鹿にしたような物言いを思い出すと少し悔しい気持ちになり、

ウンスの中でヨンを困らせてやろうという思いが湧き出す。

 

ウンスは手を引かれて歩きながら、暫し考えを巡らせた後、

こほん、と咳をしてみせると目の前の大きな背中に声をかけた。

 

「ねえ、そういえば。あれって、やり直してはくれないの?」

 

ヨンが今度は何の事かと振り向き、ウンスを見つめる。

 

「ほら、婚儀の時の、あれ。あの時はあいつとの婚儀を止めようとしてのことだったでしょう?

あんなに大勢の前で、いくら私が天から来た常識知らずな女だからって、人前で堂々とするなんて結構恥ずかしかったわよ?

あなたが行った後も、周りのオジさん達はずっと口開けて私のこと見てたし」

一呼吸で言い切ると、ウンスは唇を尖らせてみせた。

 

「・・・すみません」

 

先程とは変わって気不味そうに視線を足元へ下ろすヨンを見ると、ウンスの中でますます悪戯の虫が騒ぎだす。

今度は胸を張って態度を大きくして見せると、

 

「ここなら誰もいないから、やり直さない?」

 

そう言って目を閉じて顎を上げる。

困った顔のヨンを想像すると笑いが込み上げてくる。

 

「俺をからかっているのですか?」

案の定、戸惑うようにヨンが問う。

 

「違うわよ? 」

目を閉じたままウンスが含み笑いで答える。

 

そうして五つほど数えて、ウンスはそろそろ許してあげようと瞼を開いた。

(どんな顔をしてるかしら)

口を固く結び、眉間に皺を寄せてその場に固まっているであろうチェヨンを想像すると、吹き出しそうになる。

 

が、ウンスが瞼を開けてすぐに視界に映ったのはヨンの顔では無く、ヨンの衣。

いつのまに数歩先から目の前に寄ったのか、ウンスにはヨンの胸の合わせしか目に入らぬ程に体が迫っていた。

 

「え?」

 

二の句を継ぐ間も無く、強い力で抱き締められると

耳元で独り言のようにヨンが囁く。

 

「改めてそんなことをすれば、手離せなくなります。あなたを」

 

ウンスが顔を上げようとするが、ヨンの囲った腕の中で動くことができない。

ならば何か言おうと唇を動かすのと同時に、

ヨンが鼻先を埋めたウンスのうなじに、何か熱いものが押し付けられた。

どくん、という音が聞こえそうなほどに胸が跳ねたのはウンスなのか、ヨンなのか。

二人は自分のそれを悟られまいと、慌てたように互いから離れた。

 

「代わりにこれで・・・許していただけますか」

 

口付けの代わりにと、唇を押し付けられたうなじから飛び火して、顔中を火照らせたウンスは、

 

「そ、そうね、許してあげる。うん」

そう言って首を縦に振ることしかできなかった。

 

ヨンは安堵したように短く息を吐くと「おい」と、いつの間にか気配を消していた武女子に声をかけ「俺は先に戻る。医仙をお送りしろ」と指示を出す。

そのまま剣を片手に歩き出しながら指笛を鳴らすと、何処から現れたのか、テマンが嬉しそうに走り寄った。

 

「お前もだ。なにかあればすぐに知らせろ」

 

「はい、隊長!」

 

見る間に小さくなるヨンの後姿に、ウンスは一人取り残されたような心地になり、「送ってくれるって言ってたのに・・・」と呟いてみる。

テマンは「て、照れてるんですよ、きっと」と嬉しそうに宙を指差しながらウンスへ笑いかけた。

 

再び冷たい風が吹く。枝を揺らして騒めく木々の葉の音が、不意に心地よい音楽のように思えて、

ウンスは「そうね」と、はにかむように微笑むと典医寺へ向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うなじだけど…首筋ってことで(〃▽〃)♡

(追記:"首筋"="うなじ"で大丈夫だったみたいですね。f^_^;てへへ〜)

シンイで年越し企画ではこのお話の別バージョン、唇(愛情)編を書きたいと思っています。

万が一お話が間に合わなかったら…(汗)  そんな時は、

①ひたすら好きなシーンについて語る

②今まで作ったちまを並べてスライドショーを作る

③適当に画像を並べて1人でアテレコ大会

などの代案でシンイへの愛を表現したいと思います٩(ˊᗜˋ*)و 

 

ではまた大晦日に^ ^