バウンティ・ハンターズ二次(後編)〜兄さんと俺〜 | 信の虹 ー신의 nijiー

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ここは韓国ドラマ「信義」の登場人物をお借りして楽しんでいる個人の趣味の場です。
主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^


「おい、またぼんやりしちゃって。考え事か?」
 
頬杖をつきながら数少ない幼少の記憶を辿っていると、ヨウ兄さんが後ろから俺の頭を小突いた。
 
「兄さん、頭叩くのやめろよ」
 
「サン、こないだ言ってたリンシンちゃん、やっと電話番号教えてもらってさ。今度の日曜、デートなんだよ。凄いだろ?羨ましいか?」
俺の言葉が全く聞こえてないみたいで、ヨウ兄さんはすっかりはしゃいでいる。
 
「どうせまた振られるんだから」
そう面倒くさそうに言ってやると兄さんは
「可愛くないな、弟よ。こうしてやる」
と言って、俺の髪の毛をわしゃわしゃと掻き乱した。
 
「やめろって」
 
「いいや、やめない。兄さんは生意気な弟を教育しなきゃならないからな」
 
「・・・俺より成績悪いくせに」
 
「俺はやれば出来る奴なんだ。記憶力だけは人一倍いいの知ってるだろ?」
 
「勉強に活かせなきゃ意味がないだろ」
 
「お前こそ、もっと体を鍛えろ。そんな痩せっぽちじゃ悪い奴を倒せないぞ」
 
「はいはい」
 
俺と兄さんの夢は警察官になることだ。
ちゃんと勉強して、訓練して、警官になる。人々の安全を守るんだ。
何でそんな夢を持つようになったかって事を話し出すと長くなるから、また今度にしておく。
 
前に「親がいなくても警官になれるのかな?」って聞いたら、兄さんは「さあ」と答えた。そして、
「俺とお前ぐらい優秀だったら、跡取りがいなくて困っている金持ちの家なんかに養子に入れるかもしれないな。そしたら良い大学にも行けて、優秀な警察官になって、銭形警部みたいに世界で活躍する刑事にだってなれるかもしれない」
と言った。
 
跡取りに困って養子にしたのに、その子が警官になんてなったら縁組みした先の家はがっかりするんじゃないだろうか。まるで詐欺だ。
でも兄さんが本当に良い考えを思いついたかのように話すので、その辺についてはもう考えないことにした。
 
よく思うんだ。
俺ははたから見れば不幸な子なんだろうなって。
裕福だった生活が一変、両親が去って異国での孤児院暮らし。
うん、俺もそんな奴いたら可哀想だって思う。
けど、不幸だなんて思ったことは兄さんに会ってから一度も無い。
居場所っていうものがあるからだろう。
自分が何者なのか、韓国人なのか中国人なのかわからない俺を、兄さんが「弟」と呼ぶ。
そして夢がある。夢があると生きているって感じがする。
生きているって、何ていうかすごく、気持ちの良いものだなって思うんだ。
 
「よし、今日のトレーニング開始だ。サン、訓練すると体が鍛えられる以外にもメリットがある。何だか分かるか?」
 
「いや」
短く答えると、俺は兄さんと二人で決めたトレーニングのメニューを始めた。
腕立て、腹筋、背筋、スクワット、25回ずつ4セット。
部屋の中でも懸垂が出来ればいいのに、と思う。
園の庭の鉄棒で懸垂をしていると、年下の子供達が面白がって突いたりして邪魔をしてくるんだ。
 
「それはだな、運動すると腹が減るだろ、だから飯がとびきり美味く感じるんだ!」
 
「へえ」
とりあえず返事をして、今日の夕飯は何だろうと考えた。
院の厨房で作られるユンおばさんの料理はいつだって美味しい。
 
それと。と勿体ぶったように言って、兄さんは腕立てを続ける俺にキスするんじゃないかっていうぐらい、顔を近づけた。
 
「それと、筋肉の無い奴よりもある奴の方が女にモテる」
 
「・・・」
呆れてもう返事もしなかったけど、兄さんは自分の言葉に満足気だ。
「リンシンちゃん、日曜日、デート、」と繰り返しながら嬉しそうに腕立てを始めた。
 
そんな兄さんを見て、「ばーか」と言いながら俺も笑った。
兄さんと居ると毎日がこんな調子で、俺は生きてて楽しいって思うんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
お付き合いいただいてありがとうございました。
映画を知らない方も多かったかと思いますが、ふと頭に浮かんだものをここに置かせていただきました^ ^