2016乙♡パ 〜同じセリフでお話しを書こう〜「乙女の祈り」 | 信の虹 ー신의 nijiー

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ここは韓国ドラマ「信義」の登場人物をお借りして楽しんでいる個人の趣味の場です。
主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^

(一つ前の記事にお礼とご挨拶があります)

先日の乙パで書かせていただいたお話しに加筆しました。
よろしければ、このお話しの中の"私"に乗り移ってヨンとの逢瀬をお楽しみください^ ^



2016乙♡パ 〜同じセリフでお話しを書こう〜「乙女の祈り」


はぁ・・・。
冷たい指先に息を吹き掛ける。
見上げれば、季節外れの虹が輝いていた。

「やっぱりこれ、夢なのかな・・・」

雪の降る白い空に、七色の弧線が輝いている。
見たこともない景色。
思わず身震いするほどの寒さだ
衣の前をぎゅっと閉じたくなる


———————


目が覚めたら、そこは高麗だった。
いわゆるタイムスリップってやつだ。

初めての韓国旅行。
大好きなドラマのロケ地である奉恩寺へ行き、
「ここが現代の天門かぁ・・・」
と、見上げたとこまでは覚えてる。
突然の強風、青白い光に包まれて私は気を失った。
で、目覚めたら高麗。まるで噓みたいだけど・・・

何度も何度も夢かと思った。けど、今は王宮で女官として働いている。
何故か言葉も通じるし、仕事も体が覚えている。不便は無い。
周りの人達も、私が以前から居たかのように接してくれる。
それに高麗ってことは、ヨンやウンスに会えるのかな?と、置かれた状況を忘れてうっかり喜んだりもしたけど・・・
ここに来てひと月が経っても、まだ見かけたことはない。

あ、そうそう、キ・チョルには一度会った。
思わず握手を求めに走り寄ったら、怪訝そうにしながらも応じてくれた。
こっちのキ・チョルは意外に良い人っぽい。
上司の尚宮は私の軽率な行動に青ざめ、「あの場で斬られてもおかしくないのですよ!」と、後からたっぷり叱られた。

あと王様も、遠くから拝見したことがある。
ドラマよりももっと弱そうで…というか、隣に居た王妃様がすっごく強そうで。
どっちが主人なんだかわからないって雰囲気だった。
この国は、王妃様のひと睨みで全ての政が決まるらしい。と、いう噂だ。

けれど、ただの恐妻かと思えばそれだけじゃないらしい。
以前、逆賊の反乱によって王宮が襲われた時は、自分の寝殿に居た王様を守る為、王妃自らが短刀を持って部屋の前に立ったそうだ。
しかも宮外へ逃げる際はご自分で馬に乗って駆け出したとか。
姫というより、まるでナイトだ。

そんな事を思い返しながら、もう一度かじかんだ指先に息を吐き、回廊からぼんやりと外の景色を眺める。
知らぬまに頬を伝うものがある。
気が緩むと急に襲ってくる、ホームシック。

「帰りたいな・・・」
みんな、心配してるだろうな。
あれはドラマのお話しだもの。もしもここでチェ・ヨンを見れても、きっと厳(いかめ)しいお爺さんに違いない。
・・・まぁ、それでも一目会ってみたいけど。
頬の涙を拭って溜息をつくと、

「如何しました?」

ふいに聞き覚えのある、あの低い声が背後で響いた。
心臓が勢いよく飛び出しそうになって、胸を押さえながら振り向く。

「うわ、チェ・ヨン!」

あ、あ、あのチェ・ヨンだ!ドラマのチェ・ヨンだ!
でもドラマでは見たことのない、後半ウェービーヘアでの鉢巻姿!

「・・・いかにも、俺はチェ・ヨンですが」

次の瞬間、思わず呼び捨てしていたことに気付き、私は米つきバッタのように頭を下げて謝った。
チェ・ヨンは気にする様子もなく、少し首を傾げた。

「泣いていたのですか」

そんなことより、こっちが聞きたい。
「あ、あなたが居るってことは・・・う、ウンス、ウンスさんも?ここにいますか」
上擦った声で尋ねると、
「おりますが・・・あなたは何者です?」

不審に思っているようだけど、警戒してる感じではない。
私が現代から来たって薄っすら気付いてるような様子だ。

「じゃ、じゃあ今、何話ぐらいの状況ですか?じゃなくて・・・どうですか、今ウンスさんとは」
私、一体何を聞いてるんだろう。
けど、この髪型で鉢巻ってことは・・・
これから王宮を離れるところだろうか。二人がどんな状況なのか、どうしても気になる。

「どうですかと問われても・・・ウンスは俺の妻ですが」

うわ、涼しい顔して「妻ですが」だって!
結婚してるんだ!じゃあここは最終回のその後の世界なのねっ。
ウンスには典医寺に行けば会えるのかな。あれ?キ・チョルが居たけど、ここはパラレルの世界かな。
一人で頬を緩めたり考え込んだりしている私に、チェ・ヨンが近づいてくる。

「もしやあなたは・・・天界の方ですか?」

聞けば、たまに天界から迷い込む人がいるらしく。
突然会いたかった!と抱きつかれたり、甘い言葉を一言囁いて欲しいと言われたり。
叶えてあげるとまた天界へ去っていくのだとか。

「あなたの望みは何です?」

と、その時。
曇天の空から一条の階が地上に架けられた。

それを目にすると、
「ほら、言わないと、きっともう時間が無いですよ」
チェ・ヨンが慣れたように促す。

本当だ。体が透けてきて、天からの光に吸い込まれてゆく。
どうしよう、何かお願いしなきゃ!こんなチャンス、2度と無い。
甘い言葉?握手?ハグ?キ・・・エスカレートしていく思考を一旦断ち切る。
ああそうだ、あれがいい。

「ええっと、その鉢巻!額当て、ください、私にっ」

駄目元で言ったものの、チェ・ヨンはしゅるりと布を解くと、私に渡した。

「どうぞ」

ドラマでしてたのとはちょっと違うけど、正真正銘チェ・ヨンがしてた鉢巻だ。
ああ、ウェービーヘアにも鉢巻って似合うんだなぁ・・・
って、見惚れてる場合じゃない、早くお礼言わなきゃ。

「あ、ありがとうございます!
ウンスさんと末長くお幸せに!みんなもそう願ってます!」

「・・・?みんなとは誰です?」

そう尋ねられ、殆ど消えかかった私は最後の声を振り絞った。

「廃人乙女のみんなですー!!」

で、目が覚めた。
やっぱり夢だったけど、夢じゃない。
私の手には鉢巻がしっかりと握られていた。

最後の私の答えに微笑んでいた、チェ・ヨンのあの顔が忘れられない。










皆様、良いお年をお迎えください(^人^)